4話 こんなこと、あなたに頼んでいやしない
あたしは相変わらず学校に行けないでいる。
そりゃ、そうだろう。あたしが触れるだけで、その人と、どこかの誰かの人生が変わってしまう。
あたしはいわば、人間爆弾だ。近づく人の人生を吹っ飛ばす爆弾。
でも、逆をいったらあたしに起きてる問題はそれだけで、体調不良でもなければ鬱でもない。
引きこもりにしてはやたら元気で、むしろ積極的に家事を手伝ったりしてた。いちねえや芽衣さんとも、それはもうたくさんおしゃべりした。
どうみても引きこもりの症状を呈していないあたしを、だからといっていちねえたちは学校へ行けとか強制することはなく、そっとしておいてくれた。本当に感謝してる。
もとから人付き合いが得意なほうではないあたしは、このまま家で勉強して、通信制で高卒資格取るのもいいかななんて思い始めてた。在宅ワークが珍しくもなくなってきた昨今だ。大学も実際に行かずに卒業できるとこがあるらしいし、一生を家から出ないで終わるのもアリかなって考えてた。こんなに他人に迷惑かけない人生もないと思う。
芽衣さんに相談したら、知り合いに聞いていい学校探してあげるって言ってくれた。持つべきものは人脈の広い義姉だねえ。
唯一、学校へ行けなくて残念なことがあったとすれば、それはやっぱり瞬に会えないことで。
でも、それですら、彼女はもう遥のものなのだから、あたしが執着できる相手ではなくなっているのだ。
そんな、生活改善と小さな希望と巨大な諦念で作られた暮らしが、そろそろ一ヵ月に及ぼうかというとき。
それは起きた。
というか、そいつはやってきた。
自分の部屋の窓が突然叩き割られる、という出来事を、自分が在室のとき体験する人は、たぶん交通事故にあって命を亡くす人よりかなり少ない。
その日のあたしは、引きこもりはじめてからもう何十回読み直したかしれない漫画を、また一巻から読み返しはじめたところだった。要するに暇だった。そこへ。
ガシャーン!
と、かん高さと重々しさと金属質が入り混じった破砕音が轟き、何事かと驚愕しながら窓のほうへ目をやれば、そこには一面、ガラス片が床に散らばった光景と、さらにバールのようなもので乱雑に、窓に残った細かなガラスまで執拗に叩き落としてる人間の姿があった。
そして、遮るものをなくした窓に強く風が吹き込んで、カーテンがはためいていた。
「……は?」
人間、あまりにも突然の事態には誰でも思考を失うものだろう。
セーラー服とセミロングの髪に、カーテン同様に風を孕ませながら理解不能の暴挙に及ぶ、そんな親友を呆然と見てるあたしだって例に漏れない。
「…………瞬!? いったい何やってんの!? え? てか、ここ2階」
窓の外に『立っている』のが、あたしの幼馴染にして親友の女であることをあたしが認識したのと、ドタドタと泡食ったような足音が階段を駆け上がってくるのが聞こえたのはほとんど同時。
瞬はというと、やっと窓からガラスを取り払い終わったと判断したのか、窓から身を乗り込ませているところだった。
そのときのあたしの情動を、あたしは我ながらに褒めてやりたい。
パニックになって縮こまってもおかしくなかったと思う。
しかしあたしが実際にしたことは、頭のなかで優先順位を整列する作業だった。
二人分の足音が上がってくる。心配してくれたいちねえと芽衣さんだ。あんな馬鹿でっかい音、下に聞こえなかったわけないし、心配されないわけもない。
そして部屋のドアが開け放たれ、この意味不明かつとんでもない行為に及んだバカを目撃されたら、警察沙汰にならないでは済まないだろう。電話一報、駐在さんが飛んでくる。
妹の友達で、いちねえにとっても身内同然ってことだけで情状酌量を期待するには、やらかしてることがちょっと重大すぎる。
器物損壊、住居不法侵入って言葉が脳内を占める。しかも、後者に関していうと2階のこの部屋へなんらかの手段で強引に入ることを企てたわけだから、ついうっかり入ってしまったなんて言い訳の余地がない。不法も不法、明確すぎる侵入行為だ。
瞬の人生に、こんな意味のわからない傷をつけるわけにはいかない。絶対に。
そのために、いちねえたちを騙すようなことがあってもだ。
そこまでを一瞬で考えたところで、あたしは部屋のドアに飛びついて、鍵をかけた。
ガチャガチャとドアノブが回される。外からの力でひとりでに回転するドアノブを一瞥して、あたしはこの不法侵入者に向けて、唇に人差し指を一本当てた。そして、『黙ってろ』の意思を込めて睨みつけた。人生でこんなに深刻な気持ちで他人を睨んだことはなかった。
