星と夜:とある軍部の記録(本文+コメント二件)

とある亡国の軍部の記録+α


○稀煌暦79年

 創造神様の告げにより、王都の酒場に魔族が紛れていることが判明。これを機に各都市にて魔族の密偵一掃作戦が実行される。

 なお、女神の御言葉にあったアライアなる娼婦は見つからず。以降、神敵とし、創造神様の手を煩わせないよう、発見し次第、処刑すること。


<コメント>

女神メモ:どうしてこうなった。

アライア:あんた、私の国の一番偉い人だからって国王に「貴方の所にいるサキュバスを呼んでください」って言ったら、大騒動になるわ。つーか、直接呼べ。



○稀煌暦101年

 神敵アライアが魔王国にて目撃されたという話より、魔王国に身柄を要求。しかし、魔王国はこれを拒否。

 神敵を囲う魔王国を神敵の一味として、王は魔王国への進軍の宣誓。これにより、魔王国との戦争が開始。


<コメント>

女神メモ:本当にどうしてこうなった。

アライア:いや、まだ国出てなかったんだけど。ていうか、完全にただ魔王国の領地が欲しいだけだよね? 目撃談とか嘘だし、魔王国も居ないんだから出せないっつーの。



○稀煌暦106年

 我が国と魔王国との戦争が終結。アライアと見られる魔族を確保。王都にて処刑。これにて、世界に平和が訪れる。悔やむは、魔王国の領地をほぼ取れなかったことか。


<コメント>

女神メモ:なお、チェルシーさんに謝罪し、すぐに転生していただきました。

アライア:↑のチェルシーって誰? いや、私もこの処刑見てたけど、本当にあの娘誰?



○稀煌暦128年

 創造神の神託により、神敵アライアが復活したことが判明。遙か遠い地にいるとのことで、強き若人を集め、討伐隊を結成。我ら軍は国から離れられないことを悔やむ。彼らに光りあらんことを。


<コメント>

女神メモ:あの、聖女さん? 秘密って言ったよね?

アライア:いや、あの国の聖女って周りを人間至上主義でガチガチに固められてるから・・・。しかも、まだ八歳とかじゃなかったっけ? あと、私、一回も死んでないから!




○稀煌暦131年

 討伐隊が。神敵アライアと対峙。しかし、協力関係にあったエルフ達の裏切りにより失敗。翌年、討伐隊は聖剣・聖盾・聖鎧と共に帰還。以後、これらを装備する者を勇者と呼称し、神敵アライアとの対決に臨むこととなる。


<コメント>

女神メモ:エルフさん達、分かってくれて良かった。

アライア:エルフ、聖剣とか盗まれてて、マジギレしてたなぁ。




○稀煌暦137年

 ドワーフの国にて神敵アライアの目撃談あり。ドワーフの国王と交渉。ついに、神敵アライアを確保。王都にて処刑の準備が進められる。


<コメント>

女神メモ:あわわわわ

アライア:ちっ、エルフの聖剣を造るよう頼んだのが気に入らなかったようだ。あっさりと捕まって、差し出された。まぁ、里帰りしたかったし、ちょうど良いか。




○同年(稀煌暦137年)

 神敵アライアが王都到着直後に消失。我ら軍部も一斉を挙げて捜索に身を乗り出すが、見つからず。一体どこへ行ったのだろうか。


<コメント>

女神メモ:(神罰の準備中)

アライア:↑止めて。王都ごと私も消えるよ? ちなみにこの時は昔の家に転移した後、しばらく聖女に匿ってもらってた。女神がエルフに言った「ただお友達に家に来てもらいたかっただけ」宣言がこっちにも効いてたみたい。



・・・・・・・・・



○稀煌暦280年

 ついに、恐れていたことが起きた。数百年前に世界に恐怖を払撒いたアライアが出現したとのことだ。我が国は討伐隊を結成し、その中でも特に優秀な若人を選出、「勇者」の称号を与え、討伐隊のリーダーに任命した。

 勇者が魔王アライアを討伐してくれることを願う。


<コメント>

女神メモ:どうしてこうなった。あと、数百年は言い過ぎです。

アライア:どうしても何も、地上に戻すときにうっかり、私の名前と降ろす場所を

神託で出しちゃったからでしょ、ねぇ・・・、マジで何やってんの? 地上に降りたときにエルフからの同情の視線どれだけ痛かったと思ってる、ねぇ? あと、恐怖を払撒いてないから、あんたらが無駄に騒いでただけだから!




○稀煌暦287年

 魔王アライアを討伐した、との報。話に依れば、最後の一瞬、女神に抱かれるように光と共に消え、遺体も残らなかったという。そして、勇者が手にする聖剣が一層光り輝いていた、とのこと。

 その剣を確認したが、特には変わって居らず、勇者に話を聞くと、時間が経つにつれ、元の状態に戻っていったという。聖剣が聖なる光を放つところが見られなくて残念だ。


<コメント>

女神メモ:間一髪、です。

アライア:盛り上がりの所、悪いんだけど、その人、魔王国の女王なんだけど。慌てて女神呼んで正解だった・・・。私? なんか道案内でスカウトされて、勇者パーティの一員として後方に居ました。ていうか、あの聖剣の光なにあれ。エルフとドワーフの混合技術恐い。




○稀煌暦289年

 魔王討伐後、平和が続いていたが、突如、魔王国が我が国へ進軍。我が軍も応戦し、第二次戦争が開始される。


<コメント>

女神メモ:そろそろ帰ってくださいよぉ・・・。

アライア:そりゃ女王襲撃した挙句、(見かけ上)殺してたら報復されるのも当たり前だって。むしろ遅かったくらいよ?




