【一章】片思わない始まり①
まずい。
まずいまずいまずい。
まずいまずいまずいまずいまずい。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまず、
「幸平!早くしなさい遅刻するわよ!」
お袋の怒声が響き渡る。
まあわかる。なんせ今日は始業式。
あれほど期待に胸躍らせていた今日という日を僕は焦りと自己嫌悪と反省で頭の中がいっぱいになっている。
なんでって、そりゃ。
現在8:10。
このままでは遅刻確定だからだ。
「自転車かりるよ!」
「自転車パンクしてなかった?」
はっ!そうだった!
2日前から修理に出して受け取りに行くの忘れていたんだった。
これは非常にまずい。
「もう、もういくから!いってくる!」
「幸平!お弁当!」
さすがお袋、こんな時でも用意してくれていたとは。しかーし。
「今日は午前で終わるから冷蔵庫に入れといて!」
感謝と謝罪を胸の内で済ませて。
僕は全力で走る。
昨日は妄想で時間を使い果たし、挙句に学校の支度もままならず。
親と朝のバタバタ劇場を繰り広げて、
今学校へ全力で走っているのだ。
側から見れば滑稽という言葉が相応しいだろう。
まあなんにせよ。
悪いのは僕なのでいうまでもない。
だがさっそく妄想実現プランから程遠いスタートを切ってしまうことになるとは。
予定では、校門前に開始ギリギリで堂々と始業式に現れて、イメチェンした僕の姿に全校一同が振り向き。
「みて!知らないイケメンがいる!」
「あいつこの学校にいったけ?」
「あのイケメンは一体誰なんだ!」
みたいな、モブ→イケメン枠にクラスチェンジできると思っていたのに。
これではいつもの僕だ。
何の変哲もない僕だ。
まあ、いきなりなにもかも違う僕を見られても。
あとで気味が悪いなんていう声が聞こえてきてしまいそうだし。
今日は大人しくしておこう。
いつも通りにモブTとしていよう。
そんな脳内整理が終わりを迎えるや否や。
目の前には校舎が見えている。
目算で後1キロ。
よし!間に合うぞ。これなら!イケる!
僕は今日ほど自分がラッキーだと思ったことはないだろう。ここまで一度もノンストップで信号にも引っかからず。全力で駆けてこれたのだから。
時刻8:29。開始は8:35。
先ほどバスで通う同じ制服姿を見かけたから、間違いなくこのまま行けば定刻通り到着できる。
このまま何もなく学校に着くことができそうだし。
さて、後でプランを練り直さないと、、、
「危ない!避けて避けて避けて!」
「ほへぇ?」
間抜けな声をあげたのも束の間。
ガッシャーン!
僕は身体の横に衝撃を喰らったのがわかると普段感じたことのない反動になす術もなく。
体は受け身?なんて高等な技を使えるわけがないので、もうそれは見事に物理法則に従って身体は動き続け。
全身の勢いが止まったなと感じた時には、耳から音は聞こえず、瞼が自然と閉じていき。
僕の目の前が真っ暗になった。
そう。僕はバイクに撥ねられた。
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