【一章】方思わないデート⑧

僕らはパンケーキを堪能し尽くし、店から出る。


太陽は真上に登りテラテラと輝いている。

さて、ここからがより本番。


長すぎずされど短すぎない、程よいデートプランを考えてきたんだ!さっそく実行に移すとしよう。


「美味しかったね!あのソースとパンケーキの相性はたまらなかったなぁ」


食事の余韻に浸りつつ、会話の布石を作る。


「はい!本当に美味しかったです!今日は誘ってくださりありがとうございました!」


いつもの上原さんに戻ったみたい。

お店のときとギャップがありすぎて…、

もう感無量でした!


「こちらこそありがとう!そうだ上原さん。実はこの近くで、『にゃにゃ吉』のイベントがあるんだ。限定グッズとか色々あるみたいなんだよね、よかったら行か・・・」


「そうなんですか!実は『にゃにゃ吉』のイベント気になっていたんです!ぜひ!ぜひ!行きましょう!」


まさかここまで食いついてくるとは・・・。


『にゃにゃ吉』というのは、猫の姿をしたキャラクターで。

不思議な魅力に溢れた猫だ。

上原さんとのチャットで送られてくるスタンプがそのキャラなので、もしかしたらと思っていた。

予想以上に食いついてきたのは以外だった。


「ここから少し歩いたところだよ。じゃあいこうか!」


「はい!」


上原さんの手を取り、足波合わせて向かう。

手繋ぎも最初に比べて気軽にできた。


上原さんも案外気にしていないのか?

もしかしたら、好感度はもうある程度高いのか?

だが、ここで勘違いするのがラブコメの失敗する男の典型。

だが、何もしないのも失敗するのと同義。


とにかくやることは何も変わらない。

『方思わない』こと。

これだけはブレないようにしなくては。


数分歩いていくと、ハイビルの立ち並ぶ中の一つ。大型のモールが入ったビルへ入る。


イベントのある2Fへと向かい。

オシャレなお店が並んだ通りを、進んで行くと。

そこは人混みに溢れかえっていた。


まさかな…。

イベントのブース名をチェックすると、

『にゃにゃ吉』とバッチリ書かれていた。


うっそ!こんなにいるのかよ!

もしやあの猫はそれほど人気のあるキャラだったのか?


この行列は予想外であったため、特に整理券の類は持ち合わせていない。

これは非常にまずい。


「…すごい人だね。ここまでいるとは思わなかったよ」


「さすが、『にゃにゃ吉』です。それはそうと、どうやって中に入りましょうか?」


あまり動揺していない、上原さん。

なんか自分だけ疎外感を感じざるおえない。


入り口も出口も人の山。

中にはキャラクターのグッズが並んでいるのが僅かにみえる。

あの中に入ると二人きりの時間を送ることは難しいだろう。ここは諦めるしか…。


「なぁ上原さん。人も多いから一旦離れてカフェにでも・・・、あれ?上原さん」


さっきまでいたのに、いったいどこへ?

辺りを見回して姿がない。


ピコン!


どうやら通知がきたみたいだ。

すると、上原さんからの連絡。

どうやらイベントのブース内に入っているから待っててとのことだ。


浅はかだった。

あれだけ食い気味にのっかり、イベントを楽しみにしていた彼女がここで引き下がるわけがないのだ。

こうなったら僕も覚悟を決めよう!


僕は上原さんに『そっちへ向かう!』とメッセージを送り。


群がる人混みの中を特攻するのだった。

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