第二節 文化祭編
魔王とLHR
学校の行事についての話し合いや合唱コンクール・体育祭の練習、学外活動への参加など、その内容は多岐にわたる、週一である学級活動を行う時間。
まぁ基本、陽キャ達がはっちゃけるので、俺のような陰キャには縁の無い虚無の時間である。
であるのだが――。
「うぇーいw!それじゃ皆!!今日は“
教室の正面。
教卓前。
クラスの最も目立つ所で、文化祭実行委員の春沢はLHRを仕切っていた。
何が楽しいのか、机をバシバシしばきながらはしゃいでいる。
同じく文化祭実行委員の俺は、余り存在感を放たないようにして、クラスの奴らが出していった案を黒板に白いチョークで書き留める。
担任の今市は教室の隅でパイプ椅子に座っていた。
基本、彼はこういった時、生徒の自主性を尊重すると言って、放任主義に徹している。
堂々とスポーツ新聞を広げながら競馬の着順予想をしていた、生粋のサボり魔なのだ。
クラスの連中もこれにはもう慣れた。
あ、こっそり鼻毛抜きやがった――。
汚ねぇな……、バレてるぞ……!
そもそも、何でこの俺が文化祭実行委員なんぞやらねばならんのか……?
事の発端は二学期が始まって、二週間後。
理事長室で始まった。
※※※
「定期連絡ご苦労様です」
俺と春沢は、週に一度、ダンジョン調査の経過報告を理事長にしているのだ。
「しかし、解放者ですか……、また、面倒そうな人たちが現れましたね」
「理事長は心辺りがあるのですか?」
解放者については、予め吉乃さんからの報告が行っているが、後追いで俺達も変異体の事も踏まえながら理事長に報告した。
「いいえ、全く。――ですがそんな風に自分達を呼んで、魔王と敵対する人員を集めているとなると、ある程度の組織的な集団でしょう。しかも、魔王に明確な敵意を向けている。動機はどうであれ、ダンジョン内で悪戯に暴れられれば、此方のダンジョン開発事業にも支障が出ます。――これは、由々しき事態です。暫くは、モルガリアと同等の特級案件として私達も対処しましょう」
来客用のテーブルの上には冷めた紅茶が。
気が張って飲めていなかった。
というか、理事長室は居心地があまり良くないのだ。
「時に……、我が校ではそろそろ文化祭の準備が始まるころですが……」
「りじちょーも文化祭楽しみにしてんの!!?」
春沢は楽しみにしている様だ。
「いえ、特に」
「えー、つまんなーい!」
「ですが、鱶野君と春沢さんには一つお願いしたいことがありまして……」
「何々?」
お願い……?
なんだろう、嫌な予感しかしないのだが……???
「お二人には、文化祭実行委員になって欲しいのです」
「はぁ!!!!????」
ほらー!
「えー!?面白そーじゃん!おけ丸☆」
全然おけ丸じゃないぞ――☆
「それで、お二人には生徒会役員に近づいて、彼女たちの素性を調べていただきます」
「え……!?」
成程、そういうことか……。
豊徳院の配信に彼女たちが出てきた時、俺も違和感を感じていた。
豊徳院と共に行動するという事は、モルガリアの仲間の可能性もあるのだから……。
確かに不安要素は無くしておくに限る。
ある意味スパイの様な汚れ役だ。
俺は構わないが――。
問題は相方の方である。
※※※
結局。
生徒会役員の素性調査に春沢は乗り気でなかったものの、実行委員は楽しそうだという事で、俺達は立候補した。
そして、特に反対者も現れる事も無く俺達は実行委員になれたのだ。
何の事は無い、文化祭は楽しみたいが面倒ごとは御免だという奴らが大半だったのだ。
それにクラスのカーストの頂点に君臨する春沢に対抗できる者などいないのだ。
俺は……。
まぁ――。
なんか、自然に受け入れられた。
只、問題はここからなのだ。
生徒会役員の素性を調べる。
これこそ自称探偵である帝さんの使いどころではないのか――?
あの人、普通に学校に出入りしてるし……。
春沢はこっちの方は乗り気でないので、実質俺の担当という事になる。
別に汚れ仕事をする事には抵抗も無いので問題はない。
性分には合っている。
その分、本業の実行委員部分は春沢に丸投げする事にした。
しかし、コミュ症では無いと思い込んでいる実質コミュ症の俺が、彼女たちから有効な情報など引き出せるのだろうか――?
次の文化祭実行会議からが勝負だ。
まぁ、良い――。
陰の者には、陰の者なりの戦い方がある。
その為にも、取り敢えず目の前の問題から片付けていかなくては。
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