【一章】方思わないデート⑤

ついに待ち望んでいた日が訪れた。

天候は晴れ晴れとした快晴。

僕は持ち物を再確認してはしまい。


念入りに全身鏡で服装チェック、

一応、雑誌に載ってた服装っぽいものを見繕って揃えてみたけど、変ではないだろうか?


先日は美容室へ行き、緊張で身がすくんでいたけどコーデは合格点をもらい。

髪型も爽やかに仕上げてもらったこともあるので、あとは待ち合わせの場所へ行くだけ。


ちなみに今日に至るまで、上原さんとはL〇NEで連絡をとり合っていた。


彼女も今日を楽しみにしているようで、

嬉しかった反面、ダサいと思われないかと不安が募る。


さあ、支度を整えていざ行かん!


最寄駅から一本で行くのは、

渋谷。僕らが待ち合わせたのはハチ公前。

集合よりも15分早くついてしまった。


ゆっくり待とうかと思っていたところ。

どこからか視線を感じる。すると、


「おはよーございます、幸平さん!」


背後から肩をちょんちょんされた僕は、

すっかり油断しきっていたらしい。


振り向くと。

制服の時とは違い、私服の上原さんは…。


どこに所属しているモデルなのかと錯覚するような。白寄りのベージュのニットを着こなし、膝下まで伸びる桜色のスカート、小さな淡いパステルグリーンのポーチが色味に深みを与え、高すぎない白ヒールを履いている。

清楚さの中に大人の雰囲気を纏い。

僕の心はすっかり虜となっていた。


僕以外の周囲の男も彼女に一目置いているように見えた。


「どうかしましたか?」


どうやら固まっている僕を見て、

心配そうな顔で見つめてきた。


「おはよう、ごめん。あまりにも上原さんが魅力的でつい見惚れちゃったよ」(素)


まずい。

『片思い』男子なら、この魅力でイチコロだっただろう。

なんとか鋼の精神で平静を保っているが、

これは童貞を殺す服・・・。

本当に実在していたなんて。


「あ。ありがとうございます。…幸平さんもその、いつもよりも素敵ですよ…」


目線を下に俯いて、蚊の鳴くような小さな声で褒めてくれた。

どうやら及第点は貰えているらしい。


「いつもより?」


あえて聞いてみる。僕の格好が悪いのであれば今すぐにでも服を買い揃えたい。

それとも、外見全てなのか?

そうなったらもうお手上げだ。


「あ、その!悪い意味ではなくてですね。普段の幸平さんもいいんですが、…その、今の方がかっこいいといいますか…こ、これ以上は…」


意地悪だったろうか?

恥ずかしさと照れ隠し?にも見えなくもないし無理をさせたのかどうかもわからない反応。はぐらかされてしまった気もするが、まあいいか。


「さあいこうか」


僕は自然に手を差し伸べる。


「はい!」


互いに手を握り。

いざ『方思わない作戦』決行!

今日で上原さんと友だち以上の関係になってみせようじゃないか!


緊張をハッタリで隠しつつ。

僕と上原さんのデートが始まった。





その様子を見つめる者が一人。


ジーーーーーーッと。

先ほどから彼らの様子を尾行していた。


『うそ、でしょ?本当に幸平が上原さんとデートしてるなんて…、もう少し近づいて様子を見ないと』


彼女はポニーテールをゆらゆらと揺らしながら後追うのだった。

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