歌声、掻き消されて
「お前らー!盛り上がってるかーーー!?」
三曲目が終わった頃にMCが始まる。
どうやら、今回はMoonCrestのオンリーライブの様だ。
推しの俺としては嬉しい限りではあるが。
リーダーでボーカルの
振り乱す長い髪からはキラキラと汗が
「おおーーーー!!!」
「ベリ様ーー!!」
「こっち見てー!」
戯言『ソロモン72最強!MoonCrest最高!!』
熊『一曲目から上がって来たあああ!!』
マージル『ソロモン、ソロモン!!!』
ルバンダ『いええええええい!!』
ざっくん『ベリ様……、今日も美しい……!!』
会場も配信も大盛り上がりだ。
「――今日は、八王子高生の文化祭、純麗祭に呼んでくれてありがとう!最高のライブにしていくぜー!!」
「いえええええええい!!」
「だが今日は飼い猫に腕を噛まれて気分が少し立っている!大分荒波気味で行くから、振り落とされないように付いて来いよ!!」
「おおーーー!!!」
ベリ様は前日にSNS上で、交際者に浮気をされて別れた、と言う旨の投稿していた。
これは、その事を言っているのだろう。
本来であれば、アイドルがこういった恋愛事情を表に出すことは御法度である。
だが。
ことソロモン72に限ってはそれは違っていた。
ソロモン72は、既存の疑似恋愛対象という売り方をするアイドル像を大きく覆す存在として生み出されたのだ。
“アイドルを本物に変えるアイドル”と言う秋名さんの作り出したコンセプトの元。
彼女達は自分達の事を一切包み隠したりせずに、全てを晒して全力で音楽にぶつかっていくように活動していた。
なので私生活等も公の場に赤裸々に公開されていて、今回の様な発言も全然有りになるのだ。
その姿勢こそが他のアイドルと一線を画し、彼女達を唯一無二の存在として人気を確立した
より近くで、よりリアルに。
そういった戦略が功を奏して、今の彼女達はステージに立っているのだ。
そして、そんな彼女達は十代の若者達から神格化され、ファンはいつしか信奉者と呼ばれるようになった。
「よっしゃー!じゃぁ、四曲目!!“
「ウェーイ!!!!」
ドラムが
聴いているこちらまで血が
ギターとベースの旋律が複雑に交差した。
キーボードの音階が物語を紡ぐ。
力強いボーカルに魂が揺さぶられる。
五曲目、六曲目と曲を重ねていく。
MoonCrestも俺達も大粒の汗を流している。
「はあー!はぁー!!名残惜しいが、そろそろお別れの時間みたいだ……!!」
「ええー!?」
「だが、安心して欲しい!!最後の曲はお前らが立てない程に激しくしてやる。覚悟しろよ!?――そんじゃぁ、七曲目……、」
「きゃあああああああ!?」
「なんだなんだー?まだ曲名言って無いぞー!?――……って、なんだ……??」
遠くの方から悲鳴の様な声。
会場の観客もざわつき始める。
ん――!?
ライブに集中していた俺も異変に気が付く、この感覚は……!!!
〔ピンポンパンポーン。緊急警報。緊急警報。八王子高校敷地内に新たなゲートの出現が確認されました!スタンピードが発生しています!!文化祭実行委員の指示に従い落ち着いて避難をしてください!!!〕
少し遅れて、校内放送が校庭の方にも流れてくる。
「スタンピードだって!!!!???」
今確かに放送でスタンピードって言ったよな――?
いや、魔力反応で分かる。
間違いなく奴らが、こちらに出て来ている。
しかし、よりによって
まさか、魔王城が顕現したのか!?
「そんな……、マジかよ……!!??」
「いやああああ!?モンスター!!!?????」
「落ち着いて下さーい!!!文化祭実行委員でーす!!!!我々の指示に従って避難シェルターへ移動してくださーい!!!!」
実行委員委員長がメガホンで避難指示を出している。
「走らないで!走らないで下さい!!」
しかし、それも虚しく会場は大混乱だ。
皆、我先にとシェルターのある方角へと走り出す。
「た、助けてええええええ!!!!!」
駐車場の方。
モンスターはより大きな
もう直ぐこちらに来るだろう。
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