聖騎士

 「聖剣抜刀ッ!」

 「「聖剣抜刀ッ!!!!」」


 三人同時に聖騎士へと変身した。


すたみな次郎『え、ナニコレ……?』

たぬきつねそば『迷惑系Ⅾライバー……、ではないか』

皇帝のあとりえ『探索者同士で戦うつもりか!?』

征夷大将軍大統領俺『どうなってんだ、一体』

エミール『おいおい、マズいんじゃないの』

バルクほるん『取り敢えず、見守るしかないか……』


 「なんで貴様がこんな所に……!?は……、流石に私も予測して無いぞ……!!!」

 「ちょっと……、まさか……!?」

 「二人とも知ってるのか?」


 如何やら三人と面識がある様だあるようだ。


 「フォルテシア皇国、姫騎士親衛隊隊長、“剣聖イングラム・フリーデン”!」

 「剣聖イングラムだと!?」


 剣聖イングラムはフォルテシア皇国最強とうたわれた、生ける伝説である。


 その剣に斬れぬものは無く、山火事を斬撃で鎮めたなんて与太話が、魔王おれの耳にまで届くほどだった。


 息子のジークに騎士団長の席を譲ったと聞いていたが、まさかルクスフィーネの親衛隊をやっていたとは。


 「自己紹介は必要ないようですね。――お久しぶりですルクスフィーネ様。そして……。初めまして、魔王リベリアル・ルシファード」

 「むう!?」


 物腰は柔らかだが、鋭い眼光が俺を捉える。


 この俺が気圧されるなんて――。


 「剣聖が一体俺達に何の用だ!?――こっちにはアンタ達と敵対する理由なんて無いぞ!」

 「そうでしょうか?魔族と人類、それだけで理由は十分だと思いますが」

 「そんなの、あっちの世界での事情じゃん!鱶野は、ウチから見ても悪い事するような奴じゃないし!!」

 「姫様が魔王に騙されてるって可能性だってあんだろ?」

 「な!?アンタは、副隊長のプラムローズ!!?」


 緋色の髪のヤンキー娘の方の聖騎士だ。


 「私も幸せな家庭を守るために戦わせてもらいますねー」

 「ジュディスまで……!」


 こちらは、主婦っぽい人の方。


 「こっちの世界で覇道を敷くつもりなど、これっぽちも考えていない!――頼むから剣を納めてくれ」

 「それを確かめるためにも、一つ手合わせして頂きたいのです。何分魔族は狡猾な故、自分の五感で判断させて頂きます」


 なんだそりゃ――!?


 少年漫画とかで良くある、一度戦えば相手がどんな奴かわかるとかそういう感じのか?


 兎に角、戦闘は避けられる感じじゃない。


 「丁度いい……。私も貴様には、前世の礼がしたかったのだ」

 

 帝さんは、吉乃さん達のいる丘に降り立った。


 「貴方とは、剣を交える予定では無かったのですが……、帝京介君」

 「まさか、自分を倒した相手がすぐ傍にいたとはな……!――そっちの事情など知るか。来ないのならこちらから行くぞ」

 「時に……」

 「な、なんだ……?」


 ん?


 帝さんは、こちらでも吉乃さんと知り合いなのか――?


 「まだ、今月分の家賃を頂いて無いのですが」

 「いや……。オーナー、それは……、今はまとまった金が無くてだな……、その……。ここで、その話をするのは卑怯ではないか……!?」

 「え……?」

 「僕は来月まで待っても構いませんよ?」

 「ちっ……。く……、心遣い感謝する……」


 そう言うと、離れたところの岩の上に変身を解いて座り込んだ。


 「――と、いう訳だ鱶野辰海」

 「ちょいちょいちょーい!いや、意味わかんないから!?」

 「吉乃氏は、私の探偵事務所が入っているビルのオーナーなのだ。今追い出されるのは非常に困る。なので私は今回手出しできなくなった、自分で対処してくれ」

 「だそうです。魔王リベリアル・ルシファード。――緋音さんは、姫様をお願いしますね」

 「わかってんよ」

 「おいおい、マジか」


 剣聖とは、つまり最強の聖騎士に与えられる称号なのだ。


 簡単に言ってくれる――。


 「では、行きますよ……!」


 吉野さんは、ワンアクションで上空にいる俺の所まで飛んできた。


 そして、そのまま聖剣を振り下ろす。


 俺は、魔力の剣で透かさず受ける。


 「くううう!?お、重いっ!!」

 「ほう、魔力の剣ですか……。舐められたものですな!」

 「ちが……!む、うううううう!」


 なんとか受けるも、勢いに押されて地面に落下した。


 横目で春沢の方の様子を確認する。


 あっちも似たようなことになっていた。


 「ちょおおお!なんでウチらが戦わなきゃなんないのぉ!?」

 「それはアンタが魔王なんかとつるんでるからだろうが!」

 「だから、鱶野はそうゆう奴じゃないんだって!」

 「アタシが知るかよ!――大体、何だ?その……、破廉恥な格好は!?それも魔王に着させられてるのか!」


 誤解です――。


 「はぁ!?破廉恥って……。――それになんか変な風に見られてる気がするんですけど!」


 聖剣と聖剣同士の鍔迫り合い。


 幾重にも切り結んでは、火花が散っていた。


 「もー、怒った!聖剣抜刀!!」


 春沢も甲冑姿へと変身した。


 「本気でやるつもりになったな!」

 「うっさい!取り敢えず、静かにさせるし」

 「やれるもんならやってみな!」


 再び剣戟が始まった。

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