第28話 0028 第五話03 華雄出陣



 儀が終わり、袁紹えんしょうは下壇する。


 皆が袁紹を先頭に帷幕に入り、歳と官爵に応じて二列に座る。


 酒が数巡した後、曹操そうそうが言う。


「今、盟主が立ちました。各々は強弱関係無くその指示を仰ぎ、共に国家を扶けるでしょう」


「…非才の身なれど皆に推され、盟主となった以上は有功必賞、有罪必罰。国には常に法刑有り、軍に規律有り。皆これらを遵守し反しないようにしましょうっ♪」


 袁紹の言葉に皆が返す。


「承知致しました」


「我が弟、袁術えんじゅつが兵糧を管理し、諸営に不足無く供給します。…そして一人、先鋒となって正面から汜水関へと挑まねばなりません。残りは各々守りを固め、援護しましょうっ」


 長沙太守、孫堅そんけんが前に進み出る


「先鋒は…我が引き受けよう…」


「おお、文台まさに勇烈!是非お願いしましょうっ!ふーぅ♪」


 そして孫堅は軍を率いて汜水関しすいかんへと殺到した。


 関を守る衛兵は急ぎ馬を送り、洛陽らくようの丞相府へ事態を報告する。


 董卓とうたくは朝廷で権力を牛耳って以降、毎日宴会を開いていた。

 李儒が急報を受け、急いで董卓へと報告すると董卓は驚き、配下を招集し軍議を開く。


 温侯の呂布りょふが前に出て言う。


「心配すんな義父おやじっ!見たとこ連中は雑草みてえなもんだ、オラに精鋭を与えてくれ!奴ら全員の首をぶった斬って、都の門に掲げてやろうぜ!」


「私には、奉先が居ます。枕高く寝れます!」


 董卓が言い終わる前に、呂布の背後から一人が大声と共に出でる。


「『鶏を斬るのに牛刀を用いるのか?』温侯自ら出向く必要などありませぬ!奴らの首を斬るなど、私めでも造作なきこと!」


 董卓が見ればその者身長九尺、体躯は凄く、頭部も凄い。凄い。

 姓は華、名は雄。関西の者である。


 董卓はこれを聞き喜び、華雄かゆうを驍騎校尉とし兵五万を与え、李粛、胡軫こしん趙岑ちょうしんと共に汜水関に向け急ぎ出撃させた。

 諸侯の内、斉北相の鮑信は孫堅が先鋒となり主導権を握る事を畏れ、その弟鮑忠ほうちゅうと三千の兵を側道より差し向け、先立って戦闘を開始した。


 華雄は鉄騎五百を連れ関から飛び出し叫ぶ。


「賊どもめ!ここまでだ!」


 鮑忠は後退しようとするも、華雄の揮うその刃に斬り捨てられ、数多の将校が生け捕られた。

 華雄は鮑忠の首を相府に送って勝利を報告、董卓は華雄を都督に任じた。


 さて、孫堅はその配下四将を連れ汜水関に到着する。

 一人は鉄脊蛇矛の使い手、程普ていふ 徳謀。北平土垠とぎんの者。

 二人目は鉄鞭の使い手、黄蓋こうがい 公覆。零陵の者。

 三人目は大刀の使い手、韓当かんとう 義公。遼西令支の者。

 四人目は双刀の使い手、祖茂そも 大栄。呉郡富春の者。


 孫堅は銀色に光り輝く鎧に身を包み、紅い頭巾を頭にはためかせ、古錠刀こていとうを腰に乗るは花鬃馬かそうば。関の上を指し示して叫ぶ。


「…"邪惡"に加担する愚かなる者共よ…今すぐ…我に"降伏"せよ…」


 華雄の副将、胡軫が五千の兵で関を出て応戦すると、程普が槍を振り上げ一直線に胡軫へと向かう。数合もせぬうち、程普が胡軫の喉を貫く。

 孫堅は真っ直ぐ軍を関に向かって前進させて攻撃するが、関上より石と矢が雨のように降り注ぐ。

 そこで孫堅は軍を梁東まで後退させ宿営し、袁紹の元に勝報を、袁術の元に兵糧を催促した。


 …ある者が袁術へと告げる。


「孫堅は江東の猛虎。もし洛陽を陥とし董卓を討ったならば、これまさに狼を除いて虎を招くに同じ。今糧食を与えねば…彼の軍は必ずや敗北致します」


 袁術はこれを聞き入れ、兵糧を送らなかった。


 孫堅の軍は疲弊し、軍中は自ずと不平が高まりゆく。

 密偵がそれを関上に伝えると、李粛りしゅくが華雄に進言する。


「今夜私が一軍を率いて側道を抜け、奴らの陣を後方から奇襲します。将軍が正面から攻めれば、孫堅を捕らえられるでしょう」


 華雄はこれに従い兵に食事をさせ、夜に乗じて汜水関を出発する。





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用語解説


※汜水関(しすいかん)

 洛陽の東にある関所。三国志では他に虎牢関ころうかんの二つの関が登場するが、

 現実の汜水関は虎牢関の別名である。他に旋門関、武牢関など時代に

 よって名称は変わった。


※体躯は凄く、頭部も凄い。凄い。

 虎體狼腰、豹頭猿臂。紹介時のこうした文言、面倒臭いんで全力で

 適当に書いてます。


※鉄脊蛇矛(てっせきだぼう)

 程普の武器。刃まで連なった鉄芯のある蛇矛、又は鉄柄と刃が一つの

 蛇矛と言われる。


※鉄鞭(てつべん)

 黄蓋の武器。棒状の武器で鞭ではない。


※古錠刀(こていとう)

 孫堅の武器。その形状は青龍刀と言われる。日本で一般に青龍刀と呼

 称される刀は大陸では柳葉刀りゅうようとうと言われるもので、大陸で青龍刀と言え

 ば青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを指す。某ゲームでは一時何故か周瑜しゅうゆの武器であった。

 何故なのか。


※花鬃馬(かそうば)

 孫堅の愛馬。花の如き華麗なタテガミの意か。


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