第5話 医者との勝負
「おやおや、何か欲しいものはあるのかな」
蓮は影森がわずかに反応したことを気にする。
「………」
影森は蓮の言葉に何も反応しなくなる。
「ふむ、まあ欲しい物は置いておいて、さっそく勝負するが良いかな。影森君」
「………」
影森は頷く。
「よしよし、それじゃあさっそくやりますかね」
蓮は空いてる場所に入り始め、バットを持ちお金を入れ始める。
「あ、影森君、ちなみに球速は230kmだからよろしくね」
蓮は悪い笑みを浮かべる。
「………?」
230kmという言葉に処理できずに蓮の様子を見る。
「ふん、ふん、ふふん」
鼻歌交じりにリラックスしながらバットを構え始めると1球目の球が凄い速さで来るのを見逃す。
「ふう」
2球目もバットを振らず見逃す。
「よしよし」
笑いながらも蓮の空気が変わり3球目をタイミングを合わせて打ち返す。
「OK、OK、タイミング良し」
そこから4球目~20球目を簡単に打ち返して行き、合計18球を打った。
「ふう、悪いね影森君、大人げないことして」
蓮はどや顔を見せて、笑顔で余裕そうに話をする。
「………」
影森は特に反応もせず、バッティングセンター内に入り初めてバットを構え始める。
「………?」
影森は何かを処理できずにキョロキョロとピッチングマシンを見始める。
「あ、ごめんごめん、お金を渡すの忘れてたね」
蓮は影森がキョロキョロとしたのかを察知してお金を入れ始める。
「それじゃあ頑張ってくれたまえ」
余裕そうな笑顔を見せる。
「………」
影森はピッチングマシンを正面から光の消えた目で見据えてバットを構える。
「………ふう」
無意識に影森は深呼吸をし始めての1球目を打ち返す。
(ほう)
蓮は真剣に影森を観察し始める。
「………は」
呼吸を合わせて2球目を合わせて打ち返して行く。
(おやおや、まぐれではないね。凄いね影森君)
蓮は笑顔になり興味深く影森を観察する。
「………は」
同じ呼吸のタイミングで3球目から17球目まで打ち返す。
(やれやれ、凄い逸材に出会えたな。これは自分の負けかもね)
蓮は諦めた表情をする。
「………ふう、はあ」
18球目、影森は突然呼吸が乱れ反応出来ずに見逃す。
(おいおい、マジかよ)
蓮は影森が呼吸乱れた状態を真剣に観察する。
「はあ、はあ」
19球目も反応出来ずに見逃す。
(急に影森君、かなり、消耗し始めたがなんだろうな)
蓮は違和感を感じながら影森の様子を見る。
「………」
20球目、通り過ぎる前に疲れ過ぎたのか握ったバットを落としてしまう。
(やれやれ、流石にな)
蓮は影森を見て一人で頷く。
「………はあ」
影森は疲れた様子でバットを元の場所に戻して、バッティングセンターから出る。
「お疲れ様、影森君」
蓮は笑顔で声を掛ける。
「………」
無言で影森はうなずく。
「やあやあ、終わったね」
蓮は影森の目を見て笑顔を向ける。
「………?」
影森は蓮の行動と動作に違和感を処理しようとする。
「この勝負は残念ながら自分の負けだね」
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どうも作者です。
もし良かったら新作「感情を失った少年と女神。あなたの時間(人生)をいただきます」も連載していますのでよろしくお願いします。リンク↓です。
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