最悪のコラボ配信2
「おい鱶野ー!お前、前世が魔王なんだって?一体どんな悪い事してたんだよw??」
燕子花会長に続いて、竹内副会長にも絡まれてしまう。
「え……?な、なんすか急に……!?」
「だって、魔王と言ったら人間の敵ってのがお決まりだろ?今のお前見てても全然想像つかないから逆に気になるだろ」
逆ってなんだ?陰キャが魔王だと変と言う事か――?
まぁ、その通りではあるが。
しかし、竹内副会長は歯に衣着せない人である。
今の質問は結構ナイーブな内容な気もするのだが――?
「悪い事……、ですか……。実際は人類軍に
「は!?それはどういうことだよ!!?」
「え……!?いや、その……、まぁ結果的には、兵を送ったって事にもなると言うか……、こちらも不本意だったと言いますか……」
急にキレられて驚いた。
期待していた内容と違って機嫌を損ねたか――?
だが、別にこちらも場を盛り上げる為に話を盛る筋合いも無いのだ。
それに、そんなことをすれば俺を支えてくれた仲間たちを裏切る事になる。
俺には、ありのままを伝える事しかできないのだ。
「ほう。中々興味深い話だ。良かったら詳しく教えてくれないか?」
「え……?」
「れーなちゃん達、鱶野君と何はなしてるのー?」
「意外な組み合わせだし……、何々ウチも気になる!」
「ん?どうかしたのか??」
春沢達も集まって来た。
昔話など聞いていないで、早くモンスターを討伐しに向かった方がいいと思うのだが……。
などと言い出せるほどリーダーシップがあるわけもなく。
俺は手短に、魔王軍と人類軍の700年に渡る争いのおとぎ話を20万人を超える視聴者に聞かせる事となった。
※※※
俺が魔王になってから300年ほどは、魔王軍と人類軍の睨み合いが続くのみで目立った争いも無く、もっとも平和な期間だったと言える。
それも俺の超穏健的外交政策の
と言うのも。
一切人類側に攻め込むことは無く、魔王と言う存在のネームバリューのみで魔族を
まぁ、外交政策と言っても人類側と和平交渉などは一回も出来なかったのだが……。
そもそも、俺は一度も暗黒大陸を出たことが無かった。
暗黒大陸の瘴気を抑え込むために仕方なかったというのもあるが。
俺は700年間も魔界に閉じこもっていた、引きこもり魔王なのだ。
だから、そんな弱腰の姿勢に反発して、多くの離反者を出してしまってもいた。
それが、“はぐれ魔族”だ。
恐らく、人類側の魔族による被害は殆どがこいつらの仕業である。
俺が魔王になって500年を過ぎた頃には、はぐれ魔族の数は全体の三割にまで膨れ上がっていた。
奴らは、ダンジョン・コアを暗黒大陸の外に持ち出して、
そこで、洞窟などをダンジョン化してゲリラ戦を展開しいったのだ。
瞬く間に、はぐれ魔族と人類軍の戦火は拡大し、無視できない存在になった。
魔王軍もはぐれ魔族を鎮圧するべく何度か兵を派遣したが、その先々では、はぐれ魔族と人類軍の両方を相手にすることになってしまい、かなりの苦戦が強いられた。
結局。
そのまま、魔王軍と人類軍は戦争状態に突入し、人類軍の暗黒大陸殲滅戦の引き金になってしまったのだ。
※※※
俺の親父の息子の話『中々設定が深く作り込まれてるじゃんw』
上ゲ専『イイハナシダナー』
キ811『作り話のセンスあるよwww』
スティックのり3号『ガチでも作り話でも知らんの世界の話だしなー』
カルマ山親方『お?話し終わった??』
Dリーグボール7号『よくわかんねwまぁ、俺らには関係ないっしょwww』
ロック海埼『想像力豊かっすねw』
豊徳院の視聴者は、作り話派と、事実だとしても自分たちとは無関係派に別れていた。
聞く方からすれば、知らん国同士の戦争話を聞かされるようなものだ。
当然の反応だろう。
すたみな次郎『人間って何処の世界も、似たように争うんだな……』
真っ暗れーん『つまり、前世のタツミは戦争に反対だったの?』
みぎよりレッドロード『やるせねぇな……』
閃光の射手ブラッド『どうであれ、戦争は起こっちまったのには変わりないがな』
よぎぼぅ『おおう……』
無限の聖槍ロジャー『はぐれ魔族なんていたのか……』
たつらーは、俺の事を受け入れている者が多く(あくまでキャラクターとしてかもしれんが)、事の重さにショックを受けていた。
「じゃぁ、
話しを終えた俺に竹内副会長は凄んだ。
怖ッ。
執拗に絡んでくるなこの人――。
「い、いやそれは……」
リベリアルは、結果として人類軍との戦争になってしまったが、それもはぐれ魔族を作ってしまった自分に責任があると考えていた。
はぐれ魔族が虐殺した人間に対してもそうだ。
アイツは全ての罪を背負う覚悟をしていた。
何故なら、魔族と人類の和平が実現した後には、断頭台に立つつもりでいたのだから……。
だから、決してそんな風には考えていなかった。
「もお、その辺にしといて、そろそろモンスター討伐に行かないか?なぁ、鱶野??」
「お、おう」
さすが気配りの達人宝徳院だ。
配信の空気が悪くなったのを感じて、話題を反らしてきた。
敵ながら、今回は誉めてつかわす――。
正直助かった。
「ちっ……。仕方ねぇ。ムシャクシャすんのは、あいつらで晴らすとするか」
眼前には、モンスターの群れ。
コラボ配信は最悪の滑り出しになってしまった。
俺もここで挽回するとしよう。
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