「ちょっと!? 蜜音! いまの音なに!? ここ開けなよ!」
「蜜音ちゃん! だいじょうぶ!?」
心からの心配が伝わってくるふたりの声に、ちょっとたじろぐ。あたしは今から頑張って彼女たちを騙さないといけないのだ。
あたしは努めて、自分が怒ってる風に聞こえるように、声を低くした。
「……なんでもないから、来ないで。下行ってて」
「なんでもないわけないでしょ!? いいから鍵開けてって!」
「入ってこないでよ! ふざけんな!」
「な、なによそれ!」
ごめんね。いちねえ。先に謝っとく。
これからいうの全部嘘だから。この場が片付いたら、ちゃんと謝りなおす。
もう怒ってないよ。ていうか、怒る理由なんてない。悪いの全部あたしだってよくわかってるから。
「もう限界なの! 最近あたしがふつうにしてたからって、調子に乗って、そっちまでふつうにしてきて、なんなの! こっちが演技してることもわかんない!? 信じらんないよ! あたしの世界を壊したくせしてさあ!」
「み、みつね」
「うっさい! 窓割ったからって、なに!? 何かに当たらないと耐えれないんだよこんなの! 今すぐ下に行って! 近くにもいられたくない! これも聞いてくれないんだったら、この窓から飛び降りるからね、あたし!」
いやあ……これ通るか? あたしは脚本家でもなければ役者でもない。
自然なシナリオなんて考えられない。思いっきり叫んではいるけど、芝居としては大根もいいところのはず。少なくとも芽衣さんには通用するわけないと思う。
ふつうにしてたのは演技だった、てのがそもそも本当に大嘘だ。
どうみても、最前までのあたしはいちねえと芽衣さんのことを完全に折り合いつけて、まったくもってリラックスモードだったじゃないか。芽衣さんなんかはそういうあたしの心理状態を見通したからこそ、自然に接してくれるようになってたんだと思うし。
わかってる。わかっちゃいるけど、演劇部ですらないただの高校生のあたしにはこれが限界。
「ごめんなさい。ごめんなさい。簡単に許されないってわかってたのに。本当にごめんなさい」
ドアの向こうで、いちねえがさめざめと泣く。
あたしはそれに答えず、ただ荒く息を吐く。
息が荒くなるのは実際に興奮してるからじゃない。また自分のせいで姉を傷つけてしまった。そんな罪悪感から発生する、ズキズキした胸の痛みを飲み下すためだ。
「一花、いまは下に戻ろう。……蜜音ちゃん、本当に飛び降りたりしたらダメだからね? 一花だけじゃないよ。私も苦しむ」
「……」
あたしは芽衣さんのその呼びかけを表面上無視しながら、心の中で感謝する。
芽衣さんにはやっぱりあたしの下手な芝居は通じなくて、それでも何か事情を察してくれて、あたしの希望に沿ってくれたんだ。
二人ぶんのとぼとぼした足音がちゃんと階下に降りていくのを、ドアに耳つけて聞き届けてると、ぱちぱちと気の抜けた拍手が聞こえてきた。
いつのまにかあたしのベッドに座ってた瞬が、面白そうにあたしを見てた。
「スゲー。スゲー。主演女優賞じゃん」
「瞬! なんのつもりでこんなことした!?」
「なんのつもりって」
いちねえに向けた偽物じゃない。あたしは瞬に対しては、いま本気で怒ってた。
そんなあたしの感情を意に介していないといわんばかりに、瞬は膝のうえで頬杖ついて、こう言った。
「そりゃ、こっちのセリフなんだけど? あんた、なんでLINE見ないの? 既読スルーならまだいいよ無事が確認できるから。スマホどうした?」
いまそんな話する場合じゃない、って怒鳴りそうになって思いとどまる。誰かと会話してるような音なんて下に聞こえたら、いちねえを傷つけてまで嘘ついたことが無駄になる。
それに、痛いところ突かれたとも思った。
スマホは充電さしっぱなしで、ベッド下に放置してる。ときたまピコピコ勝手に鳴ってて、LINEが鬼のように溜まってるんだろうなとは思ってた。
でも、それに対して日にちを区切ってどうするこうするの返信ができる状態でもなくて、その状態を解決できるメドもまるで立ってないんだから、あたしは対応不可能な手紙の山を見ないことにするしかできなかったのだ。
返答に詰まって、なにも言えずにいるうちに、あたしは大変なことに気づいた。
「……ちょっと、血出てるじゃん」
スカートから伸びた瞬の足には、一筋、大きくもないけど小さいともいえない切り傷が開いていて、そこから流血が起きていた。
あたしは青ざめた。そして、ふらふらと近づこうとしてしまった足を、すんでで思いとどまらせた。今のおかしくなってしまったあたしは誰にも触れない。瞬になんて、特に触るわけにはいかない。
