第24話 0024 第四話05 県令、陳宮 公台



 曹操は洛陽を脱出し、全力で譙郡へ向かっていたが中牟県を通過する際、関所の兵士に捉われ県令に引き出された。


「私は商人です。姓は皇甫こうほです」


 県令は曹操をまじまじと見つめ、暫く考え、言う。


「私は以前洛陽で求職していたので知っている、貴殿は曹孟徳そうもうとくであろう。何故隠すか?賞金が出ているからだ。収監し、明日には都へ送る」


 県令はそう言って、関の守衛に酒食を与え去っていった。



 その夜、県令は側近と密かに裏庭まで曹操を連れ出し、尋問する。


「聞く所によれば貴殿は丞相じょうしょうに厚遇されていたそうだな。…何故このようなことを?」


「『燕雀えんじゃくいずくんぞ鴻鵠こうこくの志を知らんや』!貴方は既に私を捉えました。

 …Bentoソリューションにご褒美をください!」


「……?」


「ごめんなさい、間違えました。…貴方は既に私を捉えました。後は私を突き出し報酬を求めれば良いだけのことでしょう」


 県令は左右に席を外すように命じ、そして曹操に打ち明ける。


「…見縊らないで頂きたい。私は俗吏では御座いません。未だ、主に出会えぬだけで御座います」


「我が曹家は代々漢の俸禄を頂いてきました。その国恩を忘れるならば禽獣と何も変わらないでしょう。私は不本意ながら董卓に仕え機会を伺いました。今回失敗したのは…天の意思でしょう」


「…これから如何なさるおつもりでしたか?」


「郷里に帰りしょうを称し、天下諸侯を挙兵させ董卓を討ちます。これが私の願いでしょう」


 話を聞き終わると県令は自らその縄を解き、曹操を立ち上がらせ、拝する。


「貴方こそ真の忠士で御座います」


 曹操もまた拝する。


「私の姓は陳、名を宮、字を公台こうだい。私の家族は皆東郡におります。今貴方の忠心に触れ、官を辞して是非貴方と同行を願いたい」


 陳宮ちんきゅうの言葉に曹操は喜ぶ。


 その夜の内に、陳宮は旅費と旅装を用立て、二人は背に剣を背負い、馬に乗って郷里へと向かった。



 …次回、曹操と陳宮の一大カーニバル、乞うご期待。

 はあああああ且聽下文分解!!





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用語解説


※譙郡(しょうぐん)

 曹操の郷里、豫州沛国譙郡譙県。現在の安徽省あんきしょう亳州はくしゅう市譙城区。


※中牟県(ちゅうぼうけん)

 現在の河南省鄭州ていしゅう市中牟県。後にここで官渡の戦いが起こる。


※県令

 一万戸以上の県の長。それ未満は県長。軍権・警察権等は県令の下の

 県尉が担った。


※丞相(じょうしょう)

 ここでは相国の意。


※燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや

 小人物には大人物の考え・志がわからないというたとえ。出典は史記。


※Bentoソリューションにご褒美をください!

 原文は「汝既拏住我,便當解去請賞」。

 以前、google先生に翻訳求めたらこんなたわけた訳をしてたんですが。

 今回再び伺った所、「私を捕まえたので、私の縛りを解いて報酬を求

 めてください。」と普通に直訳してきてなんか腹立つ。解去の訳が久

 しくわからなかったが、今回は突き出すと素直に意訳した。

 google先生はあくまで最後の手段で、訳が難解な場合は漢字・単語を

 一つ一つ調べた方が圧倒的に解決し易い。(いや当たり前


※俗吏(ぞくり)

 俗物な役人。無能。


※詔を称し

 詔とは天子の命令、意思。偽詔ぎしょうを発するということ。


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