第九回 除暴兇呂布助司徒 犯長安李傕聽賈詡
第49話 0049 第九話01 不用干戈不用兵
董卓とぶつかり倒してしまったのは
李儒はすぐに董卓を助け起こし、書院に座る。
「…何しに来たのですか?」
董卓の問いに李儒が答える。
「私がたまたま府門を通った時、董卓様が激怒して後園に入っていったと聞いたゲヒ!走ってくる呂布に理由を聞くと『うっひょおおおおw太師殿に殺されるうぅwww』と叫んで逃げたゲヒ!慌てて董卓様を説得するため庭に駆け込めば思いがけず貴方様にぶつかってしまいました!死罪ゲヒ!死をもって償うゲヒィ!」
「ヤツは逆賊です!私の愛姫と、いちゃいちゃしました!必ず殺します!」
「…お待ちください。昔、
李儒の言葉に董卓は暫く唸り、熟慮した後、言う。
「…まさに貴方の言う通りです。私も…そう思います」
李儒が謝して出る。
董卓は後堂に入り貂蝉を呼び、言う。
「貴方は呂布と指相撲をしたのですか?」
貂蝉は泣きながら答える。
「後園の花を観てると突然呂布が入ってきました。私が怖くなって逃げると、戟を手にして『オラは太師の子だゾォ!?何故逃げる!』と、鳳儀亭に追い詰められました。恐ろしくてこの身を池に投じようとすれば、却って身を抱きしめられました。その時丁度太師様が来られて…私を助けて頂いたのでございます」
「貴方を呂布に賜ろうと思います。どうですか?」
貂蝉は驚き泣き叫ぶ。
「わ、私は富貴を得たと思いましたのに、あのような下賤の元に!そのような辱めを受けるならば、死んだ方がマシでございます!」
壁に飾った宝剣を手に自害しようとする貂蝉。コワイ。
剣を奪い貂蝉を抱き抱える董卓。
「すみません、私が間違ってました…っ!」
貂蝉は董卓の胸に倒れ、顔を覆って泣きながら言う。
「これは李儒の謀でございましょう!李儒は呂布と仲が良く、この計を案じ…太師様の面子と私の命を弄んだのです!その肉を生きたまま喰らいたい程憎たらしゅうございますっ!」
「…私が貴方を捨てたいと思いますか?」
「太師様に愛されど、ここに居るのは恐ろしゅうございます。必ずや呂布が害しましょう…」
「明日には私と一緒に
貂蝉は涙を拭って謝した。
次の日、李儒が入朝して尋ねる。
「今日は吉日ゲヒ。貂蝉を呂布の元に送るには良い日でしょう」
「呂布と私は親子なので、やはり貂蝉は譲れません。私は彼を罪に問いません、そう彼に伝えて慰めて下さい」
「えっ?ちょっ、えっ??董卓様!?おっ、女の言葉に惑わされてはいけないゲヒっ!!」
董卓は顔色を変え怒鳴る。
「貴方の妻が呂布と通じたら、どう思いますかっ!?貂蝉のことは、これで終わりです!次何か言ったら斬りますよ!斬ります!」
李儒は退出し、天を仰いで叫ぶ。
「ゲヒっ…わっ我らは…女の手で滅びるのか…っ!!ふはははははっ!」
司徒妙算託紅裙,不用干戈不用兵。
三戰虎牢徒費力,凱歌卻奏鳳儀亭。
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用語解説
※荘王(そうおう)
春秋時代の楚の王。春秋時代の傑出した五人の覇者、春秋五覇の一人。
『
※絶纓之会(ぜつえいのかい)
ある時荘王が開いた宴会で蠟燭が消え、闇に紛れ誰かが后の唇を奪う。
その時后はその無礼者の纓(冠のヒモ)を引きちぎった。后は荘王に
訴えるも、「無礼講でしょ。皆明かりが灯る前に纓を引きちぎれ」と
命じた。
その後楚が秦に攻められた時、満身創痍となって楚のために奮戦する
勇者が居た。その勇者・蔣雄に「なんでそんな頑張るん?」と荘王が
尋ねると、「あの時后様の唇を奪ったのは私です」と笑って息絶えた
のであった。
※妾當生噬其肉!
慣用表現なのであろうが、直訳すると怖すぎる。
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