「ああ。結局切っちゃったか。まあ、どうでもいい。もっと大事な話をしに来たんだし」
「どうでもいいわけないでしょ……帰ってよ。ちゃんと治療して」
「どうやって? ここには遥んちで借りた脚立で入ったんだけど、いま、ここに入るとき蹴っ倒しちゃったから、もう窓から戻れないよ。ドアから普通に降りてって、玄関から出ればいい? あんたの一世一代の名演技が無駄になっちゃうね」
そうだろう。
芽衣さんはあたしの嘘を見抜いてくれたようだけど、いちねえはまだあたしを心配してるはずだ。
あたしが軽挙に及ばないように、こっちの音には神経をそばだててるはず。こいつが普通に降りてったりしたら、気づかれないわけなかった。
あたしは自分でついた嘘を人質にされて、瞬の話を聞くしかない立場に追い込まれた。
「……せめて、その傷口なんかでふさいで。見てられない。そのベッドシーツ、今朝変えたばっかりできれいだから、それ使っていいから」
「あんたがやってよ」
「いやだ。なんで、急にこんな無茶苦茶なやり方で来た人のお世話しないといけないの」
あたしは非難めいたことを口にしながらも、この応答はあたしたちらしくないと感じてた。
瞬が怪我したなんてなったら、いつものあたしなら居ても立っても居られなくて、一生懸命に手当てしてたはずだ。
今のあたしが『こんなの』じゃなかったら、例え瞬が自分の部屋の窓ガラスを粉々にして無理矢理入ってきたってこんな状況だとしても、甲斐甲斐しく世話したと思う。拒否したのは、絶対に接触できないってことだけが理由だった。
「……あっそ。そうなんだ」
だから瞬にもあたしのその返事は相当意外だったようで、豆鉄砲くらった鳩のような顔になったあと、かなり不機嫌そうに自分で足にシーツを巻きだした。
ガラスでできた傷は危ないって聞く。本当は、こんな処置にもなってない応急手当じゃなくて、ちゃんと流水で洗い流して、清潔な包帯とか大きな絆創膏で治療してほしい。ただ、いまは状況が許さない。
あたしは自然に湧いて止まらなくなってしまう瞬への心配を、頭を振り払って追いやる。
あたしはあたしのベッドに座る彼女からなるべく距離を取るように、ガラスが散らばる窓の側へ移動した。
「そっち行くなよ。危ないじゃん」
誰がそうしたと思ってるんだよ。
「……ねえ。何しにきたの。ほんとにこんな、危ないことして。安否確認だったら、いちねえにでも聞いてくれたら十分なはずでしょ」
「それで充分ならこんなことするわけないじゃん。……ねえ、私が何しに来たと思う?」
怪我したほうの片膝を立てて、患部を庇うように両手で抱きながら、膝小僧にほっぺをつけたポーズになって、首をかしげて瞬が聞いてくる。
「そんなのわかるわけない」
「そうだよね。あんた鈍いし。言っちゃうと、告りに来た」
「……はあ?」
いくらなんでも状況にそぐわないにもほどがある、しかも平常であったって有り得ないその発言に、あたしは思わずきつめに疑問の声をあげてしまった。
いまこいつ、なんてった?
告りにって、どういう意味? ……そういう意味?
「なに言ってるんだかわかんないんだけど」
「小1で友達になってからさあ」
あたしの問いを無視するように、瞬がマイペースで語りだした。
「土日も必ず一緒だったし。考えてみたら、あんたと一日以上会わなかったことが一度もないんだよね、私」
「……」
それはそうだった。もちろん瞬が構ってくれたからっていうのが一番だけど、あたしのほうでも、一日と置かず自分から会って遊ぶようにしてた。あたしがそんな風に接してた相手は瞬だけで、子どものころのそれは瞬に見放されたくないって理由だった気がするけど、今はただ瞬といることがとにかく一番ホッとするし居心地がいいから。
「28日。数えてた。昨日も学校来なかったな。今日も学校来ないな。LINEに既読つかなくなった。気が付いたら何しててもあんたのことばっか考えてた。あんたに何が起きてるのか知りたくてしょうがないけど、あんたと連絡取る手段はないし。この家にはいっつも一花さんと嵯峨野芽衣がいて、親も親戚連中も絶対行くなって止めるから、近寄りづらかったし。しまいには、あんたともう会えないんじゃないかって不安が襲ってきて、心臓バクバク言い出してさ。あいつが初めてこの村に来た日、最後に会ったあんたのこと何回も思い浮かべて、涙出てきたりね」
あいつ、っていうのが芽衣さんのことを指しているらしいことに気づく。
なぜか瞬は彼女に敵意を持っているようで。
