第4話 004 第一話03


 張飛は言った。


 「ウチの裏に桃が咲き乱れている。明日三人で義兄弟の誓いを立てよう。心を一つにし、大事を為すのだ。」


 玄徳と雲長も「それ、めっちゃいいね」と頷いた。


 次の日、その桃園で祭礼の準備を整え、香を焚き、三人は誓う。


「我ら姓は違えど兄弟となる。心を一つにし、助け合い、国家を救い、民を安んじる。」


「生まれた日月は違えども、願わくば同年同月同日に死なん。」


 誓い終え、玄徳を長兄、関羽を次兄、張飛を末弟とした。

 天地を祭し、郷里の勇士が集まり、三百人を得、桃園にて飲み喰いした。


 翌日、軍備を整えたかったが乗る馬が無かった。

 悩んでると、良い報告があった。馬を引き連れた人らが村に来たという。


 「これは天の助けだ!」


 玄徳は叫ぶ。

 三人は表に出て応対した。


 彼らは中山の商人で、張世平ちょうせいへい蘇双そそうと言う。

 毎年北へ馬を売り回ってるが、黄巾の反乱のせいで帰ってきたという。

 玄徳は二人を家に招き歓待した。盗賊を征伐し民を安んじたいと伝えると、二人は喜び、馬五十匹と金銀五百両、鉄千きんをくれた。太っ腹過ぎる。そりゃまあ、ゴロツキ三百人に囲まれれば、ねえ?


 玄徳は感謝して二人を見送り、名匠に双股剣そうこうけんを造らせた。

 雲長は「冷艷鋸れいえんきょ」という名の八十二斤の青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを。

 張飛は一丈八尺の点鋼矛てんこうぼうを造り、各々全身の鎧も造った。

 集まった勇士は五百人になった。


 城に行き鄒靖すうせいに会うと、太守・劉焉りゅうえんにお目通しされ、三人それぞれが名乗る。


 玄徳は己の出自を語ると、劉焉はめっちゃ喜び、玄徳を親族と認めた。


 玄徳を親族と認めた。



 玄 徳 を 親 族 と 認 め た。




 玄 徳 を 親 族 と 認 め た。 ←ここめっちゃ重要な伏線。






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用語解説


関羽かんう 雲長うんちょう

 劉備の義兄弟。三国志で最も人気あるキャラの1人。ヒゲがトレードマーク。

張飛ちょうひ 翼徳よくとく

 劉備の義兄弟。庶民に人気がある暴れん坊。正史の字は益徳。

※桃園の誓い

 劉備、関羽、張飛の三人は桃園で義兄弟の契りを交わす。

 三国志で最も有名な場面の一つ。

 演義原作で三人は、割と淡白な出会いからすぐ義兄弟になったので作者は困惑した。

 この辺りの盛り付け、困った作者さん多いんじゃなかろうか。

張世平ちょうせいへい蘇双そそう

 いくらなんでも都合良過ぎる援助だが史実らしい。スゲー。

双股剣そうこうけん

 雌雄一対の剣とも。双剣。中国の双剣・双刀は一つの鞘に二本収める。

冷艷鋸れいえんきょ

 関羽の武器。多くの場合青龍偃月刀と言われる。

 青龍偃月刀は一般名詞で実はこちらが固有名詞だったりする。

丈八点鋼矛じょうはつてんこうぼう

 張飛の武器。一丈八尺の槍。こちらも蛇矛と呼ばれることが多い。

※玄徳を親族と認めた。

 伏線なので覚えておいて下さい。


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