八王子ジャックナイフ

 「ちぇーすw俺達ー、八王子ジャックナイフつーんですけどー、正義のⅮライバーっやてましてーwww」

 「今おじーさん、モンスターイジメてたっしょーwww!?」

 「だから俺らー、モンスターの代わりにおじーさんの事、しようと思うんですよw」

 「お前らー。コイツの事、制裁しちゃってもいいよねーwww?」


 近づいてみると。マンドラゴラを採取していたエプロン姿の紳士っぽいご老人に、チャラチャラした四人組の男が難癖を付けている。


 アイツら、迷惑系Ⅾライバーだ――!


 ドローンカメラが飛んでいる。


 生配信中の様だ。


 ああやって、ターゲットを見つけて喧嘩を吹っ掛けて、奇をてらった配信で注目を集めるのだ。


 「何を言うかと思えば。いいですか、探索者はギルドによってダンジョン内でのモンスター討伐が認められているはずです。――貴方達のしていることは、只の言いがかりでは?」


 ご老人は相手をさとすように、落ち着いて静かに、だがはっきりと自分の意見を述べていた。


 こういう、イレギュラーな状況だとなかなか出来ない冷静な対応だ。 


 「うわwじーさんwwwこれ、今生配信中なんだけど?そんな事言っちゃっていいのかよwww?証拠残っちゃうぜーw!?」

 「はぁ。何を訳の分からない事を……。僕が悪いと言いたいのですか?」

 「何だよ、分かってんじゃんw」

 「……。モンスターさんイジメてごめんなさい。どうぞ仲間の元へ帰って下さい。――これで、満足ですか?それでは失礼します」


 ご老人はまだ息があるマンドラゴラをあっさり手放し、これ以上輩に関わりたくないと、きびすを返し退散しようとする。


 「ちょいちょーいwwwそーじゃないんだってwおじーさんへの制裁がまだっしょw???」


 男たちの一人が、翁の行く手に回り込み通せんぼする。


 「ああ!もうめんどうくせー!良いからっやちまおーぜw皆も見たいよなーwww?」


たっくす『早くやれよー』

オショウ『制裁タイムだーーーーー!!!』

kgmmん『制裁!』

ハンドガン『制裁!』

ザックん『制裁!』

kl.37564『“¥180”キツメでおなしゃすw』

豪壕号『手加減なしだー!!!!』

ライフル『今日は何のでいくんよ?』


 「お、そーだな……。火炙りにするかw!!!!!」


ロケラン『火炙りキター!』 

kgmmん『火炙りだーーー』

ハンドガン『www』

kl.37564『八王子ジャックナイフ最強!!!!!』


 ドローンカメラから、投影されている配信画面のコメント欄が見える。


 なんて低俗な配信なんだ――。


 嫌悪感を抱いて、吐き気がする。


 ご老人が逃げられないように男達が四方を囲んだ。


 「よーし!お前ら制裁準備ーwww」

 「「「うぇーいwww」」」


 指揮しているリーダー格の男に続き各々おのおの魔術式を展開していく。


 「何ですかこれは……。一体何をする気です!!!??」


 さすがのご老人も異様な光景に焦り始めた。


 「ちょ!おじーちゃんめっちゃピンチじゃん!!」


すたみな次郎『タツミ!いかれてるぞあいつら』

最速の牛歩『何だよあれ!?迷惑系Ⅾライバーじゃねーか!!!』

三人目の僕『早く止めないとマズいぞ』

みぎよりレッドロード『タツミ頼んだぞ』


 「当たり前だ!」


 俺達は輩の蛮行を止めるべく、注意をこちらに向けさせる。


 「待てええええ!!!貴様ら!!!!!!」

 「!?」

 「あん……、何だよ!?てm……」


 次々に迷惑系Ⅾライバー達がこちらに気付く。


 「いや。マジで何だよそれ……」


 いきなり目の前に、全身甲冑姿の男が現れたのだ。


 その反応は無理もない。


 「あんたら!揃いも揃っておじーちゃんイジメて恥ずかしくないワケ!?」


 春沢も聖剣を向け、怒りを露わにする。


 「はぁ!?何だよてめーらこそ!?外野は引っ込んでろよ!」

 「貴方達は……?」


豪壕号『何だよ?こいつら。迷惑系Ⅾライバーか?』


 いやそれ、お前らが見てる配信の方だからね――!?


ライフル『めんどくせー氏。こいつらも制裁でいいんじゃね?』

kgmmん『制裁!制裁!制裁!』

たっくす『制裁対象増える感じ???』

オショウ『まとめて制裁しよーぜw』


 「ったくw絡んできたのはお前ら方だかんなwww恨むなよw?」

 「うぇーいw……ってあの女の方可愛いくねw?後でちょっと楽しもうぜwww!?」

 「うーわえっろwそんじゃ。ヤリますかwww!」


 展開されていた魔術式が俺達の方に向けられる。


 「あ!?ちょ!!?俺達は話し合いで解決を……、やめた方が良いと思うぞ!?」


 こんな状況だが、あまり大事にもしたくは無い。


 と言うか。警察沙汰だけはマジで困る――!


 とはいえ、陰キャのコミュニケーションスキルだ。


 明らかに台詞がの様になってしまった……。


 「うっせw」

 「「「「ブラスティア・ボルト!!!!!!!!」」」」


 四つの火球が俺に直撃する。


 「ちょおおおおお!?」


 爆風により洞窟内に突風が発生する。


 ゴオオオオオオオと土煙が離散していく。


 「あんたら……」


 あーあー、だから言ったのに……。


 「もーアッタマ来たーーーー!!」


 今日はアメスク姿で決めていた春沢が土まみれになっていた。


 激おこぷんぷん丸である。

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