やっぱりこうなる

 俺と春沢が漫才をしている間にも、ビクトリカさんが敵を殲滅していく。


 見る見るうちにスカル・スパイダーの死体が量産されていった。


 「ムフフー!御茶の子さいさいデース」


 モンスターの群れの中を、ダークエルフが得意げに駆ける。


 が。


 「――oops!?」

 「あ……」

 「ちょ……」

 「ビクトリカ!?!?」


 調子に乗っていると。


 ビクトリカさんは、地面にへばり付いていたスカル・スパイダーの粘着液に足を絡めとられた。


 それがトリモチのように働いて身動きが取れなくなってしまう。


 「oh my god……」


 顔が青ざめていく。


 「キシャアアアアア!」

 「キシャアアア!!キシャアアアア!!!」


 スカル・スパイダーはここぞとばかりに、ビュクビュクと白い液体……、んん!もとい、粘着性の液体がビクトリカさん目掛けて発射する。


 「no、ベタベタシテナンダカ気持チ悪イデス……!」


 褐色の肌に白濁したのりの様な液体がまとわりつく。


 おまけに蜘蛛の巣の原材料だけあって、そこそこ強度もあるらしい。


 力づくで千切って脱出を試みても、糸の様に伸びて身体を雁字搦めになっていく。


 モノクロのコントラスト、胸や太腿に食い込んで、ドえらい光景になってしまっていた。


すたみな次郎『“¥1140”』

姫ちゃんぱぱ『“¥700”』

みぎよりレッドロード『“¥1000”』

ふらっぐ・湿布『“¥480”』

痛風のタツナー『“¥3000”』

涅槃『“¥100”』

ないす暴徒『“¥690”』

たかふみ『“5000”』

電信pencil『“¥1140”』

なはと・クライマー『“¥777”』

B・B『“$200”』

暗黒☩騎士ざまぁん『“¥1140”』

お天気おじさん『“¥1140”』

ばるにあん『“¥2000”』


 「無言の投げ銭やめい!!!」


 まったく……、新規たつらー達の中からも馴染んできたのが出て来てるし……。


 いや、今はそんな事に構っている暇は無い――!


 早くビクトリカさんを……、


 「!?」


 瞬間。


 ゴオンっと、俺の横を何か巨大な物が高速で移動していく。


 え!?電車……???


 太い筒状の物が通過する。


 違う!これは……。


すたみな次郎『え?何!?』

脱兎『なんだ!?』

真っ暗れーん『でっかい!』

@マン『敵か?』

鶏でも食べる獣『電車?』

アイロン男『そんなわけw』


 「キシャア!?ア”ア”ア”ア”!!??」


 パラディオンのだ。


 それが一気に質量に任せてモンスターをブチブチと擦り潰しながら、ビクトリカさんの方まで伸びていく。


 「う……、夢に出そう……」

 「マジか……」


 そして、次の瞬間には俺の後方へと戻っていった。


 斑鳩さんは、腕の部分だけを変身させてビクトリカさんを助け出したのだ。


 なんて器用な――。


 一部だけ変身ってのは笠井もやっていたが、さっきの源さんの時と良い、見た目や雰囲気に反して中々の戦闘能力があると見た。


吉良りん革命『腕!?』

たぬきつねそば『え!?腕だけ!??』

オシャレ侍『斑鳩ってのも継承者なん???』

空中ブランコ『つかなに?巨人とかもいるの???』

@マン『どんだけ継承者いんだよw』


 そんなコメントをよそにビクトリカさんは斑鳩さんに救出されてスカル・スパイダーから吹き付けられたものを取って貰っている。


 「怖カッタデース……!」

 「そうだね、これからは慎重に戦おうね」

 「ソウシマース」

 

 なんだか、斑鳩さんがビクトリカさんのお母さんに見えてきた。


 「辰海くんもびっくりさせてごめん。咄嗟に身体が動いちゃって……、一応マネージャーだし……」

 「あ、全然大丈夫っすよ」


 多分そういう関係じゃないという事は、俺でも察するくらいは出来るのだ。


 ここであまりイジらないのが、硬派なおたくなのだ。


 春沢は帰りの車で弄りそうだが……。


 などと、考えていると。

 

 「おい!」

 「?」


 不意に誰かに声を掛けられる。


 一瞬で分かる。


 敵意を感じさせる声だ。


 「まさか、リベレイター!?」

 「ちょ!マジ!?!?」

 「多分違イマース」

 「え!?」

 「うん、そうだね。彼女達も過激派だけど元は僕らと同じLIBERATORだ。一般人を巻き込むような場所では襲ってこないはずだよ」


 確かに、前回も襲われたのはスタンピードを鎮めた後だった。


 となると。


 やって来たのは三人組の男。


 彼らの周りにもドローンカメラが飛んでいる。


 Ⅾライバーだという事は直ぐに分かった。

 

 



 


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