最悪のコラボ配信3
ドドドドドドドドドッと。
俺達の進路の先から地鳴りと共に、大きな影が近づいてきた。
開けた草原にパーティ・リザードの群れが土煙を巻き上げながら、こちらの方に向かってきたのだ。
パーティ・リザード。
馬のサラブレット程の背丈をした二足歩行の
強靭な脚力と大きな鉤爪が特徴で、流線型の鱗がダウンフォースを産み出して走りを安定させている。
一日の大半を走りながら狩りをして過ごす、走る事に特化したモンスターだ。
名前にパーティなどと冠しているが、別にパリピと言う訳では無い、
また、手懐け易くもあり、アリスヘイムでは馬と同じぐらい定番な移動手段として愛されていた。
が、こうして野生で生息している場合は違う。
奴らは雑食性で、走り続けているから常に腹も減っている。
パーティ・リザードの群れが通り過ぎた後には草の根も残らない、と言われるくらいの害獣なのだ。
向かってくる奴らは、かなり気が立っている感じに見えた。
100頭近いパーティ・リザードが目を血眼にして、獲物を探しているようだ。
過剰期の終盤。
モンスター達は数が増えすぎて、今度は食料の方が不足してくる。
そうして、奴らはダンジョンの外に進出してスタンピードが起きてしまうのだ。
「「ブラスティア・ボルト!」」
俺と豊徳院は、奴らの進行方向の手前に炎系の魔術を叩き込む。
着弾して、腹に響くような炸裂音。
俺は勿論、豊徳院の魔術も凄まじい威力だ。
如何やらこいつもSランク探索者らしい。
やっぱり――。
あの時は実力を隠していやがったな――。
焼きくま『うお!すっげぇw』
USB タイプAを許すな『ま、まぁ。魔王もやるじゃん……』
若輩者『“¥760”いいぞー!リューイチ!!』
Dリーグボール7号『こりゃあ、モンスターもたまったもんじゃないなwww』
のあ『無双キターーーーー』
ぺんぎん『“¥5000”リューイチくん、カッコイイ♡♡♡』
なまやさい『勝ったな……!!!!』
「んな、分けあるか!」
所詮はSランクレベルの魔術。
過剰期のモンスターの強さを甘く見過ぎだ。
保有魔力、生命力、打たれ強さ。
普段の2ランクくらいは上だと考えるべきだ。
パーティ・リザードは魔術を受けたことによって、群れを分断し左右に別れた。
ここからが本番なのだ。
「俺達は右をやる!」
「ああ、そっちは任せた!」
俺と春沢、燕子花会長は右。
豊徳院と竹内副会長、園美原書記は左の群れを担当する。
パーティ・リザードを討伐するにおいて気を付けなばならないのが、数を活かした波状攻撃なのだ。
なのでこちらの被害を最小限にする為にも、群れを分断してからの各個撃破が好ましかった。
「一番槍はウチがもーらいっ!聖剣抜刀ーーーー!!」
今日はメイド服風のスーツの春沢が、聖剣エルザ・ディヴァインを抜刀し群れの中へ突っ込んでいく。
「あ、また!?春沢出過ぎんな!!」
「ほう。アレが姫騎士の……。――仕方ない、鱶野君。私達で援護しよう」
吉良りん革命『ギャル沢ァ!』
すたみな次郎『見せ場だぞ、タツミ!』
たぬきつねそば『がんばえー』
アイロン男『しくじんなよ!』
「分かっておるわい!」
両腕を前方に展開する。
パーティ・リザードに向けられた指先には、魔力とマナが光の螺旋を描きながら収束されていく。
それぞれの指先に、合計10の弾丸が装填される。
「秘儀!!
そして、俺は指先から超極細の魔力荷電粒子砲を発射していった。
極細荷電粒子は春沢を追い越して、前方のパーティ・リザードを撃ち抜いた。
「やるじゃん!鱶野ー。だったら、ウチも……!!せぇぇぇいっ」
飛びかかってくるモンスターを、春沢は次々に袈裟斬りにしている。
それでも、まだ数は多い。
俺も魔力の剣を両手に携え斬り込んで行く。
俺と春沢にかかれば一体一体倒す分には、簡単な事だった。
だが。
「ぐぬぅ!斬っても斬ってもラチがあかん!!」
「ちょぉ!どんだけいんのー!!」
全然数が減っていない。
「あ!しまっ!?」
何頭か仕損じてしまう。
「問題ない!――ラディアント・ボルト!!!」
燕子花会長の魔術がパーティ・リザードの身体を突き刺していく。
「光の魔術……!?」
かなり珍しいレア属性だ。
「君に驚かれてもな。――何なんだ?その魔力の塊は??」
「あ、いや……、これは……、昔取った杵柄と言いますか……」
俺の使うコレは、便宜上魔法と呼んでいた。
魔王リベリアルの努力の結晶である。
まぁ、それは置いといて目の前の敵をどうにかしなければ……。
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