戦士達

 「な、なんてことだ……、よりによってこんなに人がいる時に……」


 秋名さんが騒然とする会場の光景に力なく呟く。


 駐車場の方からも人が逃げてくる。


 こんな避難が満足に出来ていない状況でモンスターが大量に現れれば、ひとたまりもない――。


 ダンジョン内では、取るに足らないモンスターでも魔術が使えないこちら側では、命を脅かす脅威の一つとなる。


 この状況をどうにかできるのは、俺達しかいない。


 デュミナスリングを握りしめる。


 「行くぞ!春沢!!」

 「当たり前っしょ!」


 春沢も同じ考えだ。


 「君達ぃ……」

 「秋名さんは避難していてください!」

 「ここはウチらに任せるっしょ!」


 二人はデュミナスリングを指にはめ構える。


 と。


 「何をしている!?お前達!!!」

 「帝さん!?」

 

 帝さんと環さんが現れる。


 止めるのか――!?


 確かにここで力を使えば俺達の事が世間にバレるかもしれない。


 だが、今はそんな事に構っている暇はないのだ!


 こういう時の為に継承した力なのだから――!


 「ボサッとしているな!さっさと変身して、戦闘の準備をしろ!!」

 「へ!?」

 「ボクと帝さんは駐車場の方へ行く!鱶野君とハルちゃんはこっちに来たモンスターを相手してくれ!!」

 「あ……、ああ!」


 そうだよな……。


 帝さん達だってこの状況に黙ってられるはずがない。


 ただ。


 二人からは、それ以上の何かも感じ取れた。


 何だかいつもと様子が違う。


 「戦術展開!!!!!」「黄金錬成!!!!!」


 俺達に指示をすると、もう二人は駐車場の方に消えたいた。


 「あの二人ってあんな感じだっけ……?」


 春沢もあっけに取られていた。


 兎も角だ――。


 「詮索は後にするぞ!」

 「分かってるし!」 

 「魔装降臨!!!」

 「聖剣抜刀!!!」


 まだ、避難が完了せず逃げ惑う人の波の中。


 俺と春沢を魔力の光が包み込み。


 異世界の戦士の力を身に纏う。


 「こ、今度は何だぁ!?」

 「え!?騎士の格好!!!??」

 「急に光って……!?」


 人々は目の前の出来事に驚いていた。


 身体中に力がみなぎる。


 ダンジョン内よりも出力が落ちるという事だが、十分に戦えそうだ。


 元々のスペックが規格外なお陰だ。


 それにやはり以前より、俺の力は覚醒していっている様だ。


 「ここに居ましたか……!」

 「理事長!?」


 有栖院理事長がやってくる。


 彼女にしては珍しく、髪を乱していた。


 それだけの異常事態なのだ。


 「――これは、魔王城が原因なんですか!?」

 「いいえ。魔王城とは関係ない、まったくのイレギュラーです。お陰でこちらの対応は後手に回ってしまいました。――継承者がこの場に七人もいるのが不幸中の幸いです」

 「うぇーいw新魔王軍が一人!笠井汪理見参!!!!」

 「笠井!」


 龍騎士モードの笠井も現れる。


 「なんちゃらリングってのを貰ってよぉ!久しぶりに大暴れ出来るぜぇ!!!」

 「一般人巻き込むなよー」

 「ったりめーだろーが!」


 ここまで頼りになる助っ人もいないだろう。


 「七人って……、ええと……?僕も入っちゃってる……???」

 「当たり前です。秋名さんは私と校舎で待機して下さい。――万が一には、戦って貰います」

 「えええ!?僕が戦闘苦手なの知ってるでしょぅ!!!?」

 「つべこべ言わない!」

 「はーい……」

 「……」


 前世でもランドバースと、ジャンヌヒルデこういったやり取りをしていたのだろう。


 それが今少し垣間見えた気がした。


 「ん?なんだこのオッサン??知らねぇ匂いがすると思ったらアンタかよ!」

 「え、誰君?」

 「俺は天空魔将ギルバトスの継承者、笠井汪理だ!よろしくな!!」

 「きゅう~」

 「あ……」


 秋名さんは気を失った。


 「本当に役に立たない人ですね……。兎に角この場は貴方達に任せます!頼みましたよ!!」

 「はい!」

 「りょ!」

 「うぇーいwww」


 そう言って、有栖院理事長は秋名さんを引きずって校舎の方に消えていった。


 そうこうしているうちに。


 「な!?これがモンスター!!!??」

 「いやああああああ!?」

 「来るな!来るなあー!!」


 駐車場から溢れたモンスターがとうとうこちらの方まで現れる。


 「おいでなすったようだぜ……!」


 俺は、魔力の塊で作った剣を両手に構えた。

 

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