ドスケベ・キング

 「「「「……!……!……!!!」」」」


 残りのローパー・ツリーが機敏に動き出す。


 四本の巨大な柱が、倒したローパー・ツリーの残骸に集まろうとしている。


 「悲しんで……、いるのか……?」

 「ローパーにそんな高度な知能は無かったはずだけど……。只、モンスターの生態は未だ未知の領域も多い。過剰期の特殊な環境が彼らを進化させるという可能性はあるかもしれない」


 環さん……、カルバートは、アリスヘイムのモンスターの生態について誰よりも詳しかった。


 そんな彼女の知識でも、分からない事が今起ころうとしているのだ。


 「「「「!!!!」」」」


 様子をうかがっていると、それぞれのローパーが触手を伸ばしてウネウネとそれらを絡ませ始めた。


 「うう……。なんか凄くキモいんですけど……」


 異変を感じて離れていた春沢達も合流した。


 「なんだあれは……?交尾でもしているのか??」


 燕子花会長も困惑して、そんな事を言い出した。


 確かに、そう言われればそういう風にも見えなくないが……。


 「ううん。ローパーは無性生殖よって増えていくモンスターだよ。――他の種族の雌の嬌声を聞くことで、コアを活性化させて分裂するんだ」

 

 なんだその繁殖方法は――!?


 だから、やたらと女性たちがウネウネされるのか……。


 また、知らないで良かったモンスターの知識が増えてしまった。


 「キッモ!!!」


すたみな次郎『ええ……』

縄Q『えっっっっ!』

RB箱推し『つまり……、エロい声を聞くと勝手に増殖するのか……』

相撲区千伊豆『どんだけエロに特化してんだよw』

ひめひめひめなー『汚いトリビアwww』

最速の牛歩『はた迷惑な繫殖方法で草』


 「なんかあのローパー達、合体していないか……?」


 豊徳院の言う通り、絡めあった触手が互いの身体を引き寄せ合っていた。


 それは、見る見るうちに一つの巨大な塊になる。


 柱では無い、最早だ。


 四つ目玉が中心に集まって一つになった。


 「な、なんだよコイツ!?」

 「え!?これローパーなの?」

 「ええええ!?」


 周囲の探索者達も異変に気付いた様だ。


 「なぁ!?マジで合体しやがった……」

 「へぇ!一つになって倒す手間が省けて良いじゃねぇか!!」


 「フハハハハハ!」


 「な、喋った……、だと……?」

 「ええ、知能を持ったのー!?」


 焦る帝さんと、興味深々な環さん。


 この高笑いは、あの巨大ローパーから発せられている。


 「我はローパー・キングなり!!!!」


 「はぁ!?」

 「ローパー……、キングだとぉ!?」


 このローパー。


 魔王の前で、わざわざ王を名乗るとは豪胆な性格の様だ。


 「先ほどは我が同胞が世話になったな……。その礼を今からたっぷりしてやろう!!」


 「ほう。モンスター風情が人の口を利くとは……、なかなか面白い」

 「礼も、クソも、最初っからウチらは、てめぇらを駆除しに来てんだよ」

 「せめて苦しまないようにしますから、大人しくしていて下さい!」


 「クククク……、威勢の良い雌達よ……」


 生徒会役員たちの言葉に怯むことなく、ローパー・キングはいやらしく目を細めた。


 「これでもその態度が保っていられるかのぉ!?」


 シュルルルルと。


 無数の触手が、ローパー・キングの身体から放たれる。


 「それはもう、攻略済みだ!」

 「その通り!」


 先程同様、帝さんと環さんの連携で触手の動きは封じられる。


 「それは、こちらも同じ事よ!」


 しかし。


 ブチッと。


 ローパー・キングは、凝固弾頭で固まり切る前に自らの触手を切り離す。


 「自切しただと!?」


 「もらったああああああ!!!」


 こちらが動揺している間に、触手の第二射目が飛んでくる。


 放射線上に伸びる線を、俺はなんとかかわしていった。


 「ちょおおお!?」

 「む!?」

 「きゃあああああ!?」

 「ボクも!?」

 「私もだと!?」


 が。


 俺以外の全員は触手に捕まってしまう。


 周囲の探索者達も同様だ。


 「フハハハハハ!他愛もないのぉ」


 「あ……!?ちょぉ……、んん……」

 「きゃぁ……。……。て、てめぇ!何処に入れてんだぁ!?ああん!?」


 触手に囚われた女性陣の悩ましい悲鳴が聞こえてくる。


 「お!ここがええのかぁ?おおん???」


 ヌラリとした湿った触手が、彼女達の四肢を弄る様に絡みついている。


 時にはきつく、そして優しく、締め付けられる果実がリズミカルに弾んでいた。


 健康的な柔肌をいやらしく味わう舌のように這っていくのだ。


 「あ!……ううん……。くっ……。こんなもので……」


 普段は気丈な燕子花会長も苦悶の表情を浮かべていた。


 例によって、触手から分泌される衣服だけ溶かすローションで徐々に肌色面積が広がっていく。


すたみな次郎『“¥10000”なんて酷い事を!許せない!!』

暗黒☩騎士ざまぁん『“¥3000”タツミ!俺見てらんないよ。もう少ししたらアイツの事ぶっ飛ばしてくれ!』

鵜鶴nデス『“¥5000”くっそ!俺達は見ている事しかできないのか……』

レタス検定準二級『“¥7000”くやしいぜ……』

ひめちゃん親衛隊『“¥20000”』


 「おい!何故高額投げ銭が飛んでいる!?」


 お前ら……。


吉良りん革命『“¥4800”これが、このチャンネル名物の……』


 「違うぞ!?」


ジビエチャンネル『“¥10000”俺達の負けだローパー・キング!』

oni瓦『“¥8888”舐めやがって……。後、もうちょっとカメラドローンに映るように頼む』

オシャレ侍『“¥7000”今回だけだからな!この下等生物が!!!』


 「コラ!モンスターに投げ銭する奴がどこにおる!!!???」


 たく、欲望に忠実な視聴者達だ――。


 しかし、これではローパー・キングではなく。


 ドスケベ・キングである。


 ……。


 俺は周囲の状況を確認する。


 「んん……!?くぅ……。魔力を吸われて力が入らん……。――て、私の服まで溶けているのだが!」


 帝さんも触手に捕まっている。


 コートの内側の服が溶かされていっていた。


 「むふぅ……。我はどっちもイケるのよ♡――あれは、カメラと言う奴だろう?知っているぞ。うぬら、ダンジョンの様子を外の世界に映しておるのだろう???」


 ローパー・キングは、触手でカメラドローンを指す。


 「……!!?貴様なにを……!!!!?」


 「うぬは、なかなか良い身体をしているのぅ……、我だけで楽しむのは勿体ない……」


 帝さんの身体の表面を、品定めするように触手が這った。


 「――縛り方は、亀甲縛りで良いか?」


 「なあ!!!???――鱶野辰海ーーーーーー!!!こいつをさっさとどうにかしろーーーーーー!!!!!!!」


 帝さんの断末魔が、ピンク空間に成り果てたダンジョンに響き渡った。

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