隣の突撃エージェント
oh my God……。
玄関の扉を開けると、そこにはビクトリカさんと斑鳩さんが立っていた。
「どなたー?って!?外人さん!!??」
成程、そう来たか――。
「隣に越シテ来マシタ斑鳩デース!」
「あ、そうなの!?」
数日前に。
お隣さんが急に引っ越していき空き家となったのだが、時期も中途半端なので家族の間でも話題になっていた。
これがLIBERATORの権力なのかレイズバックの能力なのかは分からないが、ビクトリカさん達は俺の周辺警護をする為に、家を丸々一軒用意したのだ。
「コチラ、ツマラナイ物デスガ……」
そう言って、乾燥タイプの蕎麦を渡す。
「ビクトリカ、今はそういう言い方しないから……」
「oh!ササヤカナ物デスガ、オ近ヅキの印デース!」
「わざわざ悪いわねー。新婚さん?」
「ワカリマスカ!?ソノ通リデース!新婚ホヤホヤラブラブデース!!」
「……」
流石、スーパーエージェントを名乗る事だけはある。
新婚夫婦の設定で自然にこちらに接触を図って来たという訳だ。
「貴方、日本語ねー」
「ムフー。努力の賜物デス!」
「旦那さんもこんな美人なお嫁さんで、幸せ者ねー」
「あ、いやまぁ……」
「yes!ダーリンは、幸セ物デース!モット幸セソウにスルデース!!」
ビクトリカさんは終始斑鳩さんにべったりくっついている。
それにしても完璧な演技である。
「あら、旦那さんの方は引っ越し疲れ?」
「はい……。そんな所です」
ん?
ビクトリカさんはやけに艶々だが、斑鳩さんの方は対照的に若干やつれていた。
一体何が……?
斑鳩さんからは助けを求める様な視線を感じるが、気にしないでおこう。
触らぬ神に何とやらだ。
「何か困ったことがあったら、遠慮しないで言ってね!」
「ハイ!ヨロシクオお願イシマス!!」
※※※
「え!?ビクトリカ、鱶野ん家の隣に越して来たの!!??どうやって???」
「ムフー。ソレは、企業秘密デース」
「それにしても、ビックリしたよ。事前に連絡も無いんだから」
「あはは、ごめんね。ビクトリカがどうしてもサプライズにしたいって言うから」
「何それー。完全に楽しんでるしー」
「noー。アクマデ任務デース」
「ほんとー?」
現在、俺と春沢は、斑鳩さんの運転する車で立川方面へと向かっていた。
黒いレクサスのRXが幹線道路を颯爽と滑る。
今日は久々の配信活動だ。
あれから一週間、俺はダンジョン探索配信を休んでいたのだ。
まぁ、それは俺だけじゃないけれど――。
どの配信者も軒並み、ここ一週間は配信を自粛していた。
と言うのも、ああいったダンジョン関連の事件が起これば、その度にダンジョン探索配信者にも世間の注目が自然と向いて来たりする。
そこで、必ず起こるのはダンジョン探索配信を疑問視する流れである。
どうしてもエンタメよりの内容になってしまう探索配信を、“こんな事件が起きたのに流すとは何事か!?”と言われてしまうからだ。
なのでこうやって、ほとぼりが冷めるまで静かにしていた。
と、いう訳だ。
皮肉にも、現代の日本は事件や事故、犯罪にゴシップのネタには事欠かない。
あんな凄惨なスタンピードが起こっても、一週間もあれば世間の注目は徐々に薄れて風化していくのだ。
「ここら辺だね」
「あ、はい」
とか考えているうちに、配信事務所に到着した。
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