新たなる協力者

 ……。


 ……。


 ……。


 「つまり、お前達もロストチルドレンという訳か……」


 戦闘態勢を解いて、俺達はいくつか情報共有をした。


 レイズバックの能力なら、連戦で体力を消耗した俺達を一方的に狩る事も出来たはずだ。


 それをしなかったというだけでも、信用する為の材料にはなった。


 後、個人的に昔の仲間を疑う事はあまりしたくはなかった。


 また、共有した情報の一つにLIBERATORの大部分はロスト・チルドレンや、スタンピードの被災者で構成されているという事が分かった。


 「そうです。僕は親が転勤が多い仕事だったので、丁度アメリカに住んでいた時に被災しました。――その後は孤児院で何年かお世話になって、そこでビクトリカとも出会いました。」

 「ビックリしたデス。一文の手を握ッタラ、知ラナイ記憶が流れ込ンデキマシタ」

 「そして、僕達は継承者となり、それがLIBERATOR本部に伝わってエージェントにスカウトされたという訳です」

 「ビクトリカさんと斑鳩さんもスタンピードの被害者……」


 先程のリベレイターの事を思い出す。


 彼女は目の前で両親を失って、傷付き、俺を恨んだ。


 きっとこの二人も……。


 「……」

 「ムー。何浮カナイ顔をシテイルノデスカ?リベリアル、no……、辰海。――私もパパとママの事はトテモ悲シイデスケド、貴方を恨ンデハイマセンヨ?」

 「え……?」

 「スタンピードが辰海君の意思で起きた訳じゃ無いんだろ?僕達はそれが分かっただけでも少しは救われる。あれは、どうしようもない事故だったんだってね。それに、腐っても元魔王軍だし」

 「過去を悔ヤンデモ仕方がアリマセン。ソレヨリもコレカラ悲シム人を無クソウトスルコトノホウガ大事デス」

 

 こういう考えの人もいるのか――。


 俺の方も少しだけ救われた。


 「それで、今後の行動方針などはあるんですか?」

 「そー言えば。さっきがどうとか、言いていたような……?」

 「む……」

 「それは、ボクの方から話そう。ダンジョンがこの世界に現れないようにするには二つの方法がある。一つ目は各ダンジョンにあるダンジョン・コアのコントロールを得る事だ。ゲートを閉じてしまえばダンジョンはこの世界に現れない。只これだと既に顕現したダンジョンに対してしか行えなし、一つ一つのダンジョンを攻略していかなくっちゃいけないから現実的じゃない。――なので、ボク達が取るべきなのが二つ目の選択肢になる。それは……、魔王城にある“マスター・コア”を手に入れる事だ!」

 「「「「「!?」」」」」

 

 マスター・コア。


 各ダンジョンにある、ダンジョン・コアを統括するマザーコンピュータの様な存在だ。


 確かにそれなら、何百とあるダンジョンを攻略していく必要も無いが……。


 「でもよー。魔王城って、まだこっちに出て来てないんだろ?どうすんだよ??」

 「それならば問題ない。ノブナガのを利用する」

 「夜天城だって!?」

 「oh……、マジデスカ……!?」

 「夜天城は移動式のダンジョンだ。こちらに顕現していない時は、亜空間の様な場所に滞在している。恐らく他のまだ顕現していないダンジョンもその亜空間の中にあるはずなんだ。だから、ボクが今夜天城を亜空間航行用に改修しているんだ」

 

 そう言えば、手に入れたダンジョン・コアは俺が持っていてもしょうがないので、環さんに預けていた。


 裏でそんな計画が進んでいたなんて……。


 「もう少しで、その改修作業も完了する。そうなれば、そこからボク達の反撃が始まる……!」

 「でも、それまではまた、リベレイターが襲ってくるって事……?」

 「うっ……」


 今度は全力で来る、とか言っていた気がする――。


 「彼女達だけじゃないよ。僕達もそうだけど、さっきのスタンピードの報道でかなりの人間が魔王の存在を確信した。魔王を利用したり、排除したい連中がコンタクトを取ってくる可能性だってある……」


 マジかよ――!?


 俺が知らないだけで、もしかして裏の世界とかではかなりの有名人なのか――!!??


 「もういっそ、ダンジョンで暮らそうかな……」

 「鱶野……」


 半分冗談で半分本気だ。


 リベレイターみたいな過激派がいるとなると、俺の私生活まで入り込んでくるような輩がいてもおかしくはないのだ。

 

 流石に、家族までは巻き込みたくはない。


 「ソレナラ、no problem!辰海の護衛は私達に任セテ下サーイ!!24時間監視シテ危険カラ守リマス!!!」

 「そんな事出来るのか?」

 「アッタリ前田のクラッカーでーす!私達はスーパーハイパーエージェントですヨ!?」

 「……」


 なんだか、嫌な予感がしなくもないが、俺の身の回りの安全は、ビクトリカさん達が確保してくれる事で話はまとまった。


 こうして、人生で最も長い一日を終えたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る