ローパー・ツリー

 悲鳴の方へと近づいていくと数本の大きなが蠢いている。


 他の探索者達が協力して、そのと応戦している。


 「う”……、コイツは……」


 「……!!!」


すたみな次郎『あ。』

よぎぼぅ『オワタ』

あれ草『逃げた方がいいのでは?』

吉良りん革命『ギャル沢ァ!見せ場だぞ!!』

oni瓦『おおう……』

xcyuddfd『このチャンネルの準レギュラーじゃん』


 成程、大量に転がっている死体を食べて進化したという訳か……。


 「じゃぁ、ウチはこの辺でー……」

 「まぁ、待て春沢。観念しろ」


 俺は唐突に帰ろうとした春沢を引き留める。


 雄々しくそびえ立つ逞しい巨体。


 時折ウネウネと左右に身体を揺らしている。


 「あー、だ……」

 「ローパー・ツリー?只大きいだけのローパーでは無いのですか??」


 何故だか、燕子花会長からも春沢と同じぐらいローパーの標的にされそうなオーラを俺は感じた。


 「ローパーは、スライムの親戚みたいなものだから、環境適応能力が高いんだよー。――それで進化したのさ、ちょっと違うけど出世魚みたいな?」

 「ええ……、最悪なんですけど」

 「図体が大きいだけで、所詮はローパーだろ!?やってやろーじゃねーか!」

 「こっちゃん、ちょっとは警戒した方が……」

 「あ”?今あのウネウネ、アタシにガンくれやがったぞ。ブッ殺す!」


 こちらのパーティーには、ローパー好みの美女・美少女がそろい踏みである。


 となれば。


 この後の展開は火を見るよりも明らかなのだ。


 「「だったら!チャンネルがBANされる前に片付ける!!」」

 「……」

 「……」


 如何やら同じ配信者同士、豊徳院も俺と同じ考えのようだ。


 コラボ配信のついでだ。


 今回ばかりは共闘してやろう――。


 俺は豊徳院にアイコンタクトをして、ローパー・ツリーに向かっていく。


 「ちょっ!?鱶野!!!?」

 「春沢と生徒会長達は遠くから魔術で援護をお願いします」

 「あ……、ああ、分かった」


 豊徳院も背中の剣を抜いて、俺に続いた。


 春沢達は急な俺達の連携に戸惑っている様だった。


 「あまり気は進まんが……、私達も行くぞ」

 「うう……。仕方ないか……。ボクが狙われたら、帝さんが庇ってくださいね!?」

 「断る」

 「えー!」

 「漫才してないで、さっさと行くぞ!商店街連合戦闘開始!!」

 「貴様が仕切るな!そもそも私達は――」

 「こまけぇことは気にすんな!――聖剣抜刀!!!」


 緋音さんは、聖騎士の姿に変身した。


 「ち……。戦術展開……!」

 「それじゃぁ、ボクも!黄金錬成!!」

 「な……、聖騎士……!?――それに……、鞍馬先生、貴女は……!?」

 「驚いたかな?そうさ、ボクも継承者さ!!」


 俺が近づいていくと、一番近いローパー・ツリーがそれに気づいて、触手を伸ばしてくる。


 「……!!」


 「ふん!毎度毎度芸の無い奴め!!」


 竹のように太い触手が地面に叩きつけられるのを、状態をそらして翻弄していく。


 身体が巨大化しただけあって、触手攻撃もその質量を活かした重い一撃となっていた。


 だが、当たらなければ問題ないのだ。


 地面に刺さって動きが止まった触手を次々に切り刻んでいく。


 ローパー・ツリーと目が合った。


 「ふはははは!怖いか!直ぐにこの魔王が屠ってくれるぞ!!――ってのわあああああ!?」


 切断した触手の先から、無数の細い触手が飛び出してくる。


すたみな次郎『……。調子に乗るから……』

三人目の僕『甘いぞ!タツミ!!』

PARIPI『うぇーい』

暗黒☩騎士ざまぁん『油断するな!』

浴びるごはん『トロイの触手かな』

感嘆すけぼぅ『倒してからイキれ!』


 「くっそ、斬っても斬っても増えていきやがる!」

 「斬れば余計に数が増えるぞ。考えて対処しろ!!」

 「んな、器用な真似出来ねぇよ」

 「ちぃ、世話の掛かる!!」


 帝さんは、外套から何本か小瓶を取り出して周囲にばら撒いた。


 透明な容器の中に朱い液体が見える。


 予め抜いておいた自身の血がその中には入っていた。


 地面に投げつけられて割れた瓶からは、白紙にインクを垂らしたように薄く広い血の海が広がっていく。


 「磔刑のアイアンメイデン!」


 一泊置いて。


 そこから触手目掛けて無数の朱い棘が伸びていった。


 「……!?」


孔掘る加藤『ミカっちぃ!』

うれふぇ『やるやんけ!!』

バルクほるん『ないすー』

姫ちゃんぱぱ『おけ』


 ローパー・ツリーの触手は串刺しにされて動けない。


 「……!!!!!」


 しかし、新たな触手を伸ばして対抗して来る。


 「おのれ。まだ、やるか!」

 「それじゃぁ、ボクも!オーダー!!RPGロケットランチャー!」

 「先生!?それは何処から!!?」

 「ふふーん♪空間転移だよー。――転移門ゲートは一体が開発したと思ってるのさ」

 「ええ……、それって……」


 環さんは驚いている豊徳院をよそに、ロケランを発射する。


 「対ローパー用体組織凝固弾頭の威力をとくと喰らえーーーー!」


 「……!!!?」


 見る見るうちに着弾した部位から鉄のように固まっていっている。

 

 今が好機だ――!


 「鱶野辰海!!止めを刺せーーーー!!!」


 魔力の反応を探り、奴のコアに狙いを定めた。


 一瞬で発射体制を整える。


 「貰ったぞ!魔王の一撃メガセリヲン・バスター!!!!!」


 「……!!?……!!!!!!!」


 燦燦と輝く光の軌跡がローパー・ツリーのコアに命中し、そのまま蒸発させていく。


スティックのり3号『ウヲオオオオオ!かっけーーー』

カルマ山親方『魔王いけるやん!』

USB タイプAを許すな『“¥3000”何か陰キャ臭いけど、いい仕事するじゃん』


入鹿『“¥888”しゃあつ!一体撃破!!』

駄菓子二等兵『まだいるぞ!油断するな!!』

一級吊り師『“¥2000”おけ!』

相撲区千伊豆『よしよし!』


 「……!!?」

 「……!!!!」

 「……!?……!!!?」

 「……!?……!……、……!!!!!!」


 とは言え、ローパー・ツリーは残り4体。


 ここからどう、捌いていくか……。




 


 

  


 

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