第21話「チーム結成」
翌日からの取材、コラボ、チームへの勧誘、スポンサー契約、商品提供、プロモーションなどの申し込みは、
サブチャンネルの運営をしている
「やらかしましたねぇ」
「やらかしてはいねぇだろ」
「そうよ、ちょっと隠された真の実力が知れ渡ってしまっただけでしょ」
「いやいや、やらかしてますよこれはぁ。にゃんぴの月収、計算によると去年の年収超えてまうんですよぉ! 来年の税金がこあい!」
「税金か……今は好意で玲菜の事務所にやってもらってるけど、来年以降のことも考えたら、オレもちゃんと考えないとな」
日曜の午後、急遽開けてもらったプロダクションZUN-DAの会議室である。
虹愛の買ってきたドーナツを食べながら、三人は今後についての話し合いをしていた。
事務所の中は、突然増えた玲菜への仕事の対応でごった返している。
話し合い……とは言っても、いつもの雑談をしていた三人の元へ、ノートPCを抱えた玲菜のマネージャーが、汗をぬぐいながら現れた。
「しんかいさん、にゃんぴさん、お呼びたてしたのにお待たせしてしまって申し訳ありません。何しろご覧のようなありさまでして」
ノートPCを開いてプロジェクターにつないでいる間に、会議室には数人の大人がぞろぞろと現れた。
一番最後に入ってきた、ラフな無精ひげの男性に、玲菜が驚いたような顔を向ける。
男性は軽く手を上げると、一番端の椅子に疲れた様子で腰を下ろした。
「社長ちゃん、珍しいね、日曜なのに」
「はっは~、玲菜ちゃんさ~、誰のせいだと思ってんのよマジで~」
玲菜の軽いあいさつに、社長は笑って答える。
まさかそんなに偉い人だとは思いもしなかった海流と虹愛は、思わず立ち上がって頭を下げた。
「あ、いつもお世話になってます。しんかいこと
「あああの、にゃんぴです。れいぽむちゃんにはお世話になってます。今後ともよろしくお願いします」
「あ~そういうあいさつとかいらないよ~。こっちこそよろしくね~」
「そうそう、社長ちゃんってば堅苦しいの嫌いだから」
「いや~、さすがに『社長ちゃん』って呼ぶのはどうかと思うけどね~」
全員が席につき、マネージャーの咳払いで会議が始まる。
海流たち三人も、わけもわからず座った。
「時間もありませんので早速。プロダクションZUN-DAゆずチューブマネジメント部門『GYU-TAN!(仮)』発足につきまして、資料Aの1ページ目をご覧ください――」
会議の内容をまとめると、プロダクションZUN-DA(ずんだ)は、ゆずチューバーのインフルエンサーマーケティング事業やプロダクション事業、クリエイター支援を行う新ブランド『GYU-TAN!(仮)』(ぎゅうたん!)を発足する。
所属第一号は新居田玲菜、ゆずチューバー名は正式に『れいぽむ』として活動、公式チャンネルも作成する。
そして、目玉としてダンジョン攻略チームを発足。
しんかいとにゃんぴには正式に所属、もしくはマネジメント契約を結んで、ぜひともチームに入ってもらいたい。
そういう話だった。
玲菜とのコラボから今日までの、一学生には手に余る『しんかいチャンネル』の躍進ぶりに、普通とは逆の意味で不安を感じていた海流はかなり乗り気である。
しかし、虹愛は躊躇していた。
「にゃんぴは今冒険者資格を無期限停止中ですし。それに実は大手MDN(マルチダンジョンネットワーク)企業の『
「存じております。しんかいさんにも同様の連絡は来てますよね?」
「え? オレですか?」
言われて初めて、海流は連絡が来ていることに気づいた。
「……ほんとだ」
「もちろん、DDDMさんやBAZBAZさんはダンジョン配信事業の実績があります。しかし弊社としましても、ダンジョン配信は新規事業の目玉として考えておりますので、全社を挙げての支援をお約束します。WDO(世界ダンジョン管理機構)への登録も完了していますので、契約には必ずや満足していただけるものと思っております」
「あ~ね、一度親御さんにも話させてもらってさ~、うちは大手みたいに何千人って冒険者抱えてるわけじゃないから、細やかな支援ができると思うよ~」
後日、海流や虹愛の親との面談もあり、なにより玲菜の「うちの事務所と社長ちゃんは信用できるよ」という請け合いもあって、結局正式所属の運びとなった。
虹愛の冒険者資格も近日中に再開、ダンジョン配信チーム『GYU-TAN!(仮)』もWDOに登録され、ゆずチューブ同時配信の公開記者会見は、同時接続数100万人を記録した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます