第9話 新しい友達

 中央さんと仲良くなってから、緑髪の女の子を紹介された。

 その子は緑色の髪を三つ編みにしていて、鮫のパーカーを着ていた。


「この子は、俺の小学校に入学した時に仲良くなったの。


今は、隣のクラスになっちゃたんだけどね」


「あたくしは、氷雨ひさめヒサメって言うの」

 

「名字と名前が同じ?」


「そう」


「あんまり触れないであげて?


ヒサっちはね、小さい頃に両親が離婚して、母親が別の人と再婚してそうなったの」


「ということ。


あたくしのことは、名前や名字とかで呼ばないで、あだ名で呼んでね。


例えば、ヒサっちとかね」


「ヒサっち?」


「うん、それでいい」


 初対面相手に上から目線だな。


 こうして、俺と中央さんとヒサっちが仲良くなり、放課後には剣を振り回して遊ぶくらいになった。


「公園行こうよ」


 ヒサっちが提案した。


「いいね、井藤君も行こうよ」


「うん」


 公園には、ブランコもあるし、滑り台もある。

 砂場もあった。

 何して遊ぼうかな?


「ヒサっちと、中央さんは普段は何して遊んでいるの?」


「あたくしは、泥団子とか作って、おままごとかな?」


「俺は得に決まった遊びとかしていないかな?


体を動かすことが好きなわけだし、どんな遊びでもどんとこいなのさ」


 俺は保育園の中とか、幼稚園の中とか、学校の中で話すことはよくあったけれど、放課後に一緒に帰ることもあった。


 だけど、今まで休日に遊ぶことはなかった。

 

 ヒサっちは公園にある水道の蛇口をひねり、水を出して、手を洗った。


「水が、すっごく気持ちいいね」


「そんなこと言っていると、かけちゃうよ?」


「やめてよ、スクアーロ様に怒られる」


「ヒサっち、スクアーロ様って誰?」


 中央さんが、ヒサっちに質問をした。


「ううん、何でもない。


ママに怒られるもん」


 こうして、中央さん、ヒサっち、俺は笑い合った。

 すごく楽しい。

 こんな毎日が続けばいいな。


 そう思っていた矢先に、どこからかカンツオーネが現れた。

 やばい。


 あいつは、どういうわけだが、俺が幸せになることが気に入らない。

 

「楽しんでいるところ、申し訳ありませんわ。


君たちは、真の何ですか?」


「え?


真って誰?」


 ヒサっちが、カンツオーネに質問をした。


「あら?


この一緒に遊んでいるのが、真よ」


 カンツオーネが、俺を指さした。


「お姉さん、誰?


真の家族?


それとも、恋人?」


「どちらでもないわ。


真に復讐しにきたの」


 復讐って、何のことだ?


「カンツオーネ、。どうしてここまで来たんだ?


かなり遠くの県外に引っ越したはずなのに」


 ここで、カンツオーネは笑い出した。


「あら、やだ?


そんなもの、どこだって追うに決まってるわよ」


「井藤君?」


 震える俺を、中央さんは気にかけてくれたんだと思う。

 だけど、俺は何も答えることができなかった。


「カンツォーネ」


 どこからか、鮫のぬいぐるみが現れた。

 しかも、浮いている。


「えー!」


 中央さんと俺は驚いていた。

 ぬいぐるみが喋っている?


「何をしに来たんだ?」


「あら、スクアーロ?


久し振りねえ。


だけど、こんな鮫なんかに用はないの。


あたしは、この女の子が恋人かって聞きたいの」


「恋人なわけなかろう。


第一、真にちょっかいかけすきだ」


「カンツォーネ、俺は君に何かしたの?


復讐ってことは、恨みがあるんだよね?


あるなら、教えて?」


「それを知りたいの?」


 カンツォーネは、俺を見下すような表情をしていたけれど、動揺なんてしてられない。


 数々の大切な人を奪ってきたんだ。


「どうして、そんな酷いことばかりするのか、俺は聞きたいんだ。


妬みかもしれないけど、それにしては執着的すぎる。


俺は過去に何かしたのか?」


「あたしは、幼稚園にて覚醒した殺人鬼の佐藤と、鈴木すずき氷雨ひさめの娘よ」


「え?」


「あたしは殺人鬼の血が流れているんだから、人を殺すなんて当たり前よ。


真は、あたしのことなんてわかってない」


「わかるはずない!


わかれない!


俺は、はっきり言ってくれないと!」


 今の説明だけじゃ、わからない。

 何が動機になっているの?


「なら、知りたくもない、耳を塞ぎたくなるような真実を教えてあげるわよ。


あたしは、真の父親の手下なのよ」


「え?」


 父さんが?

 俺は保育園に入る前に、両親が離婚して、母親の名字に代わり、一緒に住むことになった。


「あたしは、幼い真を不幸にしなさいって言われたわ。


ここで、あたしの殺人鬼としての血が黙っているわけがないわよね?」


「復讐って言うのは・・・・」


 これ以上は聞きたくないし、知りたくもない。

 だけど、口が動いてしまう。


「真の父親からの復讐ね」


「そんなわけない!


何故、父さんがそんなことをする必要があるんだ?」


「真は、父親にしてきたことを、忘れたのかしら?


夜泣きも激しかったし、おねしょもした。


近所からのクレームも来た。


何より、妻の愛情を奪ってしまった恨みは消えないでしょうね」


「そんなこと・・・・!」


「そんなことあるのよ。


妻の愛情は、息子が生まれれば、全て真に注がれるわよね?


だけど、それと同時に夫に対する愛がなくなることは悲しいことだわよね?」

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