しかしそんなことより、瞬が語る心情のほうに気を取られる。
「あれ、私、蜜音と一日も離れてらんないんじゃん。……あいつのこと、こんなに大事だったのかって今更気づいて、自分に呆れたよね」
それは本当に告白だった。
あたしはいま、瞬に告白されてる。
顔が赤くなる。心臓が踊る。体毛が逆立つみたいに、肌がぞわぞわする。
「それは、だって、おかしいでしょ。女同士だし」
「あんたさあ。それ、ちゃんと本気で言ってる?」
あたしの咄嗟のおためごかしは、瞬のたった一言に簡単に切り捨てられる。
「……まあ、私が私で、目そらしてたとこもあったんだろうけど。あんたがそもそも、私のこと好きでしょ? 私と同じ意味で」
「ひっ」
そして、無造作に、ずっと秘めていた、一生言う気のなかったことを暴かれて、もう反論もできないあたしの喉から絶息だけが迸った。
それを聞いて瞬が笑った。
「あんたのそれ、久しぶりに聞いたなあ。小学校以来?」
うるさい。黙ってよ。いまはもうこの会話を続けたくない。
そう思っても思いは口から出てくれなくて、代わりにあたしはその場にへたりこんだ。
瞬がベッドから立ち上がる。そして、あたしに向かって片足を進めた。あたしは絶叫してた。下に聞こえてしまうかもしれないけど、今はそんなこと考えてられない。
「近寄らないでよっ!」
あたしの拒絶に、それまで笑ってた瞬が、目を細めた。ぞっとするほど冷たい無表情になる。
瞬にこんな顔で見られたのは、それこそ小学校の、友達じゃなかったあの時期以来だ。
告白されて、両想いだってわかって、信じられないくらいうれしいのに、だけどそれをそのまま受け入れることには、自分でどうにもできない抵抗感がある。
それに、瞬に思われることが喜びであればあるほど、ますますあたしは彼女と接触できない。
あたしを好きだと言ってくれた瞬が、明日にはあたしじゃない運命の人と出会って、いちねえたちみたいになってしまうなんて。
そんなことになったら、あたしは本当にこの窓から飛び降りるしかなくなる。
あたしの心情を知ってか知らずか、瞬がかばんをごそごそと漁りだした。
気が付かなかったけど、瞬は学校指定の手提げかばんを持ち込んでいたようだった。
「バールとこれ持ってここまで上がってくんのはまあ怖いなんてもんじゃなかったよ。でも絶対必要だと思って」
そう言いながら、瞬が取り出したのは、あたしにとってものすごく見覚えがある大学ノートだった。
「これも、これも、これも、これも。ほらっ、これも」
そして彼女は、あたしに向かってそれを放り投げ始めた。
大事な大事な漫画を、まるでちり紙ゴミみたく、投げ捨ててきた。
あたしの喉から悲鳴が飛び出た。あたしはそれを守るみたいに受け止めて、胸に抱きしめた。手からこぼれて守り切れなかったものが、変な開き方になって折れ曲がったり、ガラス片の上に着地するのを見て、涙が出てきた。
「やめてよ! なんてことすんの!? 大事な作品でしょ!?」
そうだ。大事な作品なんだ。
瞬にとってもそうであってほしい。だけど、何より、あたしにとってそれは命みたいに大事なものだ。
「ぜんぜん? 『失敗作』だし。ただの大学ノートの落書きじゃん」
「そんなこと、言わないで……」
あたしはそれをぎゅうと胸に抱きしめながら、震える声で言った。
瞬にだけはこれをそんな風に扱ってほしくなかった。
「……やっぱ気づいてたよね。そりゃ気づくか。露骨だし」
ぼそっと瞬がいう。あたしは悲しすぎて自分の目が充血していることを自覚しながら、瞬を見上げた。
なぜか彼女は、すごく照れくさそうに赤らんだ頬をかいていた。
「私があんたへの気持ち自覚したのは、確かに最近。でも、それから自分の漫画読み返して笑っちゃったよ。これも、これも、これも、登場人物の片割れ全部あんたじゃん。しかももう片方は私」
その通りだ。
瞬の漫画は、紋切り型に人物造形のパターンが少ない。だからお話の幅も少ない。
そして、作品ごとに男女を入れ替えてはいても、その片割れは引っ込み思案な臆病者で、もう片方は強気で相手を引っ張るヒーロー。
新作になるにつれて、心情描写の細やかさなどは進化していたけど、基本的な構造はいつも同じ。
うじうじしてばかりの臆病者。そんな彼あるいは彼女のことを実は大好きだったヒーローが、幸せにしようとする話。
そして決まって、告白はヒーロー側から行われていた。
そんなのをずっと読んでて、思わないわけがない。これが自分のことだと。そして、瞬のことだと。
「この漫画、あんたにしか読ませてないって言ってるよね? だからこれはラブレターなんだよ。私は漫画であんたにずっと告白してたんだ、無意識に」
