第6話
皆が食事をおえて立ち上がろうとしたところに優子が大きな声で『私のおごりよ』と、岩本は手を振って「いや、いいよ」と言い返すと彼女は「私のプライドよ」って低い声で返した。皆は顔を見合わせると彼女のほうへ向かって「ごちそうさま」と頭を下げた。
皆で店を出ると岩本が「私は日光東照宮へ向かうが」というとハーレーのライダー達は鬼怒川の方へということでここで別れることにした。
互いにバイクに跨るとハーレーのほうから一台ずつ走り出した。岩本は皆が道路に出るのを確認するとおもむろにスタートした。
一人になったせいかサイドカーが幾分ふらつく感じで安定性に欠けるような気がした。岩本はスロットルを開け巡航速度にすると、先ほどとはまったく違うシチュエーションにハットした。岩本は元来バイクは単独で走るものと決めていたがたまには仲間で走るのもいいかもしれないとふと思った。またサイドカーのあるべき姿にも、再認識をした。ライダーが1人より2人のほうがより安定した走りになるのだと思った。
岩本は束の間の楽しかった時間の余韻を感じながら軽くなったサイドカーのスロットルをさらに開けた。軽い排気音が少し孤独さを助長させた。
サイドカー 小深純平 @estate4086
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