○稀煌暦291年

 女神の残したる奇跡、勇者召喚によって異世界より三人の若人を召喚した。この者達に聖剣・聖盾・聖鎧を与え、彼の国の魔王を討伐してもらうこととなった。

 結果は凄まじく、各地にて勝利を飾ることとなる。


<コメント>

女神メモ:え、あれ? なんで異世界召喚出来てるんです? あ、魔王さんお帰りですか。はい、聖剣の対抗手段? え、ここにはありませんが。あっ、困ったときはアライアちゃんに頼んでみると良いです。

アライア:あ、これ、どっかの小神がやらかしたな。あと、雑にこっちに振らないで。




○稀煌暦292年

 勇者により、衝撃の真実が齎された。なんと、魔王は二人居たのだ! よりにもよって、二人は共に行動をしているとのこと。エルフの国とドワーフの国を行き来しているようだが、目的は不明。勇者の一人が間諜として、その二人に接触したとのこと。危険だが、彼の勇者達の力は凄まじい、上手くやってくれることを望む。


<コメント>

女神メモ:ところでアライアちゃんっていつの間に魔王になったんです?

アライア:完全に伝達ミス。というか、神敵でもねぇよ。ちなみに接触してきた勇者の娘は、最上のお姉様の一派でした。そういや、勇者召喚乱発による世界崩壊の防止で駆り出されまくってるってぼやいてたな。とりあえず、創造神は無実ってことを伝える。アレにそんな勇気は無いし、何かあっても気づかん。




○同年(稀煌暦292年)

 お、終わった・・・。勇者が持っていた聖剣・聖盾・聖鎧が魔王二人によって破壊されてしまった、とのこと。さらに、魔王の片方が唱えた魔術により、勇者三人は帰還。国はどうなってしまうのか・・・。王は再び勇者召喚の儀を行うが、何度やっても失敗。ついに天をも見放したか。

 不幸中の幸いとして、魔王軍の進軍が止まったくらいか。


<コメント>

女神メモ:流石に何度も異世界召喚はさせません! あれは神々のための奥の手なんですから!

アライア:例の勇者の娘が目の前で聖剣を叩き割ったとき、隣にいた魔王は大笑いしてたな。後ろのドワーフ共は絶望した顔をしてたが。つーか、あれ、素手で割れるモンなの? あ、他の勇者君達も出来ない? まぁ、うん、あの娘、最上のお姉様の一派だもんね。というか、確かあの娘の正体って、未来を司る女がm・・・、ハイ、何でも無いです。



・・・・・・・・・



○稀煌暦532年

 お、恐るべきことが判明した。今や女神の一柱として数えられ、我が国で宗派を創造神と二分するアライア神が、かつては神敵であり、魔王だったなんて!

 この歴史書を公開すれば、間違いなく暴動が起きる。私は今から王に歴史にまつわる書物の焚書を進言しに行く。この歴史は国のためにも隠さなければいけない。特に熱心な教徒でもある第一王子には知らせてはならない。


<コメント>

女神メモ:どやぁ

アライア:どうしてこうなった。あと第一王子に好かれる理由が分からない。第二王子と王女の家庭教師もやってたことあるから、そっちに好かれるなら分かるんだけど。




○稀煌暦535年

 ついに我が国が隠していた事実が露見してしまった。アライア様を何度も処刑したことについて、民からの抗議の声が止まない。どうしてこうなったのか。我々はもっとアライアなる人物についての詳細を知らなくてはいけない。いけないのだが、ほとんどの歴史書は既に焚書してしまった・・・。王は、長命種であるエルフとドワーフの元へ使いを出した。頼む、何か、少しでも希望を、このままでは国が・・・。


<コメント>

女神メモ:あれ、アライアちゃん、どこ行きました? 最近、お城に居ませんよね?

アライア:私が第一王子と共に神敵アライア、もしくは、魔王アライアの情報について、エルフの国とドワーフの国に行くのって、何のコメディかな? あと殿下、何かにつけて連れ回そうとしないで。




○稀煌暦536年、最終年

 第一王子により、国土を半分に分け独立を宣言。王は許さぬと拒否するが、民の声でかき消された。残る第二王子が国を継ぐかと思いきや、彼の殿下も現国を廃し、新国家として立ち上げると宣誓。第一王子とは隣国として共に良国へと築き上げていくとのこと。つまり、我が国の歴史はここで幕を閉じる。


<コメント>

女神メモ:アライアちゃん、あの城が一番声が届くんだけど、離れちゃうの? 誤爆しちゃうよ?

アライア:ほーんとうにやめて。というか、場所移動できないの、それ。え、世界樹があった場所だけ? エルフに言えば分けてくれるかな。 あー、そもそも国から出れるかなー、こっそり抜け出し・・・、げ、殿下? え、今は違う、国王で夫? いや、まぁ、はい。


・・・・・・


女神メモリア:アライアちゃん、お幸せに。あとまたお茶会呼んで良い?

アライア:今から隠居先探しとこ・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る