第七回 袁紹磐河戰公孫 孫堅跨江擊劉表

第38話 0038 第七話01 袁紹の冀州強奪



 孫堅は劉表に囲まれたが、幸いにも程普・黄蓋・韓当の三将軍が救い出し、軍は崩壊したが江東へと帰還出来た。これ以降孫堅と劉表は宿敵となった。



 河内で駐屯してる袁紹は糧食が欠乏する。冀州牧の韓馥かんふくは袁紹に糧食を提供していた。

 袁紹軍の謀士・逢紀ほうきが進言する。


「天下を行く我らが何故わざわざ待つ必要がありましょうか。冀州は財物兵糧豊かな地、奪ってしまいましょう」


「ん~♪策はありますか?」


「公孫瓚に冀州を攻め取り分け合おうと書を出せば、必ずや乗ってくるでしょう。韓馥は無謀の輩…必ずや本初様に助けを求め、国を明け渡します。事は容易に運ぶでしょう」


 袁紹はこれに乗ってすぐに公孫瓚の下に書を届け、公孫瓚も冀州分割を喜び即座に兵を起こした。


 袁紹はまた韓馥にもこれを報告し、韓馥は慌てて荀諶じゅんしん辛評しんぴょうを呼び寄せ相談する。


「公孫瓚は燕と代の衆を率いて長く遠征し、その力には対抗出来ません。更には、劉備、関羽、張飛…彼らが居る限り我らは敵し得ないでしょう。今、袁本初の智勇は抜けており、配下にも多くの名将を控えます。彼に国政を委ねれば文節韓馥様は必ずや厚遇を受け、公孫瓚に煩わされる事はありません」


 荀諶の提案に、韓馥はすぐに別駕の関純かんじゅんを袁紹に送った。


 しかし長史の耿武こうぶが韓馥を諫める。


「袁紹は孤立して窮乏し、まさに膝の上で見上げて息をする赤子です。乳無くばすぐに餓死するでしょう。何故国を明け渡すのですか?羊の群れに虎を引き入れるようなものです!」


「私は袁家の故吏で、才能は本初殿に及ばぬ。古者は賢者に譲るものだ。…私の富貴栄達に嫉妬しておるのか?」


 耿武は嘆き呟く。


「冀州オワタ…」


 そのため三十人以上の者が棄職し、韓馥の下を去っていった。耿武と関純のみが城外に伏し、袁紹の到着を待つ。


 数日後、袁紹が軍を率いて至ると、耿武と関純は刀を抜いて出で袁紹に襲い掛かるも、耿武は顔良に、関純は文醜に斬り伏せられた。


 冀州に入った袁紹は韓馥を奮威將軍に任じ、田豊でんほう沮授そじゅ許攸きょゆう・逢紀らが国事を握り、韓馥のその権を全て奪った。


 韓馥は後悔するも遅く、遂には妻子を棄て陳留太守の張邈ちょうばくの下へと逃亡した。





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用語解説


※孫堅は劉表に囲まれたが~帰還出来た。

 原文通りなので、決して私は悪くない。


※関純(かんじゅん)

 正史では閔純(びんじゅん)。


※冀州(きしゅう)

 洛陽の東、黄河下流域、中原の中心部に位置する州。中原はかつて

 周王朝の王都洛陽付近を指したが、後に山東省西部から河北省南部、

 陝西省東部一帯を指すようになり、洛陽・函谷関以西を関中と称する。


※長史(ちょうし)

 時代によって変わるが、概ね高官の補佐職。この時代の地方では地方

 の名前に従って冀州長史などとして太守などの補佐についたようである。


※別駕(べつが)

 太守や刺史など、地方行政官の副官。語源は太守等の長官とは別の車

 に乗るという意味。今回の用語解説は楽過ぎた。もっと頑張れよ逢紀。


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