肝試しに行こう3
配信を開始して15分程。
肝試しと言う割には、普段の実況配信と余り代り映えはしない。
墓地の中を歩いているのと、モンスターが出る度にやたらと悲鳴をあげる春沢によってギリギリ企画が成り立っている感じだった。
それを、姫苗ちゃんが頑張って盛り上げている。
「ハルちゃんよわよわーwwwいつもはカッコいいのに……、今日はダサいぞ♡」
ひめひめひめなー『頑張れwギャル沢www』
RB箱推し『ドンマイw』
すたみな次郎『ギャル沢の悲鳴にびびるわw』
姫星観測隊員『お化けが居ても逃げそう』
なんか、春沢を見守る配信になりつつあった。
春沢が、俺の数歩後を付いて来る。
参道を進んでいくと、
「ひいい!!?」
姫ちゃんぱぱ『あ、また……』
るっきー@指『あら』
ひめちゃん親衛隊『今度はなんだw』
駄菓子二等兵『お、スライムか!』
ネクロスライムだ。
ネクロスライムは、捕食した生き物の骨を体内に保存していて、それを利用してモンスターの死体に擬態するのだ。
「――おねーさん、スライム相手にビビり過ぎ—wざこざこおにーさんより、ざこざこーwww」
「もー、やーだー!」
ネクロスライムは、身体を触手のようにして襲い掛かる。
春沢は支給された片手剣(安物)を振り回した。
「魔術が使えたら、一発なのにー!」
「ざんねんでしたーwおねーさん達は、ひめなミッションで魔術が使えませーん♡」
今回、俺達には、姫苗ちゃんによりいくつかミッションが課せられていた。
1.魔術の使用禁止。使っていいのは、支給された片手剣のみ。
2.ビビり過ぎ禁止。これは、俺と春沢でより多くビビった方が後日、罰ゲームを受ける。
3.ダンジョンのスレンダーマンを見つける。これも、見つけられないと罰ゲームがある。(連帯責任)
俺にとって、1と2は正直あって無い様な物なので、罰ゲームを回避する為には、何としても3をクリアしなければならない。
罰ゲームには、千空さんも関与しているのだ。
もうそれだけで恐ろしい。
なのでダンジョンのスレンダーマンを血眼になって探す。
「ちょいいい!切っても切っても倒せないんですけどぉ!?」
「おねーさん頑張れw頑張れw」
姫ちゃんぱぱ『ギャル沢ちゃん頑張れw』
みぎよりレッドロード『おら、どうした!?腰が引けてんぞ!』
ひめちゃん親衛隊『とうとう、ひめな様まで応援し出したw』
一方。春沢は、まだ、ネクロスライム一匹に苦戦していた。
スライム種には、“体組織結合限界領域”と言うものが存在するのだ。
つまり、身体を保てなくなるまで粉々にしなければ、いつまでも再生を繰り返す。
なので、スライム相手に物理的攻撃はかなり相性が悪い。
ネクロスライムは真っ二つにされては、飛び散った身体を引き寄せ再生していた。
「鱶野ー!助けてよー!!」
「おいおい、スライム相手に情けないな。お前本当に姫騎士か?」
「だって、力制限されてるし!」
それはそう。俺達は今回、覚醒をしていない。
企画を成立させるためには仕方が無いのだ。
ネクロスライムは身体の一部を飛ばし、春沢に吹き付けた。
「な、何?」
付着した部分の衣服が溶かされる。
「ちょい!?服が溶けてるんですけどぉ!?」
「それは、やめろおおおおお!」
ま、まずい――。
ひめなちゃんねるは、春沢のエロシーンを垂れ流して良いような低俗なものではないのだ。
何より、姫苗ちゃんの教育に悪い――!
俺は、直ぐにネクロスライムと春沢の間に割って入る。
その隙に春沢は、魔力を使って探索用スーツの傷を塞ぐ。
「少し、イタズラが過ぎたな、スライムよ!」
向かってくるネクロスライムに拳を合わせた。
ムニュと、何とも言えない感触が包み込む。
「爆ぜるが良い!
魔術は禁止されていても、魔力を使う事は禁止されていないのだ――!
拳から高出力の魔力を瞬間的に放出する。
ネクロスライムは、10倍くらいの大きさに膨らんでから、粉みじんに弾け飛ぶ。
恐らく、姫苗ちゃんと視聴者には、俺が殴って倒したようにしか見えてないはず。
「ざこざこおにーさん!すっごーい!カッコいいぞ♡」
ひめめーめひーめめ『スライムワンパンかよ!?』
姫星観測隊員『ないすー』
りりか@ちょいぽちゃ『きゃーたっくんカッコいい!』
PARIPI『うぇーい』
暗黒☩騎士ざまぁん『すっげぇ!』
名無しの騎士君『ざこざこおにーさん流石やで』
RB箱推し『ざこニキないすー』
ひめひめひめなー『イグニッション・ノヴァってw(※只のパンチ)』
すたみな次郎『おけ』
ひめちゃん親衛隊『イイネ』
飛び散ったスライムの破片が、雨のように降り注いだ。
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