成敗
「アルスマグナ……」
春沢は手を
「待て待て待て待て!グランデル・マギカはイカんだろ……」
「だって、悪いのはこいつらだし!」
俺は迷惑系Ⅾライバーと春沢の間に割って入る。
まぁ、コイツらを庇う事もしたくは無いが……。
それでも流石に一般人にそれを撃つのはマズかった。
「どうどう」
なんとか、怒りを鎮めるよう
「こ……、コイツ……。俺らの魔術喰らってピンピンしてやがる……!?」
豪壕号『は?』
ライフル『なんで?』
ハンドガン『は?』
オショウ『本気でやれし』
「くっそがぁ!お前らもう一発やるぞ!!」
「お、おう!」
「あ!貴様ら……!!」
「「「「ブラスティア……」」」」
四人組は再度、魔術式を構築し始める。
先程のよりも魔力の光が強い。
威力を上げてきたのだ。
「「「「ボルトォォォォ!!!!!!!!」」」」
「ああーもう!」
轟々と火球が空気を焦がし、俺一直線に飛んでくる。
このまま来れば、四発同時に着弾するだろう。
今だ――!
「ふん!」
身体で受ける直前に、飛んできた火球をまとめて両手で抑え込む。
「え……!?」
「は……!?」
「うそ……!?」
「だろ……!?」
「むうう!」
手のひらから魔力を放出し、爆発する前に力で無理やり抑え込んだ。
kgmmん『え……』
ハンドガン『なにあれ……』
ザックん『マジか……』
kl.37564『やべえよやべえよ』
シュンと。
線香花火の様に、両手に挟まれ圧縮された四人分の魔術が消えた。
「ふふふ……。この魔王に二度も手を出すとは……。次は貴様らがこうなる番だぞ……?」
やられっぱなしも
何故だろう、魔王状態だとこういう台詞がスラスラ出てくるのだ。
「な……何なんだよ!?お前はよう……!!?」
恐怖の効果はあったみたいだ。
男たちは取り乱し始める。
「何だ。誰とも知らずに喧嘩を売るとは哀れな人間だな!俺は、魔王!魔王タツミだ!!」
「ま……、魔王!?何だよそれ……、わけわかんねえよ!!」
「魔王……?」
「まあ良い!どうせ四人で掛かれば勝てっこねぇんだ……。行くぞ!おまえら!!!」
「「「「うをおおおおおお!!!!」」」」
「学ばなん奴らだなぁ……!」
各々腰の短剣を抜いて突っ込んで来る。
なんの連携も取れていない、ただ数で押そうとする何も考えられていない突撃だ。
すたみな次郎『来るぞタツミ』
不明な点はお問い合わせました『うわ、躊躇なく剣抜いてきやがった……』
孔掘る加藤『こいつら相当やってんな……』
よぎぼぅ『負けるなタツミ』
PARIPI『うぇーい』
暗黒☩騎士ざまぁん『迷惑Ⅾライバーなんかに負けんなよ!』
右、左、右、右。
何という単調な太刀筋だ――。
最早、太刀筋と言っても良いのかすら怪しい。
何だか馬鹿にされているかと思うくらいだ。
後ろに歩くだけで簡単に避ける事が出来た。
「避けんなぁ!」
「だったら、当てる努力でもせんかw」
「何をー!!」
八王子ジャックナイフの攻撃が激しくなる。
すると。
「鱶野!?後ろーーーーー!!」
「へ……?」
後方不注意――。
大きな岩が後方にあったのだ。
鶏でも食べる獣『あ……』
一級吊り師『馬鹿……』
いい出汁DETEいる『ちょw』
たぬきつねそば『これは』
「ちょっと、マズいかもおー!?」
「もー、カッコつかないし!!」
刹那。
春沢が俺の目の前に現れる。
「フォルテシア流・八式……、ワカツミタマ!!」
そして。
聖剣が横に美しい軌跡を描いて、四人をまとめて薙ぎ払った。
「あがぁ!?」
鵜鶴nデス『ギャル沢ァ!』
みぎよりレッドロード『ギャル沢ぁ!』
吉良りん革命『ギャル沢ァ!』
入鹿『カッコいいぞ!』
縄Q『凄w』
相撲区千伊豆『マジかwww』
「あ……ああ……」
斬られた四人は地面に倒れ込みピクピクしている。
ハンドガン『噓だろ……』
ザックん『どうなってんだよ!おい!!!』
kl.37564『強すぎだろ』