瞬が、深呼吸のような大きすぎるため息を漏らした。
「まあ、ずっと不発だったんだけど。だからこれ全部、私にとっては出来損ないのラブレター。そして、あんたは知ってたはず。こんなあからさまなんだからさ、私が自分で気づいてなかった、じゃなきゃ目をそらしてた気持ち、あんたは気づいてたよね? 知っててずっと、これを受け取めて読んでくれてた。気持ち悪がるわけでもなく」
そこまで思ってたわけじゃない。でも、そうであればいいとは期待してた。しないわけない。
こんなのずっと読まされたら、片思いで大好きな人に、実は自分が思われてるって空想しないでいられない。
「ねえ、だから、はっきりさせてほしいんだけど。私はあんたのことが好き。あんたが別の誰かのものになるなんて思ったら、気が狂いそうになる。あんたも、私が好きだよね? 記憶のなかのあの視線もあの態度も、思い返してみたら全部そういう意味だってわかっちゃったんだけど?」
自惚れないで、なんていえない。
もうこうなったら、何も誤魔化せない。思えば、瞬が気づかないのをいいことに、自分の気持ちを隠すような態度が装えてなかった自覚はいくらでもあった。
瞬がまた一歩近づいてくる。あたしはそれを絶望の目で見る。
うれしい。うれしい。うれしくてどうしようもない。いますぐ彼女に抱き着いて、長年の思いを告げたい。
そして、それは終わりの始まりだ。
せっかく両想いになれたのに、あたしは彼女に触れた途端に彼女を失うのだ。陸斗さんがそうであったように、おそらくは友達でさえいさせてもらえなくなる。
あたしは、手近なガラス片を掴んだ。その拍子に手が切れた。そんなことは構わず、それを自分の顔に向けた。
「近寄らないでって言った。そこから一歩でも近寄ったら、これで自分の顔を刺す。脅しじゃないよ」
「……わけわかんない。なんでそんなかたくななわけ? 私、マジで一生分の勇気でこの告白してんだけど? あんたは絶対喜んで受け止めてくれるって思ってたのに」
あたしだってそうだよ。気が付いたら流れてた、全然止まってくれない涙はうれし涙だ。
こんなバカみたいな状況になってさえなかったらと、思わずにいられない。
ああ、これが罰なのかな。大事な人たちの人生狂わせて、傷つけて、やっと天罰が当たったんだろうか。
そうなることを望んでたはずなのに、いざ実際に下ってみると、それはあたしにはあまりにも辛すぎた。
「ああもう!」
悔し気に顔を歪めて、瞬が自分の頭を乱暴にかきむしった。
「私、男子だったらよかったわ。そしたら、あんたに力づくでのしかかって、何もさせないで私の思い通りにしてやったのに。そんな意味わかんないこといわせないで、無理矢理モノにしてやってたのに」
「そんなことしたら、窓から飛び降りる」
「わかった! わかったから! もうここから動かない! ほら! だからせめて、そのガラス置いて。心配で気が気じゃない」
そう言いながら瞬はその場に座り込んだ。そして無抵抗のポーズとでもいうのか、両手を上にあげた。
でもあたしはその指示は無視する。このガラスはあたしの生命線だ。これを置いて、瞬に飛び掛かられりしたら、命が終わるんだから。
「足りない。ベッドに戻って」
「……ああ、はいはい! あんたに命令されるなんて初めてだね!」
まったくその通りだ。こんなことは、あたしと瞬の人生で今後も起こるはずのないことだった。
かなりキレ気味にベッドに戻り、完全に不貞腐れた態度でベッドに座った瞬は、しかし決然として言った。
「いっとくけど、譲るのここで終わりだから。私、納得するまで帰らないからな。なんで近寄らせてくんないの? なんで両想いなのわかってて、告白受けてくれない? 理由全部聞くまでもう一歩も動かないよ」
「そんなの」
瞬は頑固だ。流されやすくて気が弱いあたしなんか比較にならない。
思考が冷静で、浮ついた気持ちでの行動なんか絶対しないひとだけど、だからこそ、こうと決めたことは何がなんでもやり通さずに終わらないひとだ。
それがどんなに過激で困難なことでも、決めたからにはやってしまう。
あたしは弱り果てた。瞬がこうなったら本当に止まらないのを、あたしほど知ってる人間もいない。
……言ってしまおうかな。言ってしまって、いいのかな。
バカげた話すぎて、いまだに誰にも言えてない。でも状況証拠からしたら確定的な事実。
瞬はあたしを笑ったりしない。それがちゃんと考えて出した答えだったら、彼女は一度もあたしを否定したことがない。
