第19話 本当の元凶
茜色の髪と瞳。
それ以外は、私と似ていない伯父さん。
私は根は臆病で、行動を起こせないけれど、
伯父さんは真正面から相手とぶつかることができる。
そんな伯父さんに、私がどれだけ苦しいのか伝えられるわけがない。
「赤音、話がしたいのだが・・・」
「どうぞ」
私はベッドの布団にもぐりこみながら、答えた。
伯父さんの足音が近づいてきたかと思うと、信じられない発言があった。
「君は聖女である母と、騎士である父の娘なんだ」
「え?」
いきなり、何を言っているんだろう?
「君は2歳とだったから、憶えていないかもしれない。
赤音の母は聖女として、
父は騎士として戦ってきた。
だから、君には聖女としての素質と、
騎士になれる才能の両方がある」
私は不登校のことを指摘されると思っていたから、その話は想定外だった。
「いきなり、何の話をしているの?」
「赤音の友人が、次々と死んでいって、
ショックを受けているかと思って、真実を話そうと思ったんだ。
いつかは、学校に行きたくなくなるだろうと予想していた・・・」
どうして、そんなことがわかったのかは知らないけど・・・。
「私のまわりで、不幸な事件ばかり起こるのは、井藤君のせいじゃなかったの・・・?」
私は、井藤君と縁を切れば解決だと思っていた。
「井藤真は生まれながらにして、
身近で不幸なことばかりが起こる不幸寄せの魔力の持ち主だ。
だけど、それが原因で人が死んでいくことはない。
不幸な事故での巻き添えはあるかもしれないが・・・。
その・・・、認めたくないと思うけど、
人が死んでいく原因は赤音にあるんだ」
「私?」
「赤音は生まれながらにして、
周囲の人が死んでいくという死に寄せの魔力があるんだ」
死に寄せ?
不幸寄せ?
私には、何のことだか理解できなかった。
私はガバっと布団から起き上がった。
「急に、どうしちゃったの?
伯父さん」
「率直でもいい。
学校に行きたくないか?」
ここは、正直に言おう。
私は友人を作っても失う恐怖を知ってしまっている。
岸田君を好きな人が同じ学校にいることも、
桃木ちゃんが亡くなったことも、
学校でいじめや殺人事件が起きたことも、
世間かから、噂になってしまったことも、
全てが私にとっては登校したくない理由になる。
「行かなくてもいいなら、このままニートになってしまいたい」
私は、涙を流しながら答えた。
「今でも、憧れの私立中学校に行きたいって気持ちはあるか?」
「ある。
勉強もしたい。
だけど、学校をまともに行けない私に、
私立の中学校に入学する資格なんてあるのかな?」
矛盾しているかもしれないけれど、
本心を打ち明けた。
「それでいい」
「いいの?」
伯父さんは叱ったりとかしないの?
普通の親なら、不登校のことを責めたり、私立の中学校に行くために厳しく指導したりする気がする。
そこら辺は、うちの伯父夫婦は変わっているような気がする。
「いいんだ。
早めに打ち明けなかった俺にも、罪があるかもしれない。
死に寄せが毎度起こるわけでもないから、
大丈夫だろうって思いたかった。
幼い娘に、残酷なことを告げたくなかった。
そして、赤音の両親のこともずっと隠していた。
本当にすまない」
「伯父さん、私はこれからどうしたらいいの・・・?」
「赤音?」
「話はよくわからないけれど、
私のせいで、人が死んでいくってことじゃないの?
そうならないために、どうするべきだったの?」
死を回避する方法なんて、何も思いつかない。
「戦えばいい。
聖女として、騎士として」
「え?
そんな厨二病みたいなこと」
体育は得意だけど、私に戦う力があると思えなかった。
「君の両親は生きていて、
母は最初は聖女候補だったのだが、真の聖女として選ばれたがために、異世界にいる。
父は騎士として戦っている。
異世界最強騎士を目指して」
「だからって、私も戦うの?」
「誰かの死を回避したいのなら、守れるくらいに強くなるしかないな」
これ以上、誰かを失いたくない。
だけど、私は戦闘なんてやったことがない。
そんな私にできるのだろうか?
正直、不安でしかない。
「戦うのこわい・・・」
私は素直に気持ちを呟いた。
「赤音の性格からして、正面突破は苦手だろうな。
なら、ブーメランとか、
弓矢とか、
銃とかはどうだい?
モーニングスター、
鞭もある。
騎士として戦うとしても、必ずしも剣でなくてはならないという理由はないからな」
これ以上の被害を出さないために、私は戦う。
その意志を持ち始めた。
「ブーメランは自分に跳ね返って来そうでこわい。
それに、モーニングスターや、鞭は相手に掴まれたら終わりかもって。
だけど、使うなら遠距離での銃とか弓かな?」
「モーニングスターや鞭を掴むとかは、よっぽど反射神経がよくない限りは、難しいだろう。
人間では考えられないが、異種族ならあるかもしれないな。
だが、それでいいだろう・・・」
「弓とか、銃にしても、可愛いのがいいな。
ハートマークがあるとか」
「戦う時にも、おしゃれのことを考えているのか?」
私はこうして、ところどころにピンクのハートマークがある赤のアサルトライフルと、
赤の弓矢を伯父さんの奥さんから買ってもらった。
聞く話によると、異世界に売っていたらしい。
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