第2章 聖エッチェレンザー学園の生徒

第1話 赤音の才能

 こうして、受験に挑むことになった。 


 これだけ、勉強してきたから、大丈夫・・・。

 自分に、そう言い聞かせた。


 私は、テストや面接を受けては、どんな内容だったとか、あんまり憶えていなかった。

 多分、緊張していたんだと思う。


 道場に戻ってからは、どっと疲れが押し寄せてきて、寝てしまった。


 こうして、試験結果の日がきて、なんと驚くことに・・・。


「嘘・・・。


合格・・・?」


 目の前の光景が信じられずに、何度も受験票の番号を見たけれど、同じだった。

 私は、受かったのだ。

 

 嬉しいけれど、私は不登校だったのだ。

 そんな人を受け入れてくれるとは、思わなかったから。

 これが、現実なんだ・・・。

 夢じゃないよね・・・?


 こうして、私の聖エッチェレンザー学園の入学が決まった。

 

 ここは、全寮制と通学制が選べる。 

 私は、気分で変更しようかなと思っていた。


 

 これは、ある夕方の出来事だった。


「助けて・・・」


 私が、道場の中にいて、荷物をまとめていた時に、そんな声が突如として、聞こえてきたような気がしてきた。


 最初は、気のせいだと思い、そのまま準備を続けていた。

 だって、入学は明明後日しあさってだから、それまでに必要なものをまとめなくてはならなくなる。


 化粧ポーチの中には、

 リップ、ピンクの口紅、ピンクや紫のアイシャドウ、チーク、ファンデーションとか。

 あと、何が必要だったけ?


 聖エッチェレンザー学園は、中学部から化粧を校則で可能としているし、そこまで厳しくない。


 ペンポーチとか、シャープペンも必要でしょ?

 消しゴムも、可愛いものをお師匠様から買ってもらえた。

 

 異世界で、本当に便利かも。

 可愛いものが、そこらへんで売っているもの。 


 ジャージが、女子はピンクとか最高。

 しかも、右の胸のところに、赤いハートのマークがあるの。

 ジャージは、二着ぐらい購入した。

 本当は、一着ぐらいあればいいんだけど、破れたりとか汚れたり、洗濯物の乾きが間に合わないことも考えて、予備を買うことにした。


 ボストンバックも、赤いハート柄がたくさんあるし、盛り上がる。

 このバックから、荷物を学校まで仕送りしてもらうんだ。


 そのためのトラックが来るのは、明後日の夕方くらいだと思う。

 

 ちなみに、聖エッチェレンザー学園は制服と、私服の両方を選ぶことができる。

 だから、私は入学書類には、私服の欄に丸を書いた。


「助けて・・・」


 この声が聞こえるということは、私は疲れているのかな?

 他にも、必要な物はあるし、明日にでも買い揃えることにしよう・・・。



「助けて・・・、誰か・・・」


 私は、背筋がこおりつくのを感じた。

 幻聴?

 それとも、幽霊?


 私、こういう怪談話は苦手なんだよ。


 寝よう。

 さっさと寝れば、解決だ。

 きっと、私は疲れている。


 そう思い、ベッドに潜り込もうとしたら、


「だから、助けてほしいって言っているんだー!?」


「きゃー!!」


 私は、思わず叫んでしまった。

 

 目の前にいたのは、大体私の顔のところまで浮いている鮫のぬいぐるみだった。


「さっきから、助けを求めていたというのに・・・」


「え?


ぬいぐるみが喋った!?」


 私は、目の前の状況が理解できずにいた。

 どこから現れたの、このぬいぐるみ?


「ぬいぐるみじゃない。


精霊だ。


おいらは、スクアーロ」


「スクアーロ・・・?」


「名は、なんと言うんだ?」


「赤音・・・。


西園寺赤音です・・・」


「騎士と聖女の娘か」


「私の両親のことを知っているの?」


「聞いた話だけならな。


実際に会ったことはないが」


 ここで、私の部屋を開く音がした。


「何事じゃ!?」


「お師匠様?」


「いきなり叫び声が聞こえたから、駆けつけたんだ」


「久しぶりだね」


 鮫のぬいぐるみの姿をした、スクアーロが挨拶をした。

 そこで、お師匠様はきょとんとしていた。


「スクアーロ?


どうして、ここにいる?」


「緊急事態だからだ。


おいらは、赤音の助けを必要としている」


「どうして、私の?」


「伊藤真も追われて、

その母である伊藤カンナも、指名手配をされた。


カンツウォーネの手にまんまと引っかかってしまったんだ。


そして、おいらの身も危ない上に、

おいらの相棒も、危険にさらされてる。


そんな危機を救えるのは、赤音しかいないと思ったんだ。


そう、騎士と聖女の血を引く君だけにしか・・・頼れない」


「話がよくわからないって。


私が、カンツウォーネと戦うってこと?」


「それ以外、何がある?」


「無理だよ。


私には、できない!」


 カンツウォーネとは、小さい頃によく会ったことがあるけれど、あの人には残酷な印象しかない。

 戦ったことはないけれど、多分強いと思う。


「行ってやれ」


 お師匠様が、私の肩に手を置いた。


「カンツウォーネのことを、知った上で言っているんですか?」


「異世界でも、有名なサイコキラーという種族だ。


並大抵の力では、勝てない。


奴らは、少数民族でありながらも、大勢の命を奪ってきた歴史がある。


それが、カンツウォーネが流れる血なのだろう。


ただ、サイコキラーに勝てる方法がある」


 サイコキラーっていうのも、初めて聞いた。

 カンツウォーネが、何者がよくわからない上に、ただ井藤君につきまとうだけの殺人狂なんだな、と思っていた。


「それは、本物の騎士の強さと、

真の聖女の浄化だ。


両方の才能を持つ者ならば、カンツウォーネも打つ手がなくなるだろう・・・」

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