もし瞬にも話せないとしたら、あたしはこのさき一生、誰にも話せないでこの秘密を抱えて生きていくことになるだろう。
瞬は待っていてくれた。もう無駄口はやめて、口下手なあたしが何か言い出すのをただ待ってくれていた。
怒ってたかと思ったら、悩むあたしをいつものやさしい眼差しで見つめてくれてた。彼女のその眼差しが好きだ。それに見つめられることがずっと幸福だった。
あたしは結局、あらいざらいを打ち明けることを選んだ。
「漫画の話だ。私が描いてるのなんかより、よっぽどファンタジーな」
あたしの、今日までの罪の告解を聞き終えての瞬の第一声はそんな感じだった。
ただ、その声に揶揄する調子は少しもない。
「自分でだってそう思うよ。夢ならよかったって今でも毎日思ってる。信じられなくても無理ない。ううん、信じられるわけない」
「何いってんの。信じるよ」
真摯な声で瞬が言った。
瞬になら、って思ってたけど、それでもあたしの口からはつい否定の言葉が出る。
「……うそ」
「あんたが言ってるから、ってのもあるけど。状況的に、どう考えても、それが事実じゃん。嵯峨野芽衣がこの村に居ついてる理由も、あの身持ちが固かった一花さんが一晩で篭絡されちゃった理由も、それ以外で説明つかない。どっちも有り得なさすぎることが現に起きたんだから」
そう言ってもらえたことがうれしかった。自分の頭がおかしくなってるんじゃないかって思うような話を、好きな人に受け入れてもらえたことは、とてつもない安心感をあたしにもたらして、全身から力が抜ける。
でも、次の瞬間に彼女の口からとんでもないセリフが飛び出した。
「ねえ。じゃあ、嵯峨野芽衣には何もされてないんだよね?」
「は?」
どういうことだ。なんで、いちねえしか目に入らないあの人が、あたしに何かするというのか。いったい何をされるというのか。
唖然とするあたしに、瞬はぼそぼそ続ける。
「いや、だって、不安じゃん。なにも知らなかったんだし。だってあの一花さんが一発でモノにされちゃったんだよ。そりゃ、とんでもない女たらしがこの家にいるって思うだろ。そんなのに、蜜音が何かされてたらって考えたら、マジで頭おかしくなりそうだったんだよ。特にあんたのこと好きだって自分の気持ちに気づいてからは、あんたがあの女に襲われてる妄想止まらなくて。気が付いたら、今日のこれやっちゃってた」
呆れる。……芽衣さんへの敵意の意味はそれか。
そして、その根拠もなにもない妄想に駆られて、こんな犯罪行為をしでかしたのかこいつは。
あたしは思わず、くすくすと笑ってしまった。
「やっと笑った。可愛い」
「……急に変なこといわないでよ。恥ずかしいんだけど」
「なにが変なの。私はいま、世界一あんたのこと可愛いって思ってるけど?」
もうなんの躊躇いもなく、恥ずかしい口説き文句を連発してくる瞬に、あたしは目を合わせられなくなってうつむいてしまった。
気が付いたら、瞬がベッドから降りてあたしの目の前まで近づいてた。
「ちょっと……、近いって」
「ごめん。もう無理だ。抱きしめていい?」
「話聞いてた!? 触られるわけにいかないってわかるでしょ!?」
言いながらあたしは、知らないうちに心のガードがゆるみきって、手ばなしてしまってたガラスを慌てて探す。でも、話しこみすぎてる間に日が暮れだしていた室内で、無色透明のガラスをうまく掴めない。手探りで床を探る手に、武器になるものが当たってくれない。
おたおたしてる間に、あたしは手を引っ張られた。
油断してたあたしは、そのままベッドに引き寄せられて、抱きしめられながら二人でベッドに転がった。
あ。
終わりだ。終わってしまった。
一度は止まっていた涙が、さっきまでとまるで違う意味でどっと溢れ出した。
「……ダメだって! ダメだっていったじゃん! なんでいうこと聞いてくんないのぉ……! いっこくらい、聞いてよぉ……!」
もう何もかも手遅れだ。あたしは、瞬を抱きしめて、あたしが見たことのないような顔をさせてる、正体不明の人間を幻視した。
嗚咽が止まらない。しゃっくりみたいに、あとからあとからこみ上げるもので息が苦しくなる。
瞬はそんなあたしの背中を、ゆっくりとさすってきた。
「ねえ蜜音。実は私、さっきからムカついてんだよね。運命の人だかなんだか知らないけど、そんなもんに私のなかのあんたが負けるって思われてるのが許せない。いま私の心をどんなにあんたが埋め尽くしてるか、わかんないよね?」
耳元で囁いてくるそんな瞬の言葉にも、あたしの涙は止まらなかった。
そんなのは、いちねえやふたねえの変わりようを見てないからいえることだ。
