第一回純麗祭運営会議
週末。
視聴覚室にて。
とうとう、第一回純麗祭運営会議が執り行われることとなった。
一年から三年まで各クラス、クラス委員二名・文化祭実行委員二名。
そこに生徒会役員の三名。
合計27名が一堂に会し、顔合わせと今後の活動内容の確認・議論が行われるのだ。
コの字型に並べられた机を見渡した。
殆どが知らない顔ぶれである。
最悪だ――。
緊張していつも以上に挙動不審になってしまう。
俺は人見知りなのだ――。
その上。
俺は正面の机にいる生徒会長たちをチラ見する。
今回は文化祭実行委員の仕事をこなすだけでなく、彼女たちの素性調査をするという重要任務が俺には課せられているのだ。
こちらが、変に探りを入れていることがバレないように立ち回らなけばならない。
なので二重に気が引き締まる。
気分はスパイ映画のエージェントだ。
と、言っても。
陰キャの俺にはこうやって、チラチラ見て不審な点が無いか観察するくらいしか出来ないのが関の山なのだが。
幸い?この会議には、クラス委員長である豊徳院も出席している。
コイツと会長たちの絡みがあれば、何か見えてくるかもしれない。
希望は最後まで取っておこう。
「なに?鱶野。人が一杯いて緊張してんのー??」
「……。そーだよ」
分かっているなら、わざわざそんな事を聞くな――。
春沢は悪戯っぽく、俺を煽って来た。
お陰で少し緊張は解れたが……。
「諸君。忙しい中、わざわざご足労いただいて感謝する。――これより、第一回純麗祭運営委員会を開始する」
ざわついていた生徒達が一斉に口を
遂に始まった。
皆が生徒会役員席の方を向く。
「今回は顔合わせも兼ねているので、それぞれ順に自己紹介を頼む。私は、生徒会長の
一切の迷いのない自身に満ちた物言い。
ブレる事なく紡がれる力強い言葉は、聞いていて心地の良いものがあった。
理事長と似たようなタイプのカリスマ性である。
燕子花糺奈。
黒髪ロングのモデル体型。
クォーターの血筋が顔の端整さに現れていた。
息を吞む美人だ。
後、ア〇ルが弱s……。
んんー!げふんげふん……。
学校行事は全て、自主性を育むため生徒にその権限が譲渡されている為。
彼女が実質、学校生徒の中の“王”なのである。
ふん。そう考えると、相手にとって不足はないな――。
こちとら、異世界で700年も玉座にふんぞり返っていたのだ。
年季が違う。
年端も行かぬ小娘が何する者ぞ――!
俺は自分を鼓舞してみた。
因みに“燕子花”とは、花札に描かれている紫の花である。
「私は副会長の
副会長は茶髪のロリッ子。
見た目に反して気はかなり強そうである。
生徒会の狂犬と言った所か。
「書記の
生徒会役員の自己紹介最後は園美原書記である。
普段はあまり前に出てこないが、生徒会を陰から支える苦労人だ。
眼鏡のお下げ、実は学園一の膨らみを持つ隠れ爆乳だ。
生徒会役員それぞれに固定のファンが存在するらしいが、彼女のファンは段違いに多かった。
陰キャでも親しみやすい見た目が主な要因だろう。
「受験を控えている三年生は最後の大きなイベントとして勿論ですが、一・二年生の皆にとっても特別な文化祭に出来るように頑張りましょう!私もれーなちゃん・こっちゃんと一緒に頑張っていきます!!」
「あ、おまぁ!他の生徒の前であだ名で呼ぶんじゃねぇ!舐められるだろうが!!」
「「「「www」」」」
園美原書記のお陰で場が一気に和んだ。
只、厳しい人達という訳でもなさそうだ。
彼女たちが支持されている理由は何となく理解が出来た。
……。
……。
……。
一年生から順々に自己紹介が始まっていく。
「二年三組、クラス委員長の豊徳院竜一です。先輩たちが受け継いできた伝統に恥じないように、それでいて新しい風も取り入れてより良い文化祭にできたらと思います。よろしくお願いします!」
豊徳院め、優等生ぶりやがって――。
短い自己紹介文句の中から、真面目さとやる気が醸し出されている。
と言うか、皆、意気込みとか言ってるし。
俺も言わなきゃいけないのか――?
無いぞ、んなもん……。
「副クラス委員の立木蛍です。皆さんと一緒に、記憶に残る文化祭を作り上げられたらと思います。ですが、こういった活動に参加するのは初めてなのでぇ、先輩方、ご指導のほどよろしくお願いしまぁす!」
立木も無難に自己紹介を済ませる。
流石コスプレのイベントに出まくっているだけあって、自分の見せ方が計算されている。
即座に、頑張り屋の不慣れな後輩と言う。
「文化祭実行委員の春沢真瑠璃でーす!ウチは盛り上がる事は何でも好きなんでー、超ガンバっていこーと思いまーす!!よろよろ~!!!」
春沢は、いつもの春沢である。
まぁ、ここまでパリピに振り切っている生徒もこの中だと春沢くらいだが、何だか自然と馴染んでいる。
次は俺か……。
基本、こういう場に陰キャは出てこない(偏見)。
周りを見た感じだと陰キャ感が滲み出ているのも俺だけだ。
どうせ、ここに居る誰しもが俺の自己紹介になんぞ何も期待していないだろう。
じゃぁ、ちょっと実力の片鱗でも見せちゃいますか――☆
アリスヘイム時代は、冠婚葬祭の場に引っ張りダコだったのだ!
度肝を抜いてくれる――!!
「あ。文化祭実行委員の……、鱶野辰海でっす……。いつも文化祭では、日陰者だったので……、あ、いや、陰から支えていたと言いますか……。えっと、なのでその……、何つーか、取り敢えず……、色々と頑張りまっすぅ……!」
まぁ、こんなものよ――。
ドヤッ――!
俺は心の中でドヤる。
「鱶野……。ドンマイ!」
春沢が耳打ちして慰めてくれた。
帰ったら枕を濡らそう。
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