不治のぼくたち

小林枕

不治のぼくたち

静謐な天使不在の陽のもとに損なわれゆく不治のぼくたち


マイスリー植えた庭から生えた樹の樹上に白き花のキ ラ キ  ラ


眠剤の溶けた水槽ぐんにゃりと揺蕩う最中サカナきみの横顔


眠ってる鳥の写真を見せたよねあれほんとうはすでに死んでた


ぼくたちの舌のふるえはぎこちなくその時々のつたなき祈り


暖かい土を被せてあげようね産毛と乳歯生え揃うころ


口渇に絶えず苛立つぼくはまた虚ろめがけてことばを抛る


明日には明日あすの滅びがあるだろう雨に託けまばたきをする


戻れない国の遠くで割れた窓硝子は指にやさしくささる


柔らかさゆえ自壊する白昼夢 飛び立つ鳥の少し傾く


夢のなか夢の終わりに聴いた歌歌えば苦いルネスタの味


だいじょうぶ死ぬときはみな一緒だよ波打ち際で一人佇む


の砕く硝子片とも祈りともぼくとも無縁 光るみずうみ


解体を待ち望めども陽は止まずおれもおまえも明るい廃墟


誰かとは誰かの不在ぼくたちは為す術も無く呼ばれたるのみ


蛍光灯砕け散らばるこの部屋のひ、ど、く、明、る、く、て


遮光せし陽射しよぼくは悪行も愚行も止めぬ 雨雪うせつも止まぬ


陽と呼べば陽でと呼べば刃で針で今朝をめがけてただ突き刺さる


Good morning.グッモーニン もう手遅れだぼくたちは古生代より寝坊をつづけ


明くる朝はぐれるために手を繋ぎ交わす心音 不治のぼくたち

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