赤備えの始動

陰影を交えた織田信長の謁見室に、細身の小姓・森蘭丸が進み、耳打ちするごとく戦況を伝えていた。状況は如実に信長の心に刻まれ、いつものように戦局の掌握が進んでいた。


信長が蘭丸に尋ねた。「表裏畢竟の者とは聞くが、彼奴らが動くかどうかだ」

「真田昌幸閣下のことですか?」蘭丸は問い返した。

「その通りだ。」信長の目は輝いていた。

「もし利益が見えていれば、彼は動くでしょう。」蘭丸は答えた。

「なるほど、利益か…」と信長は口元を引き締め、しみじみと呟いた。


信長は既に、上田城の真田昌幸に対して、上杉軍の背後をつくように使者を送り、先の動きを仕掛けていた。


「父上、我々はどの勢力につくべきでしょうか?」真田幸村(信繁)の声は、いくぶん静かだった。

「現状では織田家が優位だ。我々は織田家につくことにするぞ。」と昌幸は幸村に告げた。

「しかし、父上、信長公は、武田家を滅ぼした我々の敵ではありませんか?上杉と組み、織田を倒すべきではないのでしょうか?」

昌幸はゆっくりと息を吐き出し、「息子よ、お前の考えは理解できる。だが、今は織田家の力が拡大しており、我々には彼らと協力する方がより賢明な選択となる。信長の方へ向かうことで、真田家の存続、さらには我々の発展が期待できるのだ。」


幸村は父の意志を尊重し、彼の判断に若干の不満を抱きつつも理解した。そして、信長への協力が真田家の存続、そして未来を守るための最善の策であると理解したのだ。


「父上のお考え、理解いたしました。織田家と協力し、共に戦っていく覚悟を持ちます。信長公へ使者を送り、我々の忠誠を示しましょう。」

昌幸は少し安堵の表情を見せ、「幸村よ、その決断を尊重する。そうしてくれると、我は安心する。使者を送る手は早めに打つべきだ。」


こうして、真田昌幸と真田幸村は、織田家との協力を決定し、使者を送ることを確認した。彼らは、真田家の存続と未来のために、新たな道を切り開く決意を固めたのであった。信長の策略が真田家をどのように戦局に引き込むのか、歴史の転機を迎えるかどうか、その未来はまだ誰にも知られていなかった。


信長の包囲網は、小早川隆景と直江兼続の連携から始まった。しかし、隆景が包囲網から離脱し、事実上の盟主となったのは、兼続の主君である上杉景勝だった。この動きは、先代の上杉謙信の遺志を受け継ぐものでもあった。上杉景勝は、足利将軍と室町幕府の再興を誓っていたのだ。


信長の包囲網には、意外な展開もありました。北条家が加わったのだ。北条家内部では意見が分かれていたが、初代の北条早雲は室町幕府の政所執事である伊勢氏の出身であり、北条家の一部から「早雲に返れ」という考えが出たのだ。これにより、北条家は信長の包囲網に参加することになった。北条家の参加によって、徳川家康との対峙が始まることとなった。


そのため、上杉との戦いにおいては、徳川家康からの援軍は期待できなかった。そこで信長が選んだのは、真田昌幸だった。


織田信長の声が、語りの如く響き渡る。「真田昌幸は我が選ぶもの。上杉との戦いにおいて徳川の援護は望むべくもない。だが、真田家は、見事な戦士たちを世に送り出している」と。森蘭丸は静かに頷き、「御意」と、軽く響く声に尊敬を込めて応える。


このようにして、織田と真田の間には微妙な利害の一致が見られました。


信長は真田軍の兵力が劣ることを熟知し、それゆえに深い期待は抱いていませんでした。しかしながら、真に驚くべきことに、真田軍は一挙に上杉軍を蹴散らしていったのです。上杉軍は越前方面への軍勢を大量に割いていたものの、真田軍の紅い軍装は、昔日の武田騎馬隊の強大さを彷彿とさせていました。そしてその旗手となったのは、若き日の真田幸村でした。


この出来事の報せを受けた直江兼続は、即座に撤退を決断します。


上杉景勝の疑問がひとつ飛び出します。「真田の赤備え…それは何者だ? 一体、どこより来たりしものか?」


直江兼続は深い溜息をついた。「我々は真田の兵数の少なさを過小評価してしまったようだ。この失策は私のものでもある。そして、織田信長という男、彼の手腕は、なにものも比べ難い」と、兼続の声は半ば敬意に満ちていました。


現世では悲劇の名将として知られる真田幸村ですが、仮想空間での彼の活躍については、まだ誰にも予測がつかない。彼の才能と勇気が戦局にどのような波紋をもたらすのか、その行方は誰にも見えない。信念を胸に戦いに臨む真田幸村の姿は、まさに予測不能な冒険の幕開けなのです。


- 夢想瑞歌 -

紅(くれない)の 衣を纏いし勇士たち 

継承さるるは 想いなりけり

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