呉越同舟

 「……は!だとよ姫様!!じゃぁアンタはどうなんだ!?」


 緋音と呼ばれていたヤンキー娘は、刀に似た形状の聖剣で春沢を責め立てる。


 「姫様ごめんなさーい!――アクシオン・ボルト!!」

 「ちょ!?」


 緋音氏の斬撃の合間を埋めるように、静流先輩と呼ばれていた主婦っぽい方の聖騎士が、水系の魔術で援護射撃を入れる。


すたみな次郎『普通に人同士でやりあっとる……』

最速の牛歩『なんか、凄いことになってるなぁ』

感嘆すけぼぅ『よくわからんが、タツミ・ギャル沢がんばれ!』

刃獅子『くっそ、女の聖騎士がみんなエロ過ぎる、けしからん……』

レタス検定準二級『ふぅ……。そんな事を言っている場合か!↑』

暗黒☩騎士ざまぁん『もうわけわかめだ』

RB箱推し『みんなケガだけはするなーーーー!!』


 「ウチも最初は鱶野と戦ったりしたけど、やっぱ前世は前世だし……。――今は、今の自分のままでウチはいたいっつーの!!!」

 「使命だの、運命だの言ってた姫様がこうも変わっちまうとはなぁ!」

 「だから、それは昔のはなしっしょ!」


 春沢が鍔迫り合いで押し返す。


 「アクシオン・ボルト!」


 例によってそこには静流氏の援護が飛んでくるわけだが。


 「もー!なんでウチの方は二対一なわけーーーー!!――だったら、これでどーだし!」


 春沢は、待っていたかのように無詠唱で氷系魔術を発動させた。


 「なぁ!?」


 向かってきたアクシオン・ボルトに着弾し、それは軌道を変えて緋音氏の方に飛んでいく。


 水系魔術を吸収して、威力は倍になった。


 「緋音ちゃん!?」

 「ちぃ、クソが!」


 緋音氏は足元が凍り身動きが取れなくる。


 「ふふーん!」


 してやったりと。


 春沢はドヤ顔だ。


 そこへ。


 一台のスクーターがウィリーをしながら土煙を上げて接近して来る。


 「助けにきたぜぇぇぇぇぇぇ!」

 「な!?」

 「?」

 「ちょ!?」

 「あ!?」

 「あら~?」

 「今度はなんだよ!?」


 いや――。


 こんな所にスクーターで乗り上げて来る馬鹿は一人しかいなかった。


 何処までも自由な男――!


 「うえーーーーーーいwww!!!」

 「笠井!!!」


エミール『あ……』

みぎよりレッドロード『あほニキやんけ!』

ひめひめひめなー『うわ、きたw』

xcyuddfd『あばばばばば』

空中ブランコ『よりによって……』

PARIPI『うえーい』


 「義によって、助太刀いたす……ッ!」


 何処かで見たような構図でスライドブレーキかけ、スクーターを乗り捨てた。


 「笠井!?なんでアンタがこんなとこにいんの!!?」

 「はぁ?こんなに継承者が集まってりゃダンジョンの外からでもで分かるっつーのw」


 如何やら家の手伝いをしていたらしい、笠井は地面におかもちを置いた。


 「さてと……」


 そう呟いて笠井は。


 吉乃さん達の方に立った。


 「はぁ!?おい待て笠井!どういう事だ!!?」

 「おや、君は……」


 ん?笠井とも知り合いなのか――??


 「加勢するぜ!ヨシノのじーさん」

 「あ!?なんで笠井のバカ息子がこんなとこにいんだよ!?」

 「つれないぜ、アカネちゃん。同じ商店街の仲間じゃねぇか!――と、誰だアンタ……?」

 「商店街をよく利用している、ただの人妻で~す」

 「お……、おう宜しく……!――つー訳で!商店街連合ここに集結!!」

 「笠井汪理!貴様は、魔王軍だろうが!!何故、そっちに付く!!?」

 「ええ~、良いじゃんよミカドさ~ん!俺もたまには、魔王とバトりて~よ~!!!」

 「しかも、てめえ魔王の仲間か!?」

 「そんなん何だって良いっしょw――それとも、全員で俺の相手をしてくれんのかぁ??」


 最近、襲撃されていないと思ったら。


 どうやら笠井は、定期的に発散しないといけないタイプらしい。


 結構フラストレーションがたまっているようだ。


 あ~あ。もうどうにでもなれ……。


 「竜眼!解放!!!!!」


 炎の渦に包まれて。


 眼をギンギンに光らせた、紅き翼竜が降臨した。


 「まさに呉越同舟とはこういうことか!誰でも良いからかかってこいよ!!」

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