第39話 0039 第七話02 趙雲キタ――(゚∀゚)――!!



 袁紹が冀州きしゅうを手中に収めたと知った公孫瓚は弟の公孫越こうそんえつを派遣し、その領地の分配を求めた。


「貴方ではなくお兄様に来て貰ってもいいですか?♪」


 公孫越が帰路に就いて五十里もせぬうち、道の脇から軍馬が現れ叫ぶ。


「我は董丞相が家臣なり!」


 数多の矢を射かけられ、公孫越は射ち殺された。


 逃げ切った従者が公孫越の死を公孫瓚に伝える。


「騙したな袁紹…っ!私を誘いながらに裏では事を進め…更には董卓を騙り、我が弟を殺したのだっ!許せぬっ!」


 公孫瓚が全軍を起こして冀州へと殺到する。

 袁紹もまた、公孫瓚を迎え撃つ。


 磐河の上で両軍が相対する。


 袁紹軍は磐河の東に陣取り、公孫瓚は西に。

 橋の上で公孫瓚が叫ぶ。


「来たな袁紹!背信棄義の輩よ!」


 袁紹もまた馬に乗り、橋のたもとで公孫瓚を指差し叫ぶ。


「ふぉーっ!韓馥かんふくは無能ゆえ私に冀州を譲ったのです!貴方には関係無いオメェの席ネーから!ふぉーぅっ!ふーふーふ~ぅ♪」


「かつて私はお前を忠士として盟主と仰いだ!…今の貴様の狼心狗行の行状…よくも抜け抜けと世にツラを出せるものよっ!」


 袁紹は激怒して命じる。


「誰か奴を捉えて下さい!ふぅ~ぅ♪」


 袁紹が言い終わる前に橋の上を文醜ぶんしゅうが突撃する。槍を交える公孫瓚。

 十余合打ち合い、敗勢となった公孫瓚は陣へと逃走する。勢いに乗り追う文醜。


 公孫瓚は陣中に戻るも、文醜が追って突入する。

 配下の四人の将軍が迎撃するが、一人が文醜に刺し殺され、残る三人は皆逃走してしまった。

 陣を抜け山間に逃げる公孫瓚を文醜がなおも追う。


「馬を降り降伏せよっ!」


 巨声を放つ文醜に、弓を落とし、冑を堕とし、髪を振り乱して山坡を駆け回る公孫瓚は、落馬し山の斜面を転げ落ちてしまう。


 文醜が槍を回し刺し抜こうとしたその時、左辺の草影より馬に乗った一人の青年が飛び出で文醜へと向かう。



 キタ――(゚∀゚)――!!


 公孫瓚は斜面を登って青年を見る。


 身長八尺、濃眉大眼、闊面重頤、威風凜凜。


 キタキタキタ――ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ――!



 五六十合も文醜と打ち合うも勝負は着かず。公孫瓚軍が救援に駆けつけたため、文醜は馬を反して去っていった。


 青年も追いかけず、斜面を駆け降りその名を問う公孫瓚。

 青年は身を屈め敬礼する。


それがしは常山は真定の者。姓はちょう、名はうん、字は子龍しりゅう。元は袁紹の配下でござったが、漢朝への忠心、民への自愛無きと見て彼を見限り下野してござった。よもやここで伯珪はくけい殿と会えるとは」


 公孫瓚は喜び、体勢を立て直すため趙雲ちょううんと共に本陣へと戻った。





────────────

用語解説


※数多の矢を射かけられ、公孫越は射ち殺された。

 弱肉強食の群雄乱世の到来を認識し、早期に、果断に実行出来た者が

 その頭角を現す事となる。今回被害者となった公孫瓚も相当にヒドイ。


※磐河(ばんが)

 現在は確認出来ないが、山東省陵城区付近にあったという。黄河は歴

 史的にその流路を幾度も大きく変化させており、この磐河も時代と共

 に失われた黄河の支流であったのかもしれない。


※狼心狗行(ろうしんこうこう)

 貪欲で厚かましい。


※常山は真定

 常山郡真定県。現在の河北省石家荘市。


※趙雲 子龍

 三国志演義中、最も人気のある武将の一人。初登場キター!

 納金回は解説が楽で実に良い。


────────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る