秋と言えば……、迷惑系Ⅾライバーの秋

 『最近、メディアを騒がせている迷惑系Ⅾライバーですが、解説の白鳥さんはこれをどう捉えているのでしょうか?』


 いつもと変わらない鱶野家の食卓。


 リビングのテレビからは、朝のニュースでダンジョン探索配信者についての特集が流れている。


 ぱっちり目の若い女性アナウンサーが、白髪交じりの全体的に見た目が四角いダンジョン専門家のおっさんに意見を求めていた。


 『はい。ダンジョンというものはとても異質な環境でして、魔術という力を行使できるようになるのですが、それによる暴力行為、迷惑行為といったものが特に最近増えていっている傾向にあります。――更に、動画配信プラットフォームを利用して、その様子をネットに流し収益を得る輩が迷惑系Ⅾライバーという訳ですが……、何しろダンジョンが特殊な為に、警察も上手く介入が出来ないといったのが現状として起きているんですね……』

 『成程……』


 迷惑系Ⅾライバー。


 このおっさんの言う通り、Ⅾライバーの迷惑行為はなかなか検挙されづらい。


 現行犯逮捕なんて勿論出来ないし、動画なんかも上手く編集され、証拠にしてはイマイチ決定力に掛けるからだ。


 まぁ、迷惑Ⅾライバーなんてダンジョン探索配信が流行ると同時くらいには、わらわら湧き始めたのだが。


 最近、特に注目されたのは暴行事件に発展し、遂に逮捕者が現れたからである。


 そのおかげでか、テレビでもという単語を最近よく聞くようにもなった。


 「最近、物騒ねー。辰海も気をつけなさい。アンタのバイト先、千空ちゃんの所でもⅮライバー?関係の事やっているんでしょう?」

 「あ、ああ……。まあね……。気を付けます……」


 おおう……。


 ウチの家族は皆、ダンジョン系の話には疎い。


 なので、Ⅾライバーの話も食卓に上がる事は無かったので、油断していた。


 母さんは勘が鋭いので、変に焦ってしまう。


 「ん?なんか怪しい……。アンタまさか、ダンジョン?ってのに入ってるんじゃないでしょうね……???」

 「は、入ったことないよダンジョンなんて、そんなの危ないじゃんか……」

 「お兄ちゃんビビりだもんねー」


 う、うるさいわい!臆病な方が生存率は高いんじゃい――!!


 「気を付けろよー辰海ー。最近、学生の探索者?も増えてきたらしいぞ。友達に誘われてもダンジョン探索なんて危ないからやめろよ」


 父さんは、椅子の上で胡坐をかきながら、朝の朝刊を読みながら言う。


 俺は、家族に探索者であると言っていない。


 ましてやⅮライバーで前世が異世界の魔王だなんて夢にも思わないだろう。


 「大体、お兄ちゃん友達いるの?」

 「いるわい!」

 「へーそうなんだ……。あー!」

 「急になによ由波!?」

 「そー言えばお兄ちゃんこの前、立川の花火大会でバイト先の女の人と一緒にいたじゃん!」


 むむ!?なぜこのタイミングでそれを思い出す――!?


 「「えええ!?」」

 「椿つばきさん今日は赤飯にしよう……!」

 「そうね、たけるさん……!」


 両親はまるで異星人を見るような顔で俺の事をまじまじと見た。


 流石にその反応は酷すぎません――?


 「その人、すっごい美人さんだったんだよ」

 「ほう。やるなー辰海」

 「ちょっと!写真とか持ってないの!?」


 朝っぱらから食卓がテンションアップしてしまう。


 「だー!そゆーのじゃないって!だし!――ごちそうさま!言ってきます!!」

 

 俺はその場から、逃げるように登校した。


 まぁ、実際逃げたんだけど――。


 しかし、参った。


 半年はイジられコースである。


 家出でもしようかな――。


 朝の冷たい空気を全身に感じ、自転車で商店街を横切った。



 ※※※



 八王子第七ダンジョン。


 第三階層。


 Bランクの一般的な洞窟型のダンジョンだ。


 本日も春沢と変異体調査を兼ねてのダンジョン探索配信だ。


 今朝の一件で、変に春沢を意識してしまう。


  ――。


 その言葉が何故だか、頭の中に反芻はんすうされる。


 春沢は俺の事をどう思っているのだろうか――?


 そんなどうしようもない事を考えてしまう。


 「いくよー!鱶野!!」

 「お……、おう!」


 取り敢えず今は、目の前のモンスターの相手だ。


 「グライシス・ボルト!」

 「ブラスティア・ボルト!」


すたみな次郎『で、でた~タツミとギャル沢のお手軽コンボw』

RB箱推し『おやおや、氷と炎の連携ですか……』

みぎよりレッドロード『おら!やっちまえーーーー!!!』

 

 「ぐごおおおおおお!?」


 春沢の氷系魔術で凍結させ、俺の炎系魔術で熱しいて足を砕いた。


 10メートルくらいはありそうなロックゴーレムが轟音を立てて地面に倒れる。


 ゴーレム種は、鉱石や樹、氷や溶岩などで身体が作られているが、種族的にはスライムに近い人型のモンスターだ。


 そして、こういった大型のゴーレムの動き自体は緩慢である。


 だが、その一撃は凄まじく重く。


 Bランクダンジョンとはいえ油断は出来ないので、遠距離から魔術で動きを封じて倒すというのがセオリーである。


 「ぐごおををををおおおお!」


 ロックゴーレムは周囲の破片を集め再生し、立ち上がろうとする。


 「鱶野!こいつまた再生してる!!」

 「させんさ!秘儀!!魔王の鉄槌(ただのパンチ)!!!!!」


 俺は、露出しているゴーレムのコアを魔力を込めた拳で貫いた。


 「ぐごおぉぉ……」


 関節の接合が解けて、ゴーレムはその場でバラバラになった。


吉良りん革命『“¥300”ないす~』

最速の牛歩『っしゃあ!』

ここ@髭『“¥1000”やるじゃない!』

手負いの蛍兵『魔王最強!』

鶏でも食べる獣『かっけー!!!!』

暗黒☩騎士ざまぁん『“¥250”今日は時間が掛かった方なんじゃないか?』

オシャレ侍『いつ見ても爽快だぜ』

三人目の僕『“¥300”よしよし』

鵜鶴nデス『あんなデカ物があっさりと……』

ひなひなひ-なひ『おけ』

たぬきつねそば『ないす!』


 「この石めっちゃキレーじゃない!?」


 春沢がゴーレムの破片から小さな鉱石を見つける。


 ゴーレム種はこういった貴重な鉱石を生成するので結構儲かるのだ。


 「それ、売れるぞ」

 「まじー?よーし、いっぱい集めるぜ~?鱶野も手伝ってー」

 「はいはーい」


 俺は、千空さんの持ってきてもらったリアカーを引いて近づいていく。


 その絵面が面白くて、たつらー達には受けていた。


不明な点はお問い合わせました『ダッサwww』

孔掘る加藤『“¥500”おう、労働頑張れよw』

いい出汁DETEいる『夜逃げかな?』

(三)『魔王が下働きとか、面白過ぎだろ』

ひめちゃん親衛隊『いいねー似合ってるぜ?』


 魔王なのに……。


 すると。


 「なんなんですか!?貴方達は!!?」


あああ『ん!?』

真っ暗れーん『事件か!?』

よぎぼぅ『タツミ!身に行ってくれ』


 何やら男性の声が少し遠くから聞こえてくる。


 「春沢行くぞ!」

 「りょ!」


 俺達は、声のする方角に近づいていった。


 

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