魔王様、配信の時間です！～魔王に覚醒した俺は、やがて人類に宣戦布告をする～

魔王、世界に露わとなる

　八王子高校校舎内。

　二年三組教室。

　地下シェルターが満員の為、こちらに避難してきた辰海のクラスメイト達が窓を通して、校庭の様子を見守っていた。

　１７年前に起こった大規模迷宮氾濫（スタンピード）・八王子大厄災を教訓に、それ以降に建造された建物には、対モンスター用の防護処置がある程度されているのだ。

　従って、辰海達が校庭でモンスターを抑え込んでいる限りは、校内の避難者は安全という事になる。

　「おい！見て見ろよ！！モンスターと戦ってる奴がいるぞ！！！」

　「マジかよ！？――って、あれ、まさか辰海か！？」

　「す、すげぇ……、あれが鱶野かよ……！？人間のしていい動きじゃないぞ！」

　クラスメイト達は、モンスターの波を引き裂いては押し返す、三つの点を見つけて注目した。

　「じゃぁ、あの白いのが春沢で……」

　「紅いのが笠井って所か……。――あれ、ならあの銀色のは？？」

　「知るか。だが、状況は厳しいぜ。――なんせ継承者様4人に対して、モンスターが大厄災級。見た感じ強さも最低でもBランクはありそうだ」

　「おまけにこっちは、出力不足のハンデ持ち……か。――ここからどうするんだ？辰海……？？？」

　水道橋と鷹村もこちらに避難してきていた。

　冷静に校庭の状況を分析する。

　「でも、たしか鱶野君。継承者ってダンジョン内でなければ戦えないって言って無かったかしら？」

　谷田も心配そうに辰海の戦闘を覗く。

　「そうだな……。けど、理由は何であれ、今は鱶野達を頼るしかない」

　と、豊徳院。

　「もー、なんでも良いぜ！クラスの仲間が踏ん張ってんだから、皆で応援してやろーぜ！！――うをおおおお！鱶野ー、春沢ー、笠井ー！頑張れー！！」

　そう言うと、猪原は窓越しに辰海達へ声援を送る。

　「マルリ！オーリ君！フカちゃん！頑張れー！！！！」

　宮越や他の生徒もそれに続いた。

　クラス一体となって応援をする。

　「よっしゃ！！鱶野ーーー！頼んだぞーーーー！」

　「春沢さーん頑張ってーーーー！！」

　「笠井！野球部根性見せろお！！！」

　「窓閉じてんだから聞こえるわけねーだろ。……ったく。――行けぇ！辰海ぃ！！おい！何貰ってやがる！！斬り返しがおせーぞ！！！ああ！もう！！！そんな弱パン勘で避けろよ！」

　「水道橋も人の事言えないだろ……。――それじゃぁ俺も。おら！踏み込みが浅いぞ！！一撃必殺が基本だろうが！いや！違う！！そう！それだ！！隣の敵も巻き込んで……、少ない手数で戦っていけ！」

　水道橋と鷹村に至っては最早ヤジに近かった。

　……。

　四人の奮闘もあってか、僅かではあるが順調に校庭に雪崩（なだ）れ込んだモンスターの数は減少してきていた。

　上空には、報道のヘリコプターが集まってきている。

　各々が安全な高度から八王子高校で起こった惨状を全世界に生中継していた。　

　その中には、ネット媒体で配信しているニュース系ライブチャンネル大手の“Ｊライブキャスト”のロゴがプリントされた報道ヘリもあった。

　新人の女性リポーターの内田真矢が、息継ぎを忘れるほどにまくし立てながら、緊迫した状況を伝えている。

　「信じられるでしょうかこの光景！ハリウッド映画や特殊技術CGの類では決してありません。今まさに我々の目の前で、この八王子高校で今もこうして悲惨な状況が続いているのです！――何百台も自動車が停めてある駐車場では、大量の破壊された車両からオイルが漏れ、一面が火の海と化しています。校庭には、逃げ遅れた人々がまだ取り残されているのが見えます！――その中をモンスターと呼ばれる、ダンジョン内固有の生物が……、え！？何でしょうかあれは！！ひ、人！？カメラもう少し寄れませんか！！？？……何という事でしょうか！皆さん見えていますでしょうか！？人間です！！四人の人影が、モンスターに対して攻撃しているように見えます……、信じられません！！！これは一体どういうことなのでしょうか……！？」

すたみな次郎『は！？あれタツミじゃないか！！？どうなってんだこれ！！！！？？？』

ゴシップバット『うわｗやっば……。こりゃ死人出るだろ……』

FullHouse『Ｗhy are they able to fight monsters?〔何故彼らはモンスターと戦う事が出来るの？〕』

名無しの騎士君『何だか知らんが、頑張れー！！！頼むぞタツミ！！！！』

お天気おじさん『ウッチーも緊急報道なんて出世したんな。――ってかそこ危なくないの？モンスター？って飛ぶのもいるんじゃない？？？』

最速の牛歩『ギャル沢ァ！頑張れ！！』

サイトー『避難できてない人もいるのか……。無事でいてくれ！』

こーじぃ『これが……、スタンピード……』

B・B『Wow！I'm an seeker too, but are Japanese monsters this crazy?〔ワオ！僕も探索者だけど、日本のモンスターはこんなにもクレイジーなのかい？〕』

もげーら『あれってまさか都市伝説の継承者ってのかよ！？――かし、すげーな……。同じ人間とは思えんｗ』

得々『何だよこれ……。八王子大厄災の再来か……？』

暗黒☩騎士ざまぁん『あんな数のモンスター、ダンジョン配信でも見ないぞ……。タツミ！負けんな！！！』

如意棒『さっきからチョイチョイ出てくる“タツミ”って誰よ？有名人か何か？？？』

OxY『Who is “Tatumi”?〔“タツミ”って何者です？〕』

よっすー『あの黒騎士？っぽいのかっけー！』

蛇男『今、この現場近くのシェルターに避難したが、この映像はマジだからな！こいつらがいなけりゃ俺はもう死んでたかもしれない……』

　事件発生からものの数十分で、八王子高校文化祭中に発生したスタンピードは、世界中に知れ渡る事となった。