第16話 016 第三話03 天子の帰還
段珪によれば何処に行くべきかわからず、途中で道に迷ってしまったという。
閔貢は段珪をサクっと処して馬の首元にその首級を下げ、兵を手分けして捜索した。
閔貢は自ら馬で道を行き、帝を探し求める。
偶然、
君臣、皆慟哭する。
「天下国家に一日たりとも帝が不在であってはなりませぬ。どうか都へお戻り下さい」
崔毅の家の一匹の痩せた馬に帝が乗り、陳留王は閔貢と一緒に乗り、出発する。
三里も行かぬうち、司徒の
先に都に段珪の首と共に報告し、帝と陳留王は馬を乗り変え一緒に乗り、一行は都へと戻る。
「帝は帝にあらず、王は王にあらず。千乗万騎が
洛陽の子供達が唄うは、まさにこの予言だったのであろう。なにそれこわい。
車駕が出発して数里、日を覆う軍旗、天を遮る土煙と共に突如として軍馬が到来した。
百官は皆失色し、帝は驚愕する。
袁紹が前に出で、何者であるかを問う。旗の影から一人が飛び出し、
「帝はどこでしょう?」
と厳しく問い質す。
帝は震えて声も出ない。
陳留王は手綱を引き前に出で叫ぶ。
「誰ですか!」
「私は、西涼刺史の
董卓が答えると、更に問う。
「貴方は我々を助けに来ましたか?脅しに来ましたか!?」
「かなり助けに来ました」
「帝はここです!助けに来たならば、馬を降りてはどうですか!」
董卓は驚き慌て、馬を降りて拝礼する。
陳留王は董卓を慰撫し、最後までその言葉が止まる事は無かった。
董卓はこれを面白いと見て、この時既に、
その日の内に都へ還って何太后と再会し、皆慟哭する。
宮中を点検すると、
董卓は兵を城外に駐屯させ、毎日軍で入城して街を練り歩き、民は皆不安を覚えた。
董卓はまた、何を憚る事無く宮殿に出入りする。
後軍校尉の
「うぇーぃ…まだ迂闊に動けません…」
鮑信はまた司徒の王允にも進言するが、
「私一人では決められぬ」
と返され、鮑信は己の軍を率いて泰山へと去って行った。
────────────
用語解説
※車駕(しゃか)
くるま。天子が乗るくるま。転じて天子の敬称。
※讖(しん)
予言。
凡そ二百年前、新の王莽の時代より流行った。後に時の王朝により
禁止された。こうした予言を子供の童謡に仮託している。
※「馬を降りてはどうですか!」
正史においても同様に記され、劉協の非常な聡明さが伝えられる。
※伝国璽(でんこくじ)
秦の始皇帝より伝わる玉璽。皇帝の印綬。ヒスイ製。権威の象徴、
レガリアであり、王権の証し。
※泰山(たいざん)
封禅の儀式が行われる、漢民族王朝・文化に於いて非常に重要な意
味を持つ霊峰。泰山郡が鮑信の故郷。
────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます