【終章一部】片思わなかったボクとキミ
陽光が差し込み、
ステンドグラスが一段と幻想的に輝いている。
聞こえてくるのは歓声と音楽。
美しい音色と、祝福を祝う声援が響き渡り、
今日という日を特別に彩る。
目の前には神父が一人。
祝いの言葉とともに穏やかな表情で感謝を伝えているのがわかる。
時が満ち、後ろを振り返る。
目の前には純白の衣装を纏うキミ。
その姿はまるで天使のようだった。
一歩、また一歩近づいてくる。
それは今にも溶けて崩れてしまいそうな雪のように儚く、けれど誰もが目を奪われる美しさにボクも思わず魅了された。
ボクは魔法をかけられたようにキミを見つめる。
キミは今日という日が来たのは運命なんだと呟いた。
ただ、ボクはこの日を何度も何度も何度も夢見ている。
ボクはこれを必然なんだと呟く。
キミはベールを覆ったままボクの前で、二人だけに聞こえる声で言った。
「あなたがワタシを選んだあの日から、
今日までこんなにも素敵で華やかな舞台の中心にいられるだなんて想像もしていなかったよ。本当に嬉しい、ありがとう」
キミはあの日のことをそんな風に考えていたのかとボクは少し驚いた。
確かにそうだ。ボクはキミと出会いその後も数多くの運命の人に出会っている。
けれど、ボクはキミを選んだ。
キミがボクにとってのあの日から特別な人になったからだ。
何もかも自分がボク自身を受け入れられなくなった悪夢のような日々にキミはいつだって。
力をくれた、
寄り添ってくれた、
支えて心配してくれた、
何よりボクを一番見てくれていた。
あの約束を交わした島にキミがいた時は、
ホントに信じられなかった。
ただそれと同時に、ボクはこの時の偶然を必然として見られるようになったんだ。
キミは最後まで、あの鍵のモチーフの付いたペンダントを持っていてくれた。
それがボクにとって唯一信じられる証明であり、今日を迎えるための決意が固まった瞬間でもあったんだ。
ボクにはそれが全てで真実だ。
ボクは数多くの実りある日々を振り返る。
あの日々はボクにとって大きな成長と宝物となったのはいうまでもない。
時間も進み。
キミのベールを脱がそうとしたとき。
ステンドグラスから差し込む陽光がより強くなった。
瞬きをすると、キミを中心にスポットライトが当たり光はキミに集まる。
まるでこの舞台の主役はキミだと告げているように。
ボクもキミが主役でいいと心から思うよ。
なぜかといえば。
覆われたベールを脱がせてもなお、
目の前に映るキミはまるで朝日を告げる太陽のように輝き。
何度もみた笑顔が一際、キミが最も今感じているだろう心の姿を表している。
嬉し涙の雫がぽつりと滴り落ちても、
絶やすことないその表情を見れば誰もが思うだろう。
キミは幸せなんだと。
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