第13話 013 第二話06 二人の太后
次の日、
董太后は張譲らを呼び寄せ相談する。
「家臣の妹、何太后は始めは私も悪く思ってませんでした。しかし今その子が帝位に就き、内外は皆その腹心、その勢威に私はどうすればよいでしょうか」
董太后の問いに張譲は答える。
「太后様は後宮に居られたまま垂簾聴政なされば良いのです。
協様を王に封じ、
董太后はこの案に喜び次の日には協を陳留王に、董重を
何太后は董太后の専権に対し宮中に宴席を設け、董太后を招いた。
宴もたけなわ、何太后は自ら盃を持ち董太后に告げる。
「私ども女性が
董太后は怒り狂って返す。
「王美人を嫉妬で殺して何を言うか!子の即位に
「はっあああぁ?何キレてんの??マジ意味わかんねんだけどこのババア!!」
「肉屋の分際が何を国家を語るかっ!」
張譲らは争う二人の太后に帰宮するようなんとか説得した。
そして何太后は何進を呼び寄せ、夜を通して計画する。
何進は宮を出ると三公を呼びよせ協議、早朝には基より董太后は藩王の妃であり、宮に留まるに相応しくないとし、重ねて
何進は董太后に護衛のための兵を派遣する一方、禁軍により驃騎將軍の董重の家を包囲させ、その印綬を求めた。事態を悟った董重は屋敷の奥で自刃、家人は哀しみの中離散した。
張譲や
六月、何進は董太后を河間の
棺は
司隸校尉の袁紹が何進を訪問し、進言する。
「張譲や段珪らが何進殿が董太后を暗殺し、何かを企んでると吹聴してます。すぐにでも宦官どもを皆☆殺しにしないと後に禍が降りかかるでしょう。かつて
「…皆を呼んでくれ」
近侍が張譲に密告する。速攻バレてんじゃん…。
張譲らは賄賂を渡して何苗に伝え、何苗もまた何太后に上奏する。
『大将軍は幼い帝を補佐する立場であるのに慈悲に欠け、殺意に溢れています。今また十常侍を殺そうとし、混乱を招こうとしています』
しばらくして、何進は何太后に宦官誅滅の意思を告げると、
「宦官が禁裏を執り仕切るは漢王朝の習わし。先帝が亡くなり旧臣を殺すは宗廟を軽んじる事でしょう」
何進は元より優柔不断であったので、何太后の返答を聞き、ウニウニと退出した。
袁紹が迎えて首尾を尋ねる。
「如何でしたかぁ↑?ふぅーぅ!」
「太后は許さなかった。どうすれば良いか…」
「ダイジョーブ!
こいつそればっかだな。
「うむ、良い案である!」
何進は袁紹の進言に喜び各地の軍を都へ召還する檄を飛ばす。
「駄目です!俗に『掩目而捕燕雀』と言います、これは欺瞞です!」
「小事を無視して功は成し得ません!天下国家の大事はなおの事!今、将軍殿は皇威を得て軍事を握り、畏怖を以て上下臣下の心を得てます!宦官を皆☆殺しにしたいのであれば
と陳琳は袁紹wの案をフルボッコにするが、
「ははは!なんと臆病者の意見よ!」
と何進は爆笑する。
…すると拍手する男が。
「これはとても簡単なことでしょう。一体なぜわざわざ議論する必要があるのでしょう?」
皆が男を見る。
笑いながら拍手をする男、すなわち曹操孟徳である。
欲除君側宵人亂,須聽朝中智士謀。
果たして曹操は何を言わんとするのか。
且聽下文分解。
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用語解説
※録尚書事(ろくしょうしょうじ)
上奏を扱う尚書を束ねる役職。三公など上位官職が録尚書事を兼任し、
太傅以外は参録尚書事と呼ばれる。皇帝に直接訴えられる上奏を扱う
録尚書事は宦官と同じく大きな力を持つが、後漢末期の当時は宦官が
専横し力を失っていた。
※垂簾聴政(すいれんちょうせい)
幼い皇帝に代わり皇后・皇太后が摂政政治を行うこと。
※王
漢帝国内の藩国の王。皇帝が藩王として封じる。
本来王位は皇族にしか許されない。
※国舅(こっきゅう)
皇帝の外戚。皇后の親戚、すなわち血の繋がらない親戚である外戚は
後漢朝を通し宦官と政治の主導権を奪い合った。
※呂后
呂雉。高祖劉邦の皇后。劉邦死後、威勢を揮い国を乱した悪女。
※深居九重(しんきょきゅうちょう)
宮殿の中で慎ましく暮らすこと。
※河間(かかん)
現在の河北省滄州市河間市。
※その印綬を求めた。
驃騎將軍の印綬。基本的に皇帝の詔や印綬が無ければ兵は動かせない。
包囲した禁軍は何太后の直轄兵ということ。
※駅庭(えきじょう)
多分…駅家(公の街道宿泊施設)のこと。多分。
※洛陽(らくよう)
漢帝国の都。現在の河南省洛陽市。
※竇武(とうぶ)
後漢後期の外戚。桓帝時代に宦官と争い身を滅ぼした。
※内豎(ないじゅ)
雑事をこなす宮中の召使い。ここでは宦官のこと。
※宗廟(そうびょう)
古代中国において先祖への祭祀を行う霊廟。転じて王朝のこと。
※唯唯而出。
ただただ出ていくだけ、とも訳せるが今回はウニウニと訳した。ノリで。
※四方(よも)
※掩目而捕燕雀
目を覆ってスズメを捕まえる。
※如鼓洪爐燎毛髮耳
大きなかまどで毛髪を焼く、つまりはやり過ぎ。
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