肝試しに行こう2

 八王子第四ダンジョンは、墓地型のダンジョンである。


 というか、墓地である。


 モンスターは出没するが、基本墓が永遠と続くのみ。


 真っ暗という事は無く、提灯ホウズキやウィスプフラワーなどの発光植物が足元をを優しく照らしている。


 今回俺は、懐かしのなので、なんだか墓場をうろつく亡霊みたいになってしまっている。


 階層はここしかなく、こんな所に来るのは、廃墟マニアみたいな人種かダンジョン研究家くらいだ。


 なので、当然不人気ダンジョンで、探索者は俺たち以外見当たらない。


 そもそのこの地面の下には、俺の前世の同胞たちが眠っているのだ。なんだか複雑な気持ちである――。


 まぁ、でもお盆みたいなのはあって、


 墓参りの時は、酒盛りをしては乱闘騒ぎに発展するまでが一連の流れだ。


 死者を弔うというよりも、「俺達は元気だから、お前たちもあの世で好きにやれよ」といった、壮行会の様な物であったと覚えている。


 その後は、教育係のエクセリアにみんなで叱られ、墓地を掃除する。というのが毎年の習わしになっていた。


 なので、少しくらい暴れてもアイツらなら許してくれるだろう――。


 「鱶野、ちゃんと撮ってよー!」

 「いや、撮れてんじゃん……」

 「全然、駄目だしー」


 春沢がスマホの画面を見て、抗議する。


 今俺たちは、ダンジョン内で春沢がSNSに投稿する写真を撮っていた。


 春沢には、LouveLueurというファッションブランドのスポンサーが付いているのだ。


 なので、支給された探索用スーツを着て宣伝しなければならない。


 今日の春沢は、ピンクのマウンテンパーカーに、白いセーター、ベージュのミニスカートとなっている。


 どうやら、LouveLueurはギャル界隈でダンジョン探索ブームを起こしたいらしく、その白羽の矢が春沢に向けられたのだ。

 

 「じゃ、もう一回ね」

 「ええ!?」

 「は?」

 「是非、撮らせていただきます!」

 「よろしい」


 春沢は、まだ少し怒っているみたいだ。


 「撮るぞー。はい、チーズ」

 「ちーっす」


 しかし、カメラを向ければギャルっぽいポーズで、バチバチに決めてくる。


 墓地をバックにるピースキメキメのギャルは、何とも言えない構図である。


 そうこうしていると。


 ピコンと、メッセの通知音がスマホから鳴った。


ひめな「配信じゅんびできたよー!」

千空「そっちはどう?」

辰海「いつでもいいぞ」

ハル「おけマル!」

千空「それじゃ、ドローンカメラ起動してー」


 俺は、ドローンカメラのスイッチをいれる。


 スイーッと、カメラは静かに上昇していった。


 Ⅾギアで配信画面を確認する。


 画面にはもう、俺達の姿が映っていて、左端のワイプには姫苗ちゃんが居た。


 この時点で同時視聴者数は、7000人程いた。流石、我がギルドのエース。


 「クソ雑魚リスナーのみんなー、盛り上がってるー!?こんひめー!!RBアールビー所属の姫星ひめなだぞ!みんなうやまえー!!!」


 早速、オープニングコールが始まった。


 因みに、姫苗ちゃんと源さんは所属事務所を“RB”と略す、理由は「レブナント・ブリゲイド?えー!?可愛くなーい!」という事だ。


 そんな事もあり、レブナント・ブリゲイドの知名度はなかなか上がらないのだ。


ひめひめひめなー『こんひめー!』

閃光の射手ブラッド『待ってました!こんひめー!!』

ひめめーめひーめめ『お、始まった!』

りりか@ちょいぽちゃ『来てやったわよ、ちびっこ。早くタっくんを出しなさい』

みぎよりレッドロード『こんひめー!!!』

PARIPI『うぇーい』

暗黒☩騎士ざまぁん『こんひめー!』

姫ちゃんぱぱ『姫様ー!こんひめー!!』

ひめちゃん親衛隊『ひめな様!!』

すたみな次郎『こんひめー!!』

RB箱推し「よ、待ってました!!!」


 コメント欄には、姫苗ちゃんのファンである、ひめなーの他にもたつなーやまりなーの姿も見られた。


 「それじゃー、ダンジョン探索配信する前に今日のお友達の紹介をするねー!ざこざこおにーさんのタツミおにーさんと、新メンバーのぎゃるぎゃるおねーさんのハルちゃんでーす!!」

 「うっす!みんなのアイドルタツミでーす!」


 久々のホームとあって、少しテンションが高くなる。


ひめちゃん親衛隊『あ、ざこニキ』

すたみな次郎『ざこニキおっすおっす』

姫星観測隊員『ざこニキ』

りりか@ちょいぽちゃ『たっくんきたー』

ひめめーめひーめめ『ざこニキ』


 「新入りの春沢でーす!よろよろー!!!ぴすぴーす!!!」


 肝試しに乗り気でなかった春沢も、テンションが上がっていた。

 

 姫苗ちゃんの前では、つよつよギャルを演じるつもりの様だ。


みぎよりレッドロード『ギャル沢ぁ!』 

RB箱推し『ギャル沢ぁ!』

三人目の僕『ギャル沢もおるやん』

姫ちゃんぱぱ『メスガキ×ギャル、これは教育にわるいですぞー』

ひめちゃん親衛隊『えっっっ!!!??』


 「――そして、今回から“ひめなミッション”が新しく追加されます!ざこざこおにーさん、大丈夫かなぁ?ぷぷー!!」

 「舐めるな、メスガキが!ミッションがなんぼのもんじゃい!!」

 「ええー!?だいじょーぶかなぁ?それじゃぁ、もしミッションを破ったり、達成できなかったら、きつーいオシオキが二人を待ってるから、カクゴしてね!」

 「え!?ちょっ!!!ウチもあんのそれ!!?」

 「当然じゃーん!」


ひめひめひめなー『www』

入鹿『w』

ひめめーめひーめめ『www』

姫ちゃんぱぱ『ww』


 「これより!夏の納涼大肝試し大会を開始しまーす!!!」

 




 


 

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