俺は、少しだけ人類に宣戦布告する
「新魔王軍……。――それは、一体何と戦う軍隊なのですか?ここには貴方の敵などいませんよ?」
理事長は、まったく表情を変えない。
ポーカーフェイスだ。
めっちゃ怖ええ――!
「ふん。何を言っておられるのですか、理事長殿!俺……、魔王・鱶野辰海はこの人生、誰にも縛られず面白おかしく自由に生きると決めている!――俺は、俺の
「なんとも短絡的な動機ですね」
「新魔王軍だと!?鱶野辰海!貴様、一体何を考えている!!!?」
「はぁ!?鱶野あんた!新魔王軍!?何馬鹿なこと言ってるし!!?――魔王ってのだって、配信を盛り上げるためのキャラ付けじゃん!!!」
確かに初めは、そうであれればと願っていた――。
しかし、今は避けようのない問題が目の前に現れてしまったのだ。
俺は、腐っても魔王なのだ――!
「ふははははは!甘いぞ春沢!!――理事長は俺達の進路をダシにしてまで自分の計画に組み込もうとする人間だ。交渉の為には、こちらも手札から
「交渉ですか……」
「もー馬鹿……。手を振るえさせて言ったって全然カッコ付かないし……」
な……!?
確かに、少し手が震えていた。
仕方が無い。
敵を作るという事は、それだけ怖い事なのだ――。
「ふ、ははは!これは武者震いと言う奴よ!!」
「うっわ、だっさw」
「何をー!?」
「……。はぁ……、じゃぁ仕方ないか。……。……。私も……、新魔王軍に入るから!!!」
「はーーー!?何言ってんのお前!!!?」
お前は俺の覚悟を無駄に擦る気か――!?
俺だけが理事長達の敵になれば済む話なのだ。
「だってー、新魔王軍って言ったじゃん!たった一人で軍なんておかしいし!!」
「いや、それは……、そっちの方が格好良いかなーって……」
「それに、鱶野とはダンジョン配信で助け合あってる仲間だし……。いちれんたくしょー?みたいな感じ!!」
春沢は、口を横一線に結び俺を強い眼差しで見た。
「むーーーーー」
これは、
何より心強かった。
「お前には敵わんな、流石は我が好敵手」
「むふー」
春沢は何処か満足そうにドヤ顔を決める。
「……では、理事長殿どうしますか?」
「成程、これは困りましたね。まさか、元魔王と元姫騎士の連合軍とは……」
それにしては、理事長には動揺をした様子が無い。
理事長は姿勢を正して、俺をまっすぐ見つめた。
「かつて、たった1万の兵力で1000万の我が人類軍を相手した魔王軍。そんな軍隊の元指揮官に敵対されては、我が社の被害も相当な事になるでしょう……。――どうでしょうか、鱶野君。ここは我々と同盟を結ぶというのは……?」
「同盟……、ですか……?」
良うし――!
いいぞ、こっちのペースになった――!!
「ええ。貴方達の進路についてはこちらからは関与しない。その代わりに、一時休戦を申し入れます」
「ほう。そちらがどうしてもと言うのでしたら、こちらも応じるしかありませんな」
やはり、魔王状態になると気が大きくなっていけない。
思い通りに事が進んで、自然と胸が反り返ってしまう。
「ですが、一つ問題が……」
「聖女モルガリアについて……、ですか?」
「そうです。この問題が残る限り、我が社はオペレーション・Aliceを停止する事が出来ません。――まぁ、敵対された今でしたら、私が差し違えてでも貴方を魔王に覚醒させると言う選択肢も生まれましたが」
「有栖院!貴様!!」
「ちょ!?マジでそんなん、ありなん!?」
マジかよ!この人――!
言っちゃ悪いが、たかが会社一つの為にそこまでするのか!?
只では転ばないとかのレベルじゃない。
俺以上に覚悟ガンギマリなのだ。
「ふん。この俺を誰だと思っておられる!?聖女こそ、前世よりの我が宿敵!!魔王が倒さずに誰が倒すと言うのですか!!?」
「では、モルガリアの件は辰海君に任せても良いと?」
「勿論です。だが、やり方はこちらに一任させて頂きたい」
「構いませんよ。――ですが期限を設けさせてください。来年の夏まで。それがこちらの条件です」
「分かりました」
「では、商談成立ですね」
いつの間にか商談になっていた。
理事長は完全にビジネス基準なのだ。
手を伸ばし、握手を求めてきた。
しかし。
「なんだこの茶番は!?私は認めんからな!!!」
帝さんは、異議を申し立てる。
「帝さん……」
「これこそ、貴方達が望んだ自由では?」
「ぐっ……」
「その話!俺も乗らせて貰うぜーーーー!!!」
ガッシャアアアアアンと理事長の後ろの窓ガラスが盛大に割れた。
勢いよく、そこから侵入する一つの陰。
お前は――!?
「うぇーーーーーーいwwwwwww」
「ちょ!?あんた……」
「おや」
「!?」
全てを台無しにする男!笠井汪理――!!!
「話は聞かせて貰ったぜ!――聖騎士の匂いがすると思えばおもしれー事になってんじゃんw」
「な……、貴様は……!!!?」
「あーーーー!!!」
「「天空魔将ギルバトス!!!!!!」」
「お!アレスリゴールにカルバートもいんのかよーwww」
「もー、何で分かるのさー!?この部屋だって、魔力漏れ防止の処理がしてあるのに!」
「いかん、頭痛がしてきた……」
帝さんと環さんは俺達以上に、笠井に反応していた。
「うぇーい……w何々www歓迎されてない感じ……w?――地味にショック……w」
それもそのはず。
前世で二人は、ギルバトスに手を焼いていたのだ。
カルバートの発明は玩具にして破壊するし、アレスリゴールの立てた作戦には従わないしで散々だった。
「笠井、お前どうやって入ったんだ!?」
「これよぉ」
笠井は、腕の部分だけ変身していた。
「毎日ラーメンの新作開発でダンジョンのモンスター喰ってるからよぉw身体ン中にマナが少しづつ溜まって、ちょっと変身できるようになったんよwww」
マジかコイツ――。
なんか、笠井なら出来そうだなと納得してしまっていた。
「それより、俺も新魔王軍に入れてもらうぜwww」
「はぁ!?遊びじゃないんだぞ!!!」
「入れてあげたらどうですか?」
「え……?」
ガラスの破片をもろに受けた理事長は、怒っているかと思えばそうでも無かった。
涼しい顔をして凛と、掛かった破片を払う。
助六氏は、それを箒で集めている。
「そうすれば、
良いのかそれで――。
というか、接待に入るのかこれ――。
「うぇーいwww理事長わっかるーwあー、ジャンヌヒルデだっけかwww」
「理事長で構いませんよ。――それに戦力は多い方が良いではありませんか」
そういうことか。
「後、同盟の証としてグラウベン機関から、帝さんと環さんを新魔王軍に出向させましょう。――何か必要な事があれば二人に言ってください」
「有栖院!また、勝手に……!!」
結局、話は新魔王軍とグラウベン機関で同盟を結ぶことでまとまったのだ。
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