第11話 011 第二話04



 さて、十常侍じゅうじょうじは既に政権を掌握、違いに結び自分達に従わぬ者を排除していた。

 趙忠と張讓ちょうじょうは黄巾平定の功労者に使いを遣り賄賂を求め、従わぬ者を免職していた。

 皇甫嵩こうほすう朱儁しゅしゅんらは皆これを拒否したため、趙忠らはその官を剥奪していた。

 また、帝は趙忠ら宦官を車騎將軍とするなど、十三人を列候に封じた。


 朝政はいよいよ乱れ、民の怨嗟が世に溢れる。


 また長沙で区星おうせいが反乱を起こし、漁陽で張挙、張純の父子が天子を称して朝廷に反駁はんばくした。

 救援を求める報せは全て、十常侍により儚くも握り潰された。


 ある日、帝の霊帝が十常侍と宴会をしてると、諫議大夫かんぎたいふ劉陶りゅうとうが帝の前で慟哭する。帝が尋ねると、


「天下がクソヤベーのに、陛下は尚もこいつらクソ共と飲み遊ぶんスかぁ!?」


 と訴える。


「天下は泰平であろう、一体何を言っているのだ?」


「どこかしこで反乱起きてるッス!それもこれもこいつら十常侍が官を売り民を害してるからッス!陛下騙されてるッス!マトモな者は皆朝廷を去り、破滅は目前ッスよ!?」


 十常侍達は皆、冠を外して跪いて曰く、


「御免なさい!悪う御座いました!我らは郷里に帰り、その財を全て反乱平定の軍資に充てます!」


 帝は劉陶に激怒する。


「お前も私を補佐する立場であるのに、何故一人私に逆らうのだ!?」


 そして近衛を呼び出し斬るように命じ、劉陶は叫ぶ。


「忠臣死を惜しまず!ただ四百年続く漢の終焉が無念でなんねッス!」


 近衛兵が劉陶を連行し刑を執行しようとしたその時、一人の大臣が叫ぶ。


「ちょ、待てよ!」


 司徒の陳耽ちんたんである。

 急いで室に入り帝に諫言かんげんする。


「劉諫議が一体何の罪を得たのでしょう!?」


「…我が近臣を謗り、私を欺いたのだ」


「天下万民は十常侍の肉を喰らいたい程に恨んでます!陛下は奴らを父母の如く扱い、皆功も無く列候に封じてます!いわんや封諝ほうしょは黄巾と結び、反乱を起こしました!今、陛下が省みねば漢の社稷しゃしょくは間もなく崩壊いたしましょう!」


「封諝についてはわからんが、十常侍の中に一人でも不忠者が居るだろうか?いや、居ない(反語」


 陳耽は頭を床に打ち付け諫めるが、帝は怒って外に出すよう命じ、劉陶共々獄に繋がれた。

 その夜、十常侍はすぐに二人を獄中で暗殺、帝に区星討伐を孫堅に命じる詔を出させるのであった。


 五十日も経たぬ内に江夏平定の報が入る。

 孫堅はその功により烏程おてい侯に封じられた。


 また、劉虞りゅうぐは幽州牧に任じられ、漁陽の張挙討伐が命じられた。

 代州の劉恢りゅうかいに玄徳を推薦された劉虞は喜んで玄徳を都尉といとし、賊を攻撃させた。

 戦いが始まり数日、賊の士気が落ちてくる。張純は粗暴であったので、帳下のかしらが張純を刺殺し、その首を献じて降伏した。

 張挙もまた敗北を悟って首を吊り、漁陽は平定された。


 劉虞は平定の功により太尉に封じられた。

 玄徳の功を劉虞は上奏し、督郵にハッスルした罪を免じられ、下密丞から高堂尉となった。

 公孫瓚もまた玄徳の以前の功績から別部司馬、平原県令に推薦する。


 玄徳が県令となった平原は、かつての活気を取り戻しつつあった。




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用語解説


※車騎將軍(しゃきしょうぐん)

 漢代の将軍位の一つ。大将軍、驃騎将軍に次ぎ上位。

 常任ではなく反乱征伐時に任命されることが多い。


※諫言(かんげん)

 目上に対して問題を指摘し物申すこと。諫める。


※諫議大夫(カンギタイフ)

 帝を諫める諫言を主な職掌とした官職。諫官。

 つまり諫議大夫を処断する帝はもう終わってる感じ。


※封諝(ほうしょ)

 一話で黄巾と結託し斬罪された十常侍。


※社稷

 古代中国の祭祀。土地(社)と穀物(稷)の祭壇の意。

 古代の王・皇帝が執り行う国家祭祀であり、転じて

 国家・国体そのものも意味する。


※区星

 オウセイ、と読む。旧字は區星。

 これオウって読むんか…と馴染みない読みに驚きが多い。


※都尉

 郡の軍事を司る官職。古代中国・漢代では県より郡が大

 きいため、都尉は県尉より上。州-郡-県-郷-里と続く。


※帳下の頭

 幕下、部下のリーダー。


※高堂尉

 多分官職。ググってもわからない。

 多分下密丞よりは上。

 これ、マジでわからん。


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