とりあえず下書き

@huega

第1話

なぜ、こんな事になってしまったのだろう、夜、一人布団にくるまりながらそこに無い腕に話しかける。これは、私の物語。私の、このおかしくなった世の中で生きていく私の物語。

 2123年5月、私の家が火に包まれた、私は8歳、忘れられない、悪夢のような出来事だった。実際未だに夢に見る、それはいい夢でも悪い夢でもあるようで、火の中から救出される夢があって、日常がふと大火にきえる夢がある。私はそれから8年たった今でもまるで、なんの決着も付けられていないようである。

「おはよう穂乃歌ちゃん、今日はお寝坊さんだね。」おじさんの声がする。今何時なんだろう、そろそろ起きないと。

「おはようおじさん、今なんじ?」

「自分で確認してごらん」少し、不親切だ。

「うわ、もう十一時半だ」慌てて飛び起きる、でも休日なのになんで急かされてるんだろう?

「忘れてるみたいだね、今日は義手の調整があるでしょ?」

「あっ!忘れてた!」

「うん、だろうね。よくわからないけど、今日は偉い人も来るみたいだからおめかししていきな?ごはんは置いておくから、僕の用意してるうちに食べちゃいな。」

「ありがとうおじさん!」今日の予約をするときに先生が言ってた偉い人、どんな人か知らされなかったのは気になるけど、なにはともあれ行かないと。

 おじさんの運転する車に連れられて病院へ、この病院ももう馴染んだものだ、時折すれ違う顔なじみの看護師さんと挨拶しながらいつもの部屋に足を進めた。部屋に入るとお世話になっている少し痩せすぎで心配になってしまう先生と、知らないスーツの人が二人いた、一人は部屋のベッドに腰かけて大き目のケースを抱えていて、もう一人はテレビで見たような覚えが…

「灰見穂乃歌さんだね、はじめまして。私は小沼創史だよ。」小沼創史、少しまえにまだ若いのに政界入りして話題になった人、たしか40手前位で、対変異者犯罪に関して過激なことを言ってSNSで脚光を浴びた少し変な人。

「はい、はじめまして。灰見です。…その、小沼さんって、対変異者党の…」

「はは、そう固くならなくても大丈夫だよ。私はもう、政治家はやめてしまったただのおじさんなわけだしね。」TVを通してしかいなかったが、こうしてみると案外いい人なのかもしれない。

「そ、そうですか…」

「さて、ところでなんだが、私が今していることは知っているかな?」

「ええと、はい、ぼんやりとは。」

「うん、そう言ってくれると思っていたよ。期待通りだ。」

「あの、いまいち話が見えてこないのですが、どうして小沼さんがここに?それに、そう言ってくれると思っていた、というのは…」

「あぁ、私がしていることは対変異者だよ、もちろんそれは変わらない。でも少し具体的な話をすると、最近変異者犯罪が増えているよね?その対処は通常の警察では難しい、彼らに対抗しうる戦力を国は持ってはいけないことだしね。だから、それに対抗しうる力を集めている、というのが大凡の世間で言われていることだろう?それでだいたいあっているかな。」

「はぁ、なるほど?ですが、私はいわゆる普通の人ですよ?なんなら義手が無ければ普通の人未満の運動しかできないのですが。」少し、語気を抑えられなかった。

「少し、デリカシーがなかったかな。それは申し訳ない、すまなかった。まぁ、という事で、結論から言うと君にはこちらが作った火炎放射器の内蔵された義手を使って戦ってほしいんだ。」何を言ってるんだ、この人は。まともそうな人だという評価を反転させる必要があるのかもしれない。

「よっぽど訳が分からないのですが。」

「君は、幼少にして家族と両腕を失ったのにも関わらず、へこたれることなく学校で完璧な美人生徒会長との評価を得ている。そんな君を頭に据えたヒーローが必要なんだよ。」やっぱり、よくわからない。

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