『運命の人』って怪物は、どんなに真摯で一途な思いだって簡単に踏み越えてくるんだ。瞬がその例外だって思えるほど、あたしは自分に自信なんか持てない。
「そもそも、私からしたら、あんたが私の運命の人なんだけど?」
あたしはそれを聞いた瞬間、頭に血が上って、いうつもりのなかったことを口走ってしまった。
「だったらなんで遥と付き合ったの! 好きだったからでしょ!?」
「気持ちなんて最初っからない。というかもう別れてる。あんたが好きだって認めた日に、ちゃんと会って謝ってる」
あたしの非難を受け止めて、瞬が本当に一瞬の間もなく即答してきた。
……遥と別れてた? それも寝耳に水の話だったけど、それより聞き捨てならないのは、気持ちがなかったって発言だった。
だったら、それこそ、どうして付き合ったりしたんだ。
それまではいろいろ噂されながらも、結局は他人を寄せ付けてなかった瞬が、よりによって幼馴染の遥を選んだってことが、あたしをどんな奈落に叩き落としたか、わからないんだろうか。
そんじょそこらのぽっと出の、どうでもいい人と付き合うのとはわけが違う。
あたしが唯一だったはずのポジションは、きっと遥になら容易く奪われ埋められてしまって、そのうちあたしはいらなくなる。
だから、今度こそ完全に心に蓋をして、本当になんでもないただの友達にならなきゃいけないんだって、ずっと自分に言い聞かせてたのに。あたしのあの悲嘆と決心はいったいなんだったんだろう。
もう部屋はすっかり暗くて、すぐ近くの瞬の顔さえよく見えない。暗がりのなかの彼女の顔をつねってやりたい衝動に駆られて伸ばした手は、結局そんな乱暴なことはできなくて、彼女の鎖骨をひっかくにとどまった。
「あっ……蜜音、それ、やばい」
そんなことで変な声を出す瞬のほうがよっぽどやばい。
あたしは取り合わず、むしろきちんと、瞬の無責任なやり方に抗議することにした。
「なに、それ。ひどい。好きじゃないならなんで付き合うの。意味わかんない。遥にもかわいそうじゃん」
「かわいそう、ね。……ねえ知ってる? あんたって、あんたが自分で思ってるより全然モテるよ。あんたのことが好きだって言ってるやつ、私は何人も知ってるから。守ってあげたくなる、可愛いってさ。……遥もその一人だったってのは知ってた?」
遥が? それは、あたしにはちょっとびっくりする話だった。
そんな素振りも見せられたことはない。幼馴染とはいえ男女だから、瞬とは距離感も一緒にいる時間も違って当たり前だけど。
遥とそんなことになるのは、空想でも難しい。想われてうれしいという気持ちも、特には湧かない。
「遥があんたに告白しようと思ってるって聞いたとき、すごい胸がうずうずもやもやしてさ。あんたと遥が恋人の距離感で楽しそうにしてるとこ想像したら、叫びたいくらい嫌な気分になって。だから、私から誘って付き合ったんだよね。蜜音は奥手だから、ほかの誰かで練習しといたほうがよくない? って。でも、実際に遥と付き合ってみても、なんにも楽しくなくてびっくりした。当然だよね。嫉妬の対象はあんたじゃなくて遥のほうだもん。いま思うと、どう考えても私の蜜音を横取りすんなって動機でやったことなのに、あのときは自分の気持ちが意味わかんなかったな」
「……身勝手すぎるでしょ。本当に、ひどいことしてるじゃん。遥にしたらそれこそ何がなんだかわからないと思う。残酷だ」
「蜜音が好きって言ってたのに、私が誘ったら練習なんて言い訳付きでも簡単に彼氏になったやつなのにぃ?」
ハッ、と瞬が鼻で笑った。そして、明らかに嘲るような口調で言った。
「まあ、振り回したことは悪かったとは思うよ。だからちゃんと謝ったって。……ねえ、そんなことよりさ」
瞬が、あたしの手を取った。
それはさっきガラス片を握ったほうの手で、止血しなくても血はもう止まってたけど、生々しい傷口に触れられると、鈍く痛んだ。
瞬はそんなあたしの傷口を自分の口元に引き寄せて、舌を這わせた。
彼女の柔らかな舌が、露出したあたしの皮膚下を、湿っぽくなぞる。そこを起点にしてぞくぞくするものがあたしの背筋に走った。
「ちょっ、瞬。なに、なにして」
「こんなことしても、もう逃げないんだね。これ受け入れてくれたって思っていい?」
ドクンと心臓が高鳴る。嫌がる言葉を口先だけで吐きながら、確かにあたしは身を逃がす素振りすらしてない。彼女に食べられてる手を引くことすらしてなかった。
混乱のなかで考えるどころじゃなかったけど、いま、ずっと大好きだった人に抱きしめられてるんだって現実が急にあたしに襲い掛かる。
