告白

 「……」

 「……」

 「……」

 「……」

 「……」


 数分。


 深い沈黙が続く。


 皆、リベレイターが先程まで居た場所を見て黙りこくっていた。


 既に変身は解いている。


 俺も魔王の事、スタンピード、リベレイター、人間の魔人化。


 かなり重めの出来事が立て続けに起こり、感情の置き場に迷っていた。


 ただただ、困惑するばかりだ。


 「帝さん……、全てを話そう」


 そんな、静寂を破ったのは環さんだった。


 「全てをって……、さっきリベレイターの言っていた、俺がいる限りダンジョンが現れ続けるって話?」

 「うん。それもだけれど、ボクと帝さんの本当の目的……。そして、辰海君……、いや、魔王リベリアル・ルシファードに隠された真実の話さ……」

 「リベリアル・ルシファードの……、真実……」

 「ああ……、そうだな。これ以上は隠す意味も無い……。――聞いてくれるか……、鱶野辰海?」


 何やらいつも以上に深刻な話をこれからするといった様子。


 いや、ここまでの流れでそうじゃないなんて逆にあり得ないだろう。


 つまり聞くには覚悟がいるという事だ。


 まぁ、はなっから聞かない選択肢なんて無いけれど――。


 ここまで来たら最後まで付き合おう。


 「帝さん……。環さん……。――教えてくれ……、本当のことを!」


 視線が交差する。


 俺は深く頷く。


 「では少し昔話をしよう、私達が犯した罪の……、告白だ」


 帝さんは、近くの樹にもたれかかった。


 「魔王リベリアル・ルシファードが誕生する更に50年前程から、暗黒大陸に住む魔族は二つ問題を抱えていた。一つ目が中央大陸の人類軍の侵攻、二つ目が暗黒大陸中心部に存在する瘴気溜まりタルタロスの貯蔵限界だ」

 「タルタロス……?」


 春沢は頭に疑問符を浮かべる。


 「タルタロス……、暗黒大陸に存在するアリスヘイム最大の瘴気溜まりの事さ」


 瘴気溜まり。


 魔術の発動によって発生する瘴気、その瘴気が自然界で分解されずに気流や地脈の流れで一か所に集まり濃縮される特定の場所の事だ。


 「――元々アリスヘイムに前世のボク達……、魔族の祖先は1000年前に暗黒大陸のタルタロスを調べる為に送り込まれた調査団だったのさ」

 「そんなの初めて聞いたし」

 「いかにも聖法教会の連中がやりそうな事だ。奴らは自分達の都合のいいように歴史を作っていく」

 「ちょっと、まって……。それってつまり……」

 「中央大陸の連中は1000年前から聖法教会の陰から操られていたと言う事になる。――それどころか、自分達で送り込んだ調査団を魔族などと呼び迫害の対象スケープゴートに仕立て上げたのだ」

 「でも、それっておかしーじゃん。タルタロスってのがヤバいんじゃないの?」


 そうなのだ。


 俺達魔族は、タルタロスなんて爆弾の面倒を見ながら、人類軍の攻撃に抵抗していた。


 タルタロスが崩壊すれば、人類全体に被害が及ぶはずなのに、全く訳の分からないまま攻撃をされていたのだ。


 「私はそこに恐らく、聖法教会の本来の目的が関わってくるのだと考えている。――まぁ、その話は今回は置いておこう」

 「……」

 「魔族を悩ませる二つの問題。私を含む当時魔族をまとめていた三賢者は、知恵を出し合ってその二つを同時に解決しうる発明品を作り出した。それこそが、魔剣だ」

 「え!?魔剣て魔王が持ってた剣の事っしょ?なんで魔王より先に剣の方が出てくんの?」

 「が持っているからじゃないんだよ。魔剣をから魔王なんだ……。――ボク達が作り出した魔剣ウルズ・シュバイツァーには重大な欠陥があった。それは……、魔力の波長が合う適合者……、いや、魔人という生体パーツを必要とする事だったんだ」

 「そして、ここからが本題となる……」


 帝さんはサングラスを外した。


 初めて素顔を見たかもしれない。


 「魔剣が完成してから数十年、私達三賢者……、私とカルバート、エクセリアは暗黒大陸中を駆けまわり適合者探しに明け暮れていた。


 ――そんな時だった。偶然私達が海岸沿いの街を訪れていた時、近くの海岸に中央大陸の商船らしきものが打ち上げられた。嵐にでもあったのだろう、陸地に辿り着けたのが信じられない程の壊れ具合だったのを今でも覚えている。


 船の中には30人程の死体だ。


 生存者は絶望的。


 そこで積み荷の中から声がした。


 それは若い男女の死体に大切に抱きかかえられていた赤子だった。


 まさに奇跡だった。


 とは言え、かなり衰弱しきっていた。


 私達は魔族ではあるが、悪魔ではない。


 その中央大陸側の人間の赤子を直ぐに治療することにしたのだ。


 だが、想像以上に状態は悪くカルバートの技術ですら、もって後二、三日というところだった。


 成す術が無くなり途方に暮れていると、


 魔剣が僅かに光っていることに気が付いた。


 半信半疑だった。


 魔剣をその赤子に近づけると、魔剣は煌々と光を増していく。


 私は神など信じちゃいないが、その時だけは居ると思った。


 その赤子の魔力の波長が、魔剣に適合したのだ。


 しかし、目の前の適合者の命は風前の灯であるのは変わりがない。


 魔剣には蓄積されている生命エネルギーを、所有者に分け与える機能、ライフリンクシステムが備わっていた。


 だが魔剣を扱えるのは魔人のみだ。


 そこで、三賢者の話し合の末に一つの結論を絞り出した。


 それが、だ……!」


 まさか……、それって……!?



 

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