【一章】方思わない始まり⑦

「ねぇ、二人とも大丈夫?」


ユズハが心配して声をかける。

そう、僕と上原さんは委員長に頼まれていた雑事を放課後になるまでの合間を縫って終わらせ、委員長に報告し、大変喜ばれた。

二度とやりたくない。


「はい…、へ、平気ですよー…」


力のない声を出す、上原さん。

僕の仕事なのに手伝ってくれて、本当にありがとう!必ずお礼はするから!


「だ、大丈夫だ」


「ホントに?今日はやめとく?」


「無理はすんなよ、二人とも」


「「はーい…」」


気を取り直しつつ。

僕らは七不思議の調査に向かう。

とは言っても廊下をただ歩いているだけ。


「そういえば、七不思議ってどういうものなんだ?オカルトのようなもんか?」


僕はユウスケの意見を聞く。


「さあな、詳しくは知らないが。怪異とか心霊スポットがあるとかなんとか…、ユズハどうなんだ?」


「そ、そうね。アタシも詳しくはないけど。学園に古くから伝わる、7つの不思議現象で。

それを全て見た人には幸運が訪れて願いが叶うとか」


「新手の詐欺みたいだな」


僕は思わずツッコむ。


「あの、【テントウ】に何か書いてあったりはしませんか?」


「見てみたんだけど、まだ情報が出回ってないのよねぇ…、あ、履歴更新されてる!

ちょっと読んでみるね…、ええっとなになに…」


ユズハが見ている情報によると、

このように書いてあるようだ。



学園七不思議それは学園にまつわる創業の頃できた不思議な現象。


一人の女子生徒は、気になる男子生徒に恋心を抱いていた。しかし、彼女は内気で自分からアプローチすることができないでいた。

当時は男女別々の学舎であったため。

その彼を見ていることしかできなかった。


彼女はとある恋愛の伝承について聞き及び、一縷の望みを賭けた。


彼女は伝承に纏わる本を手に入れた。

伝承にはこのように書かれていた。


自分が望む、

恋の願いにも、暗き影。

季節をめぐる、

天使の使者が舞い降りたる。

福音が望み叶える。

楽器は七つの場所へ繋がれし、

蕾を咲かせるであろう。


1.筆:滲まれし漆黒を白き世界に現す。

2.絵:虹を架け自然が波打ち踊り子は笑う。

3.駒:争い対局せし木彫りの王が盤面に映る。

4.塩:海より与えられ人の体を整える。

5.水:万物の源が集まり湖の如し。

6.硝子:透明を熱し赤く染まり変幻する。

7.石:陽光を集め天の階段を登り天使を呼ぶ。

この7つを集めたまえ。


さすれば願いは叶えられ、

月が見える場で結ばれるだろう。



彼女はこの文を頼りに、学園中を巡り。

七つの不可思議な場所へと導かれ、

恋の蕾が咲き誇り。

思い人と無事に結ばれました。


めでたし、めでたし。


………。


彼女の思いが実って何よりだと思う。

僕も『方思わない作戦』を無事に達成するためにこの伝承が本当であればと願った。


感慨に耽っていると。



「なんなの、この文章?」


ユズハは、意味がわからない様だ。


「うーん。なにかの暗号に見えるが、

…あー!なんもわからん!」


ユウスケもお手上げみたいだ。


「おそらくですけど、七つの場所と7つ集めるには関係性がありそうですね」


上原さんは、どうにか意味を見出そうとしている。


「なー、コウヘー。こういうミステリーっぽい変なやつ、昔から解くの好きだろ?ささっと、解決してくれよ」


突然の他力本願。

こういうときは率先して動いてくれるんじゃないのか?


「僕は推理小説に出てくる探偵や刑事でも、暗号を解読する学者でもないんだぞ」


「そんなこと言って、ある程度目星はついてるんでしょ?」


ユウスケとユズハは、ニヤニヤしながら僕に言い寄ってくる。相変わらず二人のペースに巻き込まれてばかりだ。

はぁ。やれやれ。


「あの、幸平さんはこの暗号が何かわかってるのですか?」


「…まあ、ある程度はね。

この暗号。というより文には一見難しく書いてあるように見えるけど。上原さんが言ったように関係性がある」


「どんな関係性があるんだよ?」


「そのままさ。場所と集めるものは同じ。

例えば、1の『筆』はそのままの意味で筆。

筆を使う場所とはどこか?それは…」


「美術部だろ!あ、それだと2の『絵」も美術部になるのか?どうゆうことだ!?」


ユウスケは自分で混乱してるようだ。


「説明の途中だろ。筆のところは後の文で、『滲まれし漆黒を白き世界に現す。』とある。白き世界は白いもの。滲まれし漆黒というのは黒い墨を筆で滲ませたってこと。

つまり…」


「わかった!1の『筆』は書道部ね!白き世界は白紙のことを指す!

2の『絵』は美術部にある教科書くらいの大きさの虹の絵のことでしょ。

3の『駒』は将棋部にある王将で。

5の『水』は水泳部、かな?水泳部はもう練習始めるっていってプールに水張ってたし、

湖はプールのことかも!

あとの3つは、わからないなぁ…」


おっ、ユズハはわかってきてるみたいだ。


「4の『塩』は料理部でしょうか?人の体を整えるって食事のことかと。

6の『硝子』は『透明を熱し赤く染まり変幻する。』なので、ガラスを加工する場所が当てはまりそうです」


上原さんもついてきてるみたいだ。


「硝子は機械部じゃないか?機械ってガラス使ってそうだし」


「それなら工学部にある溶接場だろう。

あそこは美術部も何回か使わせてもらってるしな」


「そ、そうか…、まったく当たらねぇ…」


ユウスケはガッカリしている。


「優介さん、元気出してください!

まだ 7の『石』が残っていますから」


上原さんがフォローし宥めている。


「とはいってもよ、『石』なんてどこにでも落ちてるじゃんか。どれ集めればいいのかわかんないって」


「『石』は、『陽光を集め天の階段を登り天使を呼ぶ。』だもんねぇ。さっぱりわからないよぉ、サクラコはわかる?」


「そうですね。陽光は太陽の光で、天の階段というのは屋上へつながる階段。天使を呼ぶは笛でも鳴らすのかなと思いますが」


「おお!さすがサクラコ。でどうなのコウヘー正解は?」


「ああ、1〜6の場所と集めるものは合ってるみたいだ。7は僕も学園にそんなものがあったか思い出してるところ」


「なんだ。コウヘーも手詰まりかよ。だったら七不思議は頓挫か?」


ユウスケは諦めモードに入っている。


「まだ手詰まりじゃないから!思い出してるだけだから!なんだったかな…」


「まあ、焦らずに行きましょう!きっと、そのうちに答えを出せるかも知れませんし」


「答えを出す…か」


「なにかわかったの?コウヘー」


「ああ、この文は答えを出すためのものじゃない」


「え?どうゆうことだよ?」


「とりあえず、あんまり長居しても仕方ない。ユウスケとユズハは二人でさっきの6つを集めて、天文部へ行ってくれ。着いたらメッセを頼む」


「いいけど、石はわかったの?」


「ああ。上原さん一緒にきてもらっていいかな?石を取りに行くためには人手が必要なんだよ」


「はい!わかりました」


「なんかよくわからないが、コウヘーのことだ!あとは任せたぜ!」


「任された。二人も頼んだよ」


こうして、僕らは二手に分かれ。

七不思議を解き明かすために動き出した。


…あいつら部活平気なのかな?

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