第27話 0027 第五話02 反董卓連合



 さて、北平太守の公孫瓚こうそんさんは精兵一万五千を引き連れ、徳州平原県へと差し掛かっていた。


 馬で進んでると、遠くの桑中に黄色い旗が。数騎が駆け付ける。

 見れば、劉玄徳である。


「おお、賢弟よ。なぜここに?」


「昔、公孫瓚殿は私を平原県令に推薦してくれた。今大軍で通過すると聞いて、こちらにて特別に待っていた。城に入って馬を休ませてはどうか?」


 公孫瓚は関羽と張飛を指し、


「この者達は?」


「この者達は関羽と張飛。私の義兄弟だが?」


「おお、あの黄巾を破った勇士か?」


「うむ、全ては二人のおかげだ」


「して、今の官職は?」


「関羽は馬弓手、張飛は歩弓手だが」


 玄徳が答えると、公孫瓚が嘆く。


「なんと!このような英雄が埋もれようとは!今、董卓が天下を乱し、海内の諸侯がこれを誅滅せんとしている。賢弟よ、官を棄て一緒に賊を討ち漢室復興を目指さないか?」


「よいぞ、よいぞ」


 こうして三人は客将として公孫瓚軍に加わる。


「あの時、あの賊をぬっ殺してれば…。今みたいな事にはならなかっただろう」


 張飛の呟きに関羽が答える。


「…こうなっては致し方ない。今はただ前に進むもう」



 やがて公孫瓚と劉備らが到着し、曹操も着く。諸侯らも続々と続き、各々が連なり二百里に渡って陣を張った。

 曹操が牛馬を馳走に進呈して諸侯を集め、軍議を始める。


「大儀を得た今、指示を仰ぐ盟主を決めた後に兵を進めるべきであろう」


 河内太守の王匡おうきょうの提案に曹操が答える。


「袁本初は四世三公の名門。人脈も広く、漢の名相の家柄です。盟主となれるでしょう」


 袁紹は再三固辞するも皆が、


「本初殿でなければ」


 と推し、袁紹も受け入れた。


 翌日、五方に旗が立てられた三層の壇が築かれ、白旄黄鉞はくぼうこうえつ兵符将印へいふしょういんが並んだ上に、袁紹が登壇する。

 帯剣し正装した袁紹は、義憤激情と共に香を焚き拝す。


「漢朝不幸にして皇帝の権威失墜す。賊臣董卓、政乱に乗じて至尊に禍し、百姓虐遇す。我々は社稷の喪失を畏れ義兵を起こし共に国難へと赴く。我々皆、決して異心抱かず斉心戮力を以て臣節致す。盟に違う事有らばその命と家産を以てあがなう。皇天后土、祖宗明霊、皆之を見守り給え!」


 読み終わり、歃血そうけつする。

 その峻烈な宣誓の前に、皆涙が止まらなかった。





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用語解説


※馬弓手・歩弓手(ばきゅうしゅ・ほきゅうしゅ)

 馬、弓が上手い兵士。ほぼ一般兵卒に過ぎない。三国時代当時には

 存在しない役職。


※白旄黄鉞(はくぼうこうえつ)

 旗と金の鉞。白旄はからうし(ヤク)の尾で飾った旗。ヤクの尾の飾

 りとは武田信玄の兜(諏訪法性兜と言うらしい)の白いアレ。黄鉞は

 軍権の象徴。特に皇帝の軍権・専断権を指す。黄は錆びてない状態

 の青銅のこと。


※兵符将印(へいふ・しょういん)

 軍派遣の割符と将軍の印章。


※至尊(しそん)

 皇帝、王の敬称。後に孫権が一時、至尊を称する。


※百姓(ひゃくせい)

 農民の意ではなく一般民衆や数多の政府関係者。


※皇天后土(こうてんこうど)

 天地の神々。皇天は天の上帝、天帝。后土は道教最上位の土地を

 主宰する地母神。


※祖宗明霊(そそうめいれい)

 祖先の霊。


※歃血(そうけつ)

 動物の血を唇に塗る宣誓の儀礼。作者は今の今まで塗るのではなく

 飲むのだと思い込んでいた。


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