第20話 戦う意志

 銃の扱い方については、中学校に入学するまでは、

 道場で、私立中学校に入学するための勉強と、

 銃と弓矢の使い方をお師匠様から学ぶことになった。


 これも、伯父夫婦の提案によるものからであった。


 正直に言うと、あまり気乗りはしないけれど、これ以外にいい方法なんて、私からは思いつかないので従うことにした。

 

 お師匠様の名前は、ワペン。

 マイスターという、弟子がいない従兄弟がいるらしい。

 そんなことは、私にとっては重要な話ではないけれど、お師匠様から聞かされた。


「今から、戦い方の修行をすることになるのだが、

その前に聞いておきたいことがある」


「はい、何でしょうか?」


「その・・・、どの学校に入学するつもりだ?」


セントエッチェレンザー学園です」


 そう。

 その学園は、私が保育園の頃から行きたかった学校だけど、井藤君のために断念し続けた。


 あそこは保育園はないけれど、幼稚園から大学まである私立のお嬢様学校。

 幼稚園にも入園できず、

 小学校にも入学できなかった私は、

 中学校で初めての入学を果たそうと思っていた。


「あの偏差値が高い学校をか?」


「はい」


「どうして、行きたいと思ったんだ?」


「私の母のことを知りたいと思ったからです。


母も、その学園の卒園生でもあり、

卒業生でもあるあらです」


 伯父さんから、私の母は幼稚園の頃から聖エッチェレンザー学園に入っていたと聞いていた。

 そして、エッチェレンザーの幼稚園部を卒園し、

 小学も卒業したとまで聞いた。


 その先のことはわからないけれど、私は本当の両親のことを知りたかった。


「そなたの母親のことはわからんが、

その学園に入学したからと言って、

必ずしも、近づけるとは限らんぞ?」


「いいんです。


それで。


私の小さい頃の夢は、聖エッチェレンザー学園に入学することで、それをやっと叶えられるというだけで嬉しいんです」


「よかろう。


中学に入学するまでの間は、面倒を見てやることにしよう」


 こうして、私はお師匠様の元で修行することになった。

 

 銃なんてものは、最初から的を当てられすはずもなく、

 目の前にある缶から外してばかりだった。


「どこを狙っている?」


「銃の扱い方なんて、難しいよ」


「なら、接近戦ができる剣とかで戦うか?」


「それは、嫌です。


絶対に、いや」


 正面突破なんて、私にできるわけない。


「なら、銃や弓の扱い方に慣れるとよい」


「はい・・・」


 私は、しぶしぶ頷いた。


 お師匠様は、厳しい。

 ここまできついことを言うことないのに、とまで思ってしまった。


 こうして、聖エッチェレンザー学園の入試試験の勉強をしながらも、銃や弓の特訓を行った。


 昼間は遠距離戦での特訓、

 夕方からは、試験勉強で、

 私の方から、何度も根を上げそうになった。


 だけど、どうしてだが諦める気になれなかった。

 もしかしたら、この特訓は嫌じゃないのかもしれない。


 こうして、数年の月日が流れた。


 私の髪は、腰まで伸びたから、ツインテールにした。

 ようやく、憧れの長さになり、今の髪型以外にも、三つ編みにすることもできる。


 銃とか、弓の扱い方も慣れてきて、的を当てることができるようになった。


「偉い、偉い」


 お師匠様にも、ほめられるようになった。


「だが、本当の戦いはこれからだ」


「はい・・・」


 私は、力なく頷いた。


「簡単に返事しているが、ちゃんと理解しているのか?」


「え?


どういうことですか?」


「そのままの意味だ。


これからどんな運命を背負い、

なんのために戦うことになるのか。


その覚悟が、あるように見えなくてな。


ただ、言われるがままにことをこなしているようにしか見えないんだ」


「そんなこと・・・!


あるかもしれない・・・」


 否定しようと思ったけれど、よくよく考えてみれば、お師匠様の言った通りかもしれない。


 私は、自分から戦いたいと率先したわけじゃない。

 

「だけど・・・、どうしてだが説明はできないけれど、

言われるがままにこなすことも、悪い気はしないんです」


「それは、どういう意味だ?」


「なんだかんだで、お師匠様と過ごす時間は、

かけがえないものなんです。


それに、私はこの特訓が嫌ではないんです。


私が本気で戦うための意志を持つためには、

このお師匠様との特訓が必要だと思ったんです」


「ようわからんが、本当にこれでよかったんだな?」


「はい!」


 私は、笑顔で答えた。


「よかろう。


試験勉強に挑んでこい。


もう時期に、受験が控えておる」


「私、聖エッチェレンザー学園を目指しながら、

異世界最強騎士になります!」


「まさか、お主の口から、騎士になりたいなんて出るとは思わなかったな」


「実は、私は騎士になりたいなんて、バカバカしいことだと思っていました。


幼馴染にそういう人がいる影響も大きいでしょう。


だけど、この修行を経験して、考えが変わったんです。


守られているだけじゃない。

誰かを守れる存在になりたいって、そう思えるようになれたんです」


 私に足りなかったものは、自分がどうしていきたいか。

 私は、誰かを救えるための行動を、していなかった。


「特訓は、これで終わりだ。


後は、ひたすら試験学習の日々だ」


「はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る