ダンジョンファイト
“ダンジョンファイト”。
アウトロー路線のⅮライバーが流行らそうとしている合言葉だ。
詰まるところダンジョン内の喧嘩の事である。
Ⅾライバーの中には、決闘系というジャンルでライブチャンネルを運営している輩が少なからずいるのだが。
いよいよ、そんな言葉を作ってまで、ダンジョン探索配信の人気ジャンルの一つにのし上がっていこうという動きが活発になって来たのだ。
ネット上に《Ⅾライバー最強ランキング》》なんてものが存在するくらいには、皆、探索者の強さに注目していたりする。
そして、今やⅮライバーも飽和状態。
趣向を凝らしてモンスター相手に探索をしながら配信して、頑張って他と差別化しつつチャンネル登録者を獲得するよりも、同じ探索者相手に喧嘩を吹っ掛ける動画を上げた方が簡単に、かつ多くの人の注目を集められると気付いてしまったのだ。
最近では、わざわざ決闘系にシフトする配信者まで現れてきた始末。
もう既に、ダンジョンファイトは、Ⅾライバー界隈に浸透しつつあるのだ。
まぁ、そんな決闘系にも弱点があった。
そもそも犯罪として捕まるリスクがあるのだ。
いくら、ダンジョン内の犯罪検挙率が低いからと言って、わざわざ動画に証拠を残す馬鹿も居ない。
なので、彼らもそこらへんは考えてはいた。
今回もそのパターンだ。
「ここさ~、ウチら“トリプル・スコア”の狩場なんだけど?誰に許可取って撮影してんだよ!?ああ!?!?」
トリプル・スコア……、聞いたことあるような無いような……、どちらしろこの感じ、十中八九決闘系なのは間違いなさそうだ。
その三人の中で一番の大柄。
腕に刺青をした男が威勢よく、怒鳴って来た。
こうやって、難癖を付けて喧嘩に持って行くのだ。
何ともあからさまで、馬鹿っぽいが、結構常套手段として決闘系の間では使われていたりもした。
「え……?はい?い、いや……。な、なんだよアンタら……。――じゃなくて!別にどこで探索配信をしようがこっちの勝手だろ……!?」
「あ”あ”あ”ん!?!?」
うわ、めっちゃ怖いんですけど……。
いや……!気持ちで負けるな辰海!!俺には今、15万人の視聴者が付いているんだ――。
すたみな次郎『うわ、絶対迷惑系Ⅾライバーじゃん……』
みぎよりレッドロード『やっちまえタツミ!』
oni瓦『俺らのタツミに挑もうなんて700年は早いよなw』
ばるにあん『やっちゃってくださいよ!魔王様!!』
RB箱推し『負けるな!』
弩利採る『お、やるんか!?』
ってこら!お前らが煽るな――!!
くっそ、人の気持ちも知らないで……。
まぁ、これからは俺のライブ配信でもこういった場面は増えてくるだろう。
どの道、遅かれ早かれというやつだ。
有名Ⅾライバーになるという事は、こういった輩のターゲットになる可能性が増えるという事でもあった。
多分こいつらも、俺達が今注目のⅮライバーだって知っていて絡んできたのだ。
それだけでも、自分達の宣伝になるからだ。
三人とも手には剣をちらつかせている。
「こんなに俺らの狩場のモンスター殺しやがって、弁償しろよなコラ!?」
「お兄さんさあ、人に迷惑掛けたらまずは、すみませんでしただろ?」
他の二人も出張って来た。
「は!?アンタら後から着といて何言ってるし!こういうのは早いもん勝ちじゃん!!」
春沢が負けじと対抗する。
「なんだとコラ!?――って、けっこー可愛いじゃんw」
「なになに?いいじゃん!おねぇさんさー、お詫びに俺らんところで配信してよ!!」
「あ!ちょ!!触んなぁ!!!」
刺青が春沢の腕を無理やり掴んだ。
「おい!やめろよ!!」
咄嗟に手が出て振り払う。
「いってえ!?」
「あー?何???やっちゃう感じっすかwww!?」
「あーあ、先に手ぇ出したのはそっちだからな!!??」
男達は正に待っていましたという様な、嫌らしい笑みを浮かべる。
あー、やっぱりこうなる流れか……。
「辰海、コノ人達のヤッテル事滅茶苦茶デース!――ソレニ春ちゃんに乱暴シヨウトシマシタ。許セマセン!!」
「こういうのは駄目だって、ちゃんと教えないとね」
ビクトリカさんも斑鳩さんもやる気になっている。
確かに、こういう輩には痛い目に遭わせるのが一番だ。
ここから平和的な解決に持って行くのも無理だろうし……。
が、そうとなると、四対三。
「……」
こちらの方が過剰戦力になってしまう。
「仕方ない!この俺が一人で相手してくれるわ!!」
「辰海!?」
「はぁ!?」
「舐めてくれんじゃねぇか!!」
「急に調子こくんじゃねえよ!!!」
俺が一人前に出る。
「ズルイデース!私も春ちゃんに良イ所見セタイデス!!」
「まぁ、僕ら全員で相手したら死人が出そうだし、流石にね……?」
「ムー、分カリマシタ……」
浴びるごはん『負けんなタツミ!』
感嘆すけぼぅ『いけいけ』
お天気おじさん『これ大丈夫なの?継承者って凄い強いらしいけど……』
ええい!こうなったらままよ――!!
拳を前に、かかってこいとファイティングポーズをとった。
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