LIBERATOR

 「誰だ!?どこにいる!!??」


 反応して、帝さんが虚空に叫ぶ。


 声の主の姿は見えない。


 だが、聞こえ方からして距離はかなり近いはずだ。


 しかし、次から次へと……。


 今日はまさか厄日と言う奴ではないだろうか?


 「ソンナに探サナイデも目ノ前にイマース!」

 「な!?」


 忽然と。


 先程までリベレイターが居た場所に、後ろ髪をまとめた金髪の女性と短髪の黒髪の男性が現れる。


 二人ともサングラスをしていた。


 というか、サングラス率一気に上がったな……。


 「ちょっと、ビクトリカ……!?ああ、もう……!本部からは監視だけって言われていたのに……!!」


 男性の方は頭を抱えていた。


 「ムフー。毒を食らわば何トカデスヨ?――一文はビビリ過ギデース。私達はプロのエージェント、臨機応変、柔軟対応、ハッピーエンドで事後報告OK?」

 「うう……。その報告書を後で提出するの僕なんだけど……」

 「貴様ら……、何者だ……!?」

 「敵なら、容赦はしないよ?」


 帝さんと環さんが、デュミナスリングを構える。


 「oh……。私達は敵じゃないデス」

 「落ち着いてください。急に現れて言うのも変ですが、僕達は怪しいものじゃないです。貴方達に危害を加えるつもりもありません」


 二人組から敵意の様なものは感じられない。


 「とか言って、ちょー怪しいんですけど?」

 「ムー!?ヤヤ!?生ギャル沢!?ナンデ居ルデース!!??」

 「え?――ちょお!!??」

 「oh my God!とても素敵ナサプライズデース!!オタクに優シイギャルは実在シテマース!!!!!」


 金髪の女性は春沢を見た途端に、興奮して抱き付いていった。


 「あ……!ちょお……、やめ……」

 「ムフー♡ギャル沢ラブリー♡んー、ちゅ♡ちゅ♡ちゅ♡」


 そのまま押し倒されて、うりうりとされるがままになる。


 何、コレ――?


 「春沢の事知っているのか?」

 「勿ノ論デース。ギャル沢は、アメリカの深層ウェブアングラで“オタクに優シイギャル”としてミーム化シテマシタ。アメリカのオタク達の間デハ、本当二ギャル沢は実在スルのか議論サレルクライデース!」


 春沢は海外でそんなバズり方をしているのか……。


 「マサカ、魔王の仲間ダトは知リマセンデシタ!!!ナントイウdestiny!!!!!」

 「魔王!?」

 

 この人達俺の事を知っているのか――!?


 いや、その前にこの状況をどうにかせねば……。


 「オオ!?ココガえノカぁ???」

 「ちょ……。あ!?鱶野……、助け……」


 うら若き美女同士の濃厚な絡み。


 春沢は犬を愛でるようにもみくちゃにされていた。


 「……」


 ゴクリッ。


 思わず喉が鳴る。


 これは、これで……。


 このままでも良い気がして来たぞ――!


 「もう!ちゃんと仕事しようよ!!」


 そんな金髪の女性を、黒髪の男性が必死に春沢から引きはがす。


 ……。


 ……。


 ……。


 「ムフー。ご馳走様デース」

 「もう、お嫁に行けないし……」


 ホカホカつやつやの金髪女性と、髪がみだれてクシャクシャの春沢が対照的だった。


 兎に角、一先ずは落ち着いた感じである。


 「で……、貴様らは何なんだ……?」


 帝さん達も先程ののお陰で落ち着きを取り戻していた。


 「イイデショウ!私達の正体を教エマース!!――良イイデスネ!?一文?」

 「毒を食らわば……、だろ?――ここまで来たら腹をくくるよ」

 「流石!私の見込ンダ男デース!――デハ!!!」


 そう言うと。


 二人ともサングラスを外した。


 そして、女性の方は後ろで纏めていた髪を解いて、ツインテールに結び直した。


 何処かで見たことあるような……。


 「え!?」

 「ちょ……!?まじぃ?????」

 「うぇーい……」

 「「ビクトリカ・エスタ・エストリカ!!??」」

 「yes!スーパーハイパービューティーアーティストのビクトリカ・エスタ・エストリカでーす!!」

 「――と、そのマネージャーの斑鳩一文です」


 マジかよ――!


 俺は夢でも見ているのだろうか……?


 あの世界的有名な歌手のビクトリカが至近距離で目の前にいるのだ。


 「ソシテ、ソレモ実は世を忍ブ姿……。――私達は正義の組織“LIBERATORリベレイター”の凄腕エージェントなのデシタ!!!」

 

 おい、待て!どういう事だ――!


 「なんだって!?」

 「リベレイターだと!?」


 当然、帝さん達も黙ってはいない。


 「リベレイターじゃアリマセーン。liberatorデース!発音はしっかりシテクダサーイ!!」


 なんて事だ。


 一難去ってまた一難である。

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