瞬の体はほっそりしてて柔らかくて、ずっと一番そばにいて嗅ぎなれてるくらいなはずの体臭が、これまでと違った意味合いを持ってやたらに甘く感じられる。近すぎる距離が、いきなりかきたてられたあたしの欲情をさらけ出させてしまいそうで、あたしは目で見て何も見えない闇に感謝した。
「ねえ」
瞬が、あたしの手を口に含みながら、もごもごと喋る。そのたび、喉の奥からゆっくり吐き出される息がてのひらに当たって、おかしな気分を加速させられる。
「ほんとに嵯峨野芽衣には何もされてないんだよね?」
「……まだ言ってる」
「自分が絶対勝てないような美人が好きな人の近くにいたら、警戒するでしょ、そりゃ」
芽衣さんは美人だ。客観的には誰が見ても、ただの女子高生に過ぎない瞬に軍配をあげる人はいないのかもしれない。
だけど彼女はいちねえの恋人で、いちねえのことしか見えてない。
そしてそんな前提条件なんかそもそも必要ないくらい、あたしにとって芽衣さんより瞬のほうが何万倍も魅力的できれいで可愛い。あたしが二人のどっちかを選ぶんだったら、何度やり直しても瞬を選ぶ。
そんな素直な心を告げたら、今日の瞬はどこまでも調子に乗りそうで悔しいから、それを口にするとしたらもっと日を改めないといけないと思った。
ズケズケと信じられないやりかたで押し入ってきて、今までで一番強引に、あたしが隠し通したかったものを全部つまびらかにしてしまった今日の瞬を、あたしは決して嫌いじゃないけど、ちょっとは許せないと思ってる。
あたしの心を知ってか知らずか、瞬はひどい質問を続ける。
「じゃあまだ、誰にも触らせてない? 何もさせたことない?」
「……ないよ。あたしのことなんて、瞬が一番知ってるじゃん」
「そうだね。じゃあ、これも初めてだ」
言って、瞬があたしの頬を両手で挟んできた。
次の瞬間には唇を重ねられていた。いつもリップクリームでケアを欠かさない瞬の唇は、つやのあるマシュマロにでも触れたみたいにふかふかと柔らかい。
あたしがそんなことを思えたのは触れた直後のそのときだけで、現状を認識したら、あとは血流が頭にのぼって何も考えられなくされてしまった。
キスされた!? 瞬にキスされてる!? え、うわ、やわらか。
大好きな人とキスする空想は、あたしだって女だからしたことがあるに決まってる。人生で感じたことがないくらい幸福な気持ちになって、その人と溶け合うくらい気持ちいい、そんな具体性のないふわふわした妄想だ。
でも、本当にしてしまった大好きな人とのファーストキスは、そんな何かを思考する余力なんてあたしから奪い去ってしまうほど、ただキスしてるって事実だけであたしの心臓を暴れさせ、恥ずかしいくらい顔を熱くさせるものだった。
本当に、顔が、熱い。自分の顔の熱で火傷しそうで、心臓が口から飛び出しそうで、息ができない。瞬と触れてるその場所が、何より熱い。彼女の体温があたしを焼く。
唇をただそっと閉じ合わせただけのキスは長く長く、何時間にも思えるくらい続いた。
あたしはその間ずっと呼吸を止めていて、やっと瞬が開放してくれたとき、はあはあと荒く酸素を求めてしまった。
ただそれは瞬も同じで、あたしたちは揃って無呼吸のまま頑張ってキスをしていたらしかった。
闇のなかからくすくすと笑い声が聞こえる。
あたしもそれに釣られて、笑ってしまう。
「あーーーーーーー! あははははは。キスしたあ。……やっとキスできた。ずっとしたかった。好きって気づいてから、会ったら絶対したいって思ってた。どうしよう。うれしい」
見えないけど、いまの瞬はきっとはにかんだような笑顔を浮かべてるんだろうなと思った。
他の人の前ではみせない、あたししか知らないだろう瞬の素の笑顔だ。
「蜜音。大好きだからね」
こんな状況で、こんなに真摯に思いを伝えられたら、あたしだっていい加減素直になるしかない。
ドクドクと波打ってちっとも静かになってくれない胸に手を当てながら、あたしも想いを返した。
「あたしも。瞬のことが大好き。……ずっと、ずっと好きだった」
明日のことがどうなるかなんてわからない。
でも、このしあわせの余韻を思い返すだけで、このさきの一生を大丈夫だって思えたから。あたしはもう抵抗をやめることにした。
ずいぶん嵩んでしまった想いを吐き出すように告げながら、あたしは自分から瞬に抱き着いた。
少しでも多く、この時間を自分のなかへ刻めるように。
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