豪壕号『調べたらコイツらもⅮライバーみたいだぞ』
たっくす『うーわ……』
ライフル『ええええええ!?』
ロケラン『は!?』
kgmmん『ケーサツ!ケーサツ呼ぼうぜ!』
グレラン『マジか……』
「し、死んで……」
「――ないし!これただのミネウチだもん」
しかし、魔王と渡り合える程の姫騎士の一撃である。
骨くらいは折れているかもしれない。
八王子ジャックナイフのコメント欄も荒れてきている。
事態を早急に納めた方が良さそうだ。
仕方ない、治癒魔術でも使ってやるか――。
俺は、近づき手を翳す。
「ひいいいいいいい!?」
「こ……、殺されるぅーーーーーー!?」
「え、ちょ……、違……!」
「い……、命だけはーーーーー!」
「あ……」
男たちは元気に飛び上がると、一目散に逃げていった。
「……。これに懲りたら、迷惑行為なんてやめろよー!」
後で説教をと思っていたが、それを言う前に逃げられてしまう。
……。
……。
……。
「いやはや。君達のお陰で助かりました……」
ご老人は岩陰に退避していたようだ。
「ケガは無いですか?」
「おじーちゃんだいじょーぶ?」
「ええ、このご覧の通りなんとも。――これは何かお礼をしないといけませんね……」
「い、いや。そんなの全然!な、なあ!?」
「そーだし、おじーちゃんは被害者なだけじゃん」
「そうですか、しかし……。――あ、そうだ。今度、是非僕の店にいらして下さい。ただでご馳走しますよ」
「ご馳走!?」
なんて、素晴らしい響きだろうか。
下心など全くなかったが、誠意のある申し入れ。
これを断るのは無作法と言うもの。
「あ、ちょ。鱶野ーーー!」
「ははは。僕、八王子商店街で洋菓子店を営んでいるんです。味は保証いたしますぞ」
「洋菓子……。って。スイーツって事!?」
春沢も食いついた。
「ええ。と言ってもじじいの趣味見たいなものですが」
「いえ、是非お邪魔させていただきます」
「それは良かった。では、心してお待ちします。――おっと、自己紹介がまだでしたね。紳士としたことがお恥ずかしい。僕は吉乃と申します。どうぞ皆さん気軽に“ヨッシー”とお呼びください」
ヨッシーか……。
なんか意外とお茶目な人の様な様だ。
「鱶野です」
「ウチは春沢!――で、ヨッシーはなんでダンジョンなんかにいたん?」
早速、呼びやがった――。
目上の人はもっと敬わんか!いや、まぁ春沢だしいっか――。
「最近、モンスターを使った洋菓子を研究してましてそれで」
成程――。
しかし、老人一人で……、しかもBランクダンジョンとは――。
このご老人なかなか侮れないぞ。
「――しかし、驚きました。お二人ともお強いのですね」
「い、いやそんなぁ……。まぁ、登録者数10万人のⅮライバーだったりもするので」
褒められると、つい調子に乗ってしまう。
「Ⅾライバー……?」
「ヨッシー知らないの?ダンジョンを探索する様子をネットで配信するやつ」
「ああ。だから皆さん、カメラドローンを飛ばしていたのですね!――という事は、先程の方たちも……」
「あれは、迷惑行為をして視聴数を稼ぐⅮライバー。通称・迷惑系Ⅾライバーです」
「色んな方たちがいるのですね……」
そんなこんなで、俺達は吉乃さんと別れた。
お店には、休日に春沢と伺おう。
※※※
後日。
今回の迷惑系Ⅾライバー撃退騒動はSNSで話題になり、登録者数アップに貢献してくれた。
これにより八王子ジャックナイフが信者を使って攻撃してくるという事も無く。
良い感じで一件落着となったのだ。
だが、今のメディアの注目度なら警察沙汰になってもおかしくなかった。
今回もグラウベン機関の力が働いたに違いない。
理事長に後で聞いてみると。
「四人分の戸籍くらいなら簡単に消せますよ」
と、端的に答えてくれた。
もちろん、財閥ジョークだと願